私はネット上で「これは研修で使える!」と思った素晴らしい内容の記事をブックマークし、それを研修の場で紹介することを趣味のように取り組んでいます。

記事をミニケースにし、考えてもらいたい「問い」を追加して学習に使う手法は、以前の記事(下記参照)でご紹介したように、どこの企業でも喜ばれます。

“人は「与えられるもの」よりも「自分で必死に考え、導き出した」もののほうが学びが定着します。そのため、“5~10分程度で読める短いケーススタディ(新聞やビジネス誌の記事でも良い)を読み、A4・1枚以内のレポートを書いていただく事前課題” を研修とセットで出します。他のメンバーが書いてきたレポートを読むだけでも参考になりますし、刺激にもなります。レポートの内容と研修の内容がリンクしていると、更に効果的に知識や体験が定着します。3時間程度の研修で組織変革を促すのが難しい場合でも、事前・事後の課題で学びを深め、その後の一歩に繋げます”

参考:1回限りの研修の学習効果を最大化するための3つのノウハウ(ビジネスゲーム開発日誌 Vol.19) | 株式会社プロジェクトデザイン

時間をかけて考え、調べ、レポートにまとめる学習手法は、現在持っている能力の発揮を求められるビジネスゲームとは補完関係にあると言えます。

この記事を活用したミニケーススタディは、特に上級管理職以上の方々に喜ばれる傾向があります。社内での権限が限られる若手のうちは、会社全体、あるいは特定の部門に関する記事を読んでも、自分には遠い世界の出来事に感じられるのでしょう。

「記事を見て自分なりにふり返り(省察)、自社に応用できる要素を抽出し(概念化)、実践を通じて試す(試行)」ことが出来れば、もはや何からでも学びを得て、仕事に活かせる “学習の達人” になったと言えます。

記事を活用したミニケーススタディの例

さて、過去にストックした50種類程度の記事の中で割とよく使うものに、自動車メーカーのマツダ社の記事があります。

オーナー重視で生き残りを図る、マツダの「愛車戦略」

2020年の記事なので、僕のストックリストの中では比較的新しい記事になります。この記事を読んでもらい、2~3の問いをつけて管理職の方々に「自社に応用して」考えてもらうトレーニングをします。販売方法や価格を柔軟に考える際の参考記事として取り上げたり、縮小市場の中で戦略ストーリーを繋げて生き残りを図る事例として紹介しています。

記事を活用したミニケーススタディの面白いところは、他の記事を併せて検索して複合的視点で調べられるところや、記事が書かれた数年後に「結果」がどうなっているか時系列での変化を知ることができるところでもあります。

マツダ社の場合はどうでしょうか?

愛車戦略を推進するマツダ社は、他社が電気自動車化にまっしぐらなところ、ディーゼルエンジンにこだわり、運転を愛するオーナーを対象に利益を重視する経営を続けます。

2021年の結果を見る限りでは、コロナ禍や半導体供給不足などを要因に、業績は惨敗と言えるものでした(詳細はこちら)。

これを見て私は正直「これからも、厳しい時期が続くだろう」と感じていたのですが、2022年決算では業績を持ち直しています(詳細はこちら)。

これは分からなくなりました。市場全体が “脱炭素” “電動化” に進む中、非常に善戦していると言えそうです。

私自身はマツダ車も好きなのですが、次に買い替えるときは電気自動車(あるいは水素自動車)になるな、という予感があります。

自動車市場でも、ディーゼルエンジン市場が衰退していく中、一定のファン層を維持し、経営を存続させていけるかどうか。個人的には、トヨタ社等とより資本提携を進め、走りが好きな人を対象に製品を提供する大手自動車メーカーのいちブランドになっていくような気がします(そうなった場合でもマツダ社としてのブランドやコンセプトは残るとは思いますが)。

今回は僕の記事ストックリストから比較的使用頻度の低い記事を取り上げました。他に使用頻度の高い記事として、2つの記事をご紹介しておきます。

カルビーはどうやって儲かる会社に変わったか カルビー松本晃会長兼CEOインタビュー|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

プロ経営者・原田泳幸氏は、マクドナルドで結局「何をしたのか」 (福田 健)|現代ビジネス

カルビーの記事は松本社長(当時)の経営改革の話ですが、その後に転職されたライザップでの顛末も別途検索して読むと、経営の面白さ、難しさがよく理解できます。また、マクドナルドの記事は原田体制の光と影を紹介しています(この記事とは別に、東洋経済では原田体制がまさに絶頂だった2006年に「原田体制は必ず失速し、崩壊する」と予言する記事も出していて、記者の方の慧眼に恐れ入った記憶があります)。

ご興味があれば、是非、読んでみてください。そして、人事担当者・育成担当者であれば上記のような記事にどのような「問い」と「解説」を加えて学習資料として仕立て上げるのか、考えてみるのも面白いのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

福井 信英

富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。

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