SDGsにWhitewash(ごまかし・粉飾)を組み合わせた「SDGsウォッシュ」という造語をご存知でしょうか?
SDGsウォッシュとは……
- 実態がないにも関わらず、SDGsに取り組んでいるようにPRすること
- SDGsに本気で取り組むつもりがない中で、自社の既存の取り組み(事業内容)とSDGs17の目標を無理やり関連付けること
- 現状の取り組みを大げさに誇張する形で、SDGsの取り組みとしてPRすること
簡単に言ってしまうと、SDGsウォッシュとは「言っていること(広告・PR)とやっていること(取り組みの実態)が乖離している状態」です。
SDGsのメリット(社会的信用など)を得るために、SDGsに取り組むフリをするSDGsウォッシュな企業が増えることは、SDGsの価値を毀損することに繋がります。
本気でSDGsに取り組んでいる企業にとっては迷惑この上ない話ですが、SDGsの認知度や活動が発展途上にある状況においては、企業の活動が“意図せず”にSDGsウォッシュになってしまっていることが起こりやすい状況にあるようにも思えます。
そこで、本記事では、SDGsに誠実に取り組んでいく意思のある企業が、SDGsウォッシュを避けるためのヒントとなる2つのキーワードをお届けします。
SDGsウォッシュを回避するための2つのキーワード
1. アウトサイド・イン・アプローチ
アウトサイド・イン・アプローチでは、社会(アウトサイド)の未来から目標を設定し、その目標と現在のギャップを埋めるための戦略を逆算して考えます。
企業の内部(インサイド)の過去と現在の業績を分析し、未来の目標を設定するインサイド・アウト・アプローチを取る今日的なあり方では、世界的な課題に十分対処できないと言われている中、
このアウトサイド・イン・アプローチの重要性が説かれています。
つまりは…
「フォアキャスティング的に既存の事業活動の延長線上にSDGsの目標設定をしても、SDGsの目標達成とのギャップが大きくなるから良くない。そうではなくて、バックキャスティング的にSDGsの目標から、今何をすべきかを考えるべきだ」
ということであり、目標設定を考える際の“起点”が重要なのだと解釈できます。
2. パートナーシップ
SDGsの17の目標はどれもとても大きな目標であり、1社単独で推進するには無理があることは、過去を辿れば明らかです。
2014年に実施されたある調査によれば、調査対象となった3万8,000人の企業の役員・管理職およびオピニオンリーダーのうち、90%が持続可能性の課題は企業単独では効果的に対処することはできないと回答した。
参考:SDG Compass|SDGsの企業行動指針 P24
より大きなインパクトを出すために、よりゴール達成に近づくためには、行政や民間の垣根のない多様なステークホルダーによるパートナーシップが必要であると考えるべきです。
このパートナーシップの例としては、文京区の「こども宅食プロジェクト」が挙げられます。
駒崎:「こども宅食」は、コレクティブ・インパクトと呼ばれる、立場の異なる組織(行政、企業、NPO、財団、有志団体など)が協働する手法で社会課題の解決を目指します。これは、行政として非常に珍しい形での運営になりますよね。このような手法を取ろうと決断した理由はなんですか?
成澤:色々な組織がそれぞれの強みを活かして協働することによって、初めて課題が解決できると思っているからです。
参考:文京区長が「こども宅食」でNPOとの協働を決断した理由とは|子供宅食
この「こども宅食プロジェクト」では、
・特定非営利活動法人フローレンス
・特定非営利活動法人キッズドア
・一般社団法人RCF
・特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会
・一般財団法人村上財団
・セイノーホールディングス株式会社
・文京区
という具合に、区とNPO団体や企業が対等な関係でパートナーシップを組み、事業に取り組むコンソーシアム(共同体)形式を採用しています。
平成29年度から令和元年9月15日時点において、寄付金の総額は累計1億5000万円以上(寄付件数3613件)と、大きなインパクトが生まれています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した「アウトサイド・イン・アプローチ」と「パートナーシップ」の2つのキーワードを意識いただくことで、SDGsウォッシュの批判とは無縁な本質的なSDGsの取り組みが増えることを願います。
最後に、企業のSDGsの取り組み事例をまとめた記事をご紹介させていただきます。貴社のSDGsの取り組みを進めていく上で参考になる情報があれば何よりです。
監修者プロフィール

長瀬 めぐみ
岐阜県高山市出身、富山県滑川市在住。実家が100年以上続くお菓子屋を営んでおり、幼少期より観光や地域産業が身近な環境で育つ。高校時代、同級生が家業を知らない現実にショックを覚え、地域創生に関心を持ち始める。短大卒業後、すぐにUターン。まちづくりのNPOで子どもの教育支援や大学のない中山間地域へ若者を誘致するインターンシップ、農業支援などの取り組みで4年間で延べ600人以上の学生と関わる。様々な活動の中で、地域が元気になるためには、地元の若者が育つ仕組みと地域の大人が楽しんで地域に参画する土壌づくりの必要性を感じ、公立高校で学校と地域をつなぐコーディネーターなども務めた。体験から気づき、意識・行動変革をもたらすゲームコンテンツに魅力を感じ、全国に広めたい!とプロジェクトデザインに参画。地元飛騨が大好き。