クリティカルシンキングとは?その意味と批判的思考力を鍛える方法

クリティカルシンキング(批判的思考)とは何か。クリティカルシンキングの意味とクリティカルシンキングを鍛える方法について、分かりやすく解説します。

Contents(目次)

クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングとは、日本語で批判的思考と訳される通り、思考過程に対して批判的な目を向ける(意識的に吟味する)反省的な思考です。

人が思考をする上では、多くの場合においてバイアス(先入観や偏見)が伴うものです。いかに論理的に思考していたとしても、その思考過程にバイアスが含まれている限り、導かれる答えは合理的ではない可能性があります。

だからこそ、バイアスから脱却し、合理的な答えに到達するための思考法として、クリティカルシンキングが重要視されています。

「この意見は、自分の勘や経験に依存していないか?」
「この案は、相手の立場で考えた際に納得感があるか?」

など、導かれた答え(提案や意見)の思考過程に対して俯瞰的・多角的な視点で吟味することでバイアスから脱却し、合理的な答えへ到達することを目指す。

それがクリティカルシンキングです。

クリティカルシンキングの構成要素

クリティカルシンキングは能力(スキル)だけではなく性質(態度)も関係していると言われています。クリティカルシンキングを行う上では批判的精神が必要になるということです。

例えば、哲学者のエニスは批判的に物事を考えられる人の特徴リストを作成し、次のような12の性質と能力を提示しています。

批判的に物事を考えられる人の性質

① 言われたこと、書かれたこと、伝えられた内容が意図している意味が明晰に分かること
② 結論や問いを確定し、これに焦点をおくこと
③ 全体的な状況を説明すること
④ 根拠を探し与えること
⑤ 十分に情報を得ようとすること
⑥ 他の選択肢を探すこと
⑦ 状況が要求するかぎりの正確さを追求すること
⑧ 自己の基礎的な信念を反省的に意識しようとすること
⑨ 偏見のないこと:自分自身の意見よりも他人の意見を真剣に考慮すること
⑩ 証拠と理由が不十分であるときには判断を差し控えること
⑪ 証拠と理由が十分揃っていたら、その立場をとる(あるいは変更する)こと
⑫ 自分自身にクリティカルシンキングの能力を用いること

批判的に物事を考えられる人の能力

明確化を含む能力
① 問題、問い、結論など、焦点を同定すること
② 論証を分析すること
③ 明確化するための問いを立て答えたり説明を求めたりすること
④ 用語を定義し、定義を判断し、多義語を検討すること
⑤ 暗黙の仮定を同定すること

決定の基礎を含む能力
⑥ 情報源の信頼性を判断すること
⑦ 観察し、観察レポートを判断すること

推論を含む能力
⑧ 演繹し、演繹を判断すること
⑨ 帰納し、帰納を判断すること
a. 一般化のために
b. (仮説を含む)説明的な結論のために
⑩ 価値判断をしたりこれを判断したりすること

想定と統合を含むメタ認知的能力
⑪ 不同意や疑いを自分の考えに差し挟むことなく、前提、根拠、想定、命題、そして同意せず疑っている別の命題を考察したり、それらから推論すること(「仮定的思考」)
⑫ 決定したり、決定を擁護したりするときに、他の能力や性質を統合すること

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い

ロジカルシンキングとは論理的思考です。

抜け漏れや矛盾が生じないように、かつ、論理の飛躍が生じないように、論理的に(筋道に沿って正しい順序で)考えることを指しています。

クリティカルシンキングにおいても、上述の批判的に物事を考えられる人の能力に示されているように論理的思考は含まれるため、クリティカルシンキングとロジカルシンキングは同じ意味を持つ言葉のように捉えられます。

その上で、これらの2つの言葉の違いを簡潔に述べるのであれば、それは「目的の違い」です。

ロジカルシンキングの目的は、論理的に思考すること。
クリティカルシンキングの目的は、合理的な答えに到達すること。

だからこそ、クリティカルシンキングでは、スキル(技術)に加えて、スキルを使う側が正しくスキルを使い、目的に近づくための指針(批判的精神)が必要になります。

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ロジカルシンキングにご興味のある方は下記の記事をご覧ください(ロジカルシンキングの基本とフレームワーク、論理的思考力を鍛える方法について、分かりやすく解説しています)。

クリティカルシンキングを鍛える方法

個人視点(自分でできるクリティカルシンキング・トレーニング)

知識のインプット

どんなスキルであっても、まずは知識をインプットすることがスキルを身に付けるための第一歩になります。それはクリティカルシンキングも例外ではありません。

今時は、クリティカルシンキング(批判的的思考)を学ぶための教材はたくさん用意されています。参考書籍を読むも良し。オンライン講座を受講するも良し。自身の学習スタイルにフィットする手段を選びましょう。

実務によるアウトプット

職種や仕事内容によってクリティカルシンキングの活用度合いには差はありますが、誰もが取り組む業務の中においても、クリティカルシンキングを実践する余地は十分にあります。

例えば、資料作成。企画書・提案資料・会議資料・報告書(あるいは、メールの文章でも構いません)。どんな資料であっても、資料の目的を達成するためには複数のステークホルダーの立場で論点や見せ方を整理する必要があり、クリティカルシンキングの巧拙が問われます。

また、アウトプットした内容は上司や意思決定者からのフィードバックを踏まえて改善し、次に活かす(よりよいアウトプットをする)。この繰り返しの中で、クリティカルシンキングのスキル・批判的精神が磨かれていきます。

組織視点(組織が提供できるクリティカルシンキング・トレーニング)

実務経験を積む機会の提供

合理的な答えへ到達することを目指すための思考法であるクリティカルシンキングを鍛える格好の場は、合理的な意思決定が行われるビジネスの現場にあります。

ゆえに、組織としてクリティカルシンキングのトレーニング機会の提供を考えるならば、第一に、実務経験を積む機会を提供することが推奨されます。

フィードバックの機会の提供

実務経験は、量より質です。組織のメンバーが一つひとつの実務経験から良質な学びを得られるようなサポートをすることが大切です。

サポート内容は様々に考えられますが、クリティカルシンキングトレーニングの観点では、OJTや1on1ミーティング、定例MTGなどのコミュニケーション機会を設け、メンバーに対するフィードバックを行うことが重要になります。

メンバーの実務におけるアウトプットに対して、熟練者から「より良いアウトプット」を出すためのノウハウや心構えを伝える。この経験学習のアプローチは良質な学習機会になります。

ビジネスゲームの実施

ビジネスゲームとは、飛行機のパイロットが訓練を積む「フライトシミュレーター」のようなものです。

ビジネスゲームでは、現実の世界における経済活動や社会活動のエッセンス(本質的要素)を抽出し、繰り返しトレーニングできるようにゲームとして表現しています。

現実の世界では、活動の結果と経験を得るために多くの時間と労力が必要になりますが、ビジネスゲームでは、短時間で活動の結果と経験(成功体験や失敗体験)を得ることができます。

このビジネスゲームを活用した「高速経験学習」は、クリティカルシンキングを含めた様々なスキルやマインドの習得に適しています。

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ビジネスゲームに関して興味の有る方は下記の記事をご覧ください(ビジネスゲームの特長についてご紹介します)。

この記事の著者について​

執筆者プロフィール

池田 信人

自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営を経て2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部門のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。

監修者プロフィール

亀井 直人

鳥取県立鳥取東高等学校卒業、福岡工業大学情報工学部情報通信工学科卒業。SE(インフラエンジニア)として長く経験を積む。プロジェクト遂行におけるチームのパフォーマンスを引き出すためにファシリテーション技術の習得・実践を続ける。特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会では役員(2016年~2021年理事、2019年~2021年副会長)を務める。富士ゼロックス福岡在籍中にSDGsとビジネスゲーム「2030SDGs」に出会う。ビジネスゲームが持つ力の素晴らしさに触れ、2020年に研修部マネージャーとしてプロジェクトデザインに合流する。活動を通じて関わり合う方々との対話を楽しみにしている。鳥取県鳥取市出身。蟹と麦チョコが大好き。

  • 経済産業省認定情報セキュリティスペシャリスト
  • PMP(Project Management Professional)
  • NPO法人 SDGs Association 熊本 監事
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