豊かな森の未来を考えるカードゲーム「moritomirai(森と未来)」のテストプレイ報告(ビジネスゲーム開発日誌 Vol.44)

先日、大阪から静岡・山梨を経由して富山に戻るという、日本の真ん中をぐるっと廻る出張をしてきました。

私たちにとって2つの重要なゲームのお披露目の場があって、それぞれにとても有意義な場となりました。

まず、大阪でお披露目したのは「2050カーボンニュートラル」。

2022年5月に環境省の近畿地方環境事務所にて暫定版をお披露目してから(参考URL)、全国で10数回に渡るテストを経て、正式版として初リリースいたしました。制作には本当に多くの人に関わって頂き、“渾身の出来” と言っていい内容に仕上がりました。

その後に山梨でテストプレイしたのが、豊かな森の未来を考えるカードゲーム「moritomirai(森と未来)」です。

以前、『銃・病原菌・鉄』などを書いたジャレド・ダイアモンドの『文明崩壊』で、「古代文明の崩壊は生活必需品である木材の枯渇によって起きた」という考察を読みましたが、日本も多くの古代文明同様、歴史の殆どの時間において、森から得られる多くの恵みによって生活をしていました。

食料を得、植物の繊維から衣服を創り、木材を切り出して住まいを建てる。暖を取り、炊事をし、明かりを得る燃料も森から得られるものでした。

大気の対流や火山の噴火によって運ばれる栄養分を持った土が、植物の種子を育てる土壌になります。日本の温暖多雨な気候は植物の成長に最適な環境でした。

土壌は微生物や虫たちによって耕され、大小様々な昆虫や動物たちが、植物を食べ、植物の種子を媒介します。その、驚くほど精密に作り上げられた地球環境のシステムが森と言えます。

人も森と密接な関係を築いてきました。山村には里山が、学校には学校林と言われる山がありました。

しかし、エネルギーが石油に変わり、生活必需品であった木材が海外から大量に輸入されるようになってから、日本人にとって森は身近な場所ではなくなってしまったとも言えます。

(余談ですが、日本が文明崩壊しなかったのは世界トップクラスの森林の生育環境に恵まれたエリアだったからと言われています。戦国時代や第二次世界大戦後など、他の環境であれば文明が崩壊していた時代は存在したようです。)

そんな森が持つ様々な機能を考え、守るカードゲーム「moritomirai(森と未来)」。今回のテストプレイに備え、社内では複数回のテストを行い、表計算ソフト上でもシミュレーションを行っていました。

しかし、実際に初見の人でプレイしてみると、ゲームに与える様々な因子を見逃していたことに気づきます。森との誤った接し方をすることによる『負』の影響が出すぎてしまったようです。ゲームとしては少し参加者の納得感に欠ける状態になってしまいました。

初回テストプレイとしては、残念ながら40点ぐらいの出来に終わってしまいました。1か月後の次回テストに向けて、作り直しです。

今回のゲームでは、同じ行動をしても、まちや森の状態によってプラスにもマイナスにもなり得るように設定していました。ところが森の初期値が低い状態でスタートしたため、マイナスの状態から脱するのにずいぶん長い時間がかかってしまいました。

もしかしたら、テストで行ったゲーム内容こそが現実世界をよく表しているのかもしれません。様々な努力を続けている人がいるにも関わらず、林業従事者が減り、土砂災害が増え続けている今の状態がまさに再現されたとも言えるからです。

ただし、今回のテストプレイに参加した方々のように「森を良くしたい」と願っている人が多い場合、もっと良い結果になるはずです。そうならなかったのは、設計時に「良くないアクションをしたときのマイナス影響を過大に評価していたから」と言えるでしょう。

いま、様々なものづくりの現場では、設計通りにつくった場合の結果が分かる「高性能なシミュレーター」の導入が進み、競争力の源泉になっています(自動車や航空機の分野では、エンジニアが自らシミュレーターのプログラムを書いているというからすごいですね)。

私たちのゲーム開発の現場でも、より高性能なシミュレーターの存在がよりリアルで学習効果の高いゲームを作る助けとなる時代が既に来ているようです。

もっといいものを作るために、ツールづくりから始める。 そんな努力が求められているように思います。

ご案内

カードゲーム「moritomirai(森と未来)」については下記の公式サイトより詳細情報をご覧いただけます。

・カードゲーム「moritomirai(森と未来)」の詳細はこちら

執筆者プロフィール

福井 信英

富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。

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