【実施レポート】地方創生 WILL Project のモデルケース「Karatsu WILL Project」(佐賀県唐津市)

唐津くんちの曳山

本レポートでは、私たちが提供する「地方創生 WILL Project」のモデルケースとなった「Karatsu WILL Project」の事例を、私、竹田が紹介させていただきます。 

株式会社プロジェクトデザイン 竹田

竹田 法信
株式会社プロジェクトデザイン 富山オフィス

富山県滑川市在住。筑波大学社会工学類卒業後、自動車メーカー、株式会社SUBARUに入社。企画、販売促進、マーケティング、営業を行う。その後、海外留学を経て富山市役所に入庁。福祉、法務、内閣府派遣、人事、フィリピン駐在、SDGs未来都市担当を経て、2019年4月より現職。「2030SDGs」、「SDGs de 地方創生」、「SDGsアウトサイドイン」の運営マネージャー。地元・富山県滑川市総合計画審議会委員。

<目次>

  1. 地方創生 WILL Projectとは? 
  2. 唐津市の概要
  3. ゲーム体験
  4. 地域プロジェクト創出ワークショップ
  5. クロージング 
  6. 唐津市の方々からのコメント
  7. あとがき(プロジェクトデザイン竹田) 

1. 地方創生 WILL Projectとは? 

「地方創生 WILL Project」 はビジネスゲーム「SDGs de 地方創生」と「地域プロジェクト創出ワークショップ」のパッケージプログラムです。 

ビジネスゲーム「SDGs de 地方創生」は会場全体を一つの「地域」とみなし、ゲームにおける「人脈カード」と「事業資金」を集めて、自分がやりたいプロジェクト(WILL Project)を実行することによって、住民個人の目標の達成と持続可能な地域を目指していく、というゲームです。 

「地域プロジェクト創出ワークショップ」はビジネスゲーム「SDGs de 地方創生」を実施した後で、この地域において資金を集め、具体の人脈とつながり具体のプロジェクトを創出させるワークショップです。

2. 唐津市で実施する意義 

佐賀県唐津市は佐賀県の北西に位置し玄界灘に面する人口約12万人の市です。中心市街地は唐津藩の城下町となっており、唐津神社の秋季例大祭である「唐津くんち」や特別名勝の「虹の松原」、豊臣秀吉が文禄慶長の役の際に築城した名護屋城跡などが有名です。 

唐津市では2019年度から毎年研修実施させていただいており、今回が3度目となります。私自身、全国の自治体や企業からよくご相談いただくのは、 

  • ゲームは楽しいし、学びや気づきが得られたが、具体的にどうすればよいか分からない。 
  • SDGsやまちづくりの理念を多くの人に浸透させたいが、どうすればよいか分からない。 

ということです。 

「ゲーム体験者を増やして理念を浸透させる」というのは、分かりやすいアプローチではありますが、「ラクな手段に頼っているだけ」という言い方もできそうです。 

大切なのは「具体的にその地域でアクションを起こしていくこと」です。 

つまり、「ゲーム体験をやって終わり」ではなく、ゲームでプロジェクトを実行していくがごとく、「現実のまちでプロジェクトを実行するとしたら、誰と何をやっていきたいか?」というところまでを設計することにしました。 

つまり、「ゲーム体験を唐津市に置き換えた場合、具体的にどんなプロジェクトをやりたいのか? これをやるために具体的に誰と組めばやれそうか?資金はいくら必要で、どうやって集めるのか?いつからやるのか?」を話し合って「見える化」していきます。 

このワークには、具体的なプロジェクトの創出以上の意図があります。

それは、このワークを行くことによって「唐津市から転出しなくても、人脈と出会いさえすれば、やりたいことは唐津で実現できる!」という可能性に気づいてもらう、ということです。 

唐津市の転出先を見ると、福岡市、佐賀市、糸島市への転出が多くなっています。

<転出数内訳(2018年)> 

  • 第1位 佐賀県佐賀市(301人)
  • 第2位 福岡県福岡市西区(152人)
  • 第3位 福岡県糸島市(142人)
  • 第4位 福岡県福岡市中央区(129人)
  • 第5位 福岡県福岡市博多区(122人)
  • 第6位 佐賀県伊万里市(97人)
  • 第7位 福岡県福岡市東区(88人)
  • 第8位 佐賀県小城市(79人)
  • 第9位 福岡県福岡市早良区(76人)
  • 第10位 福岡県福岡市南区(68人)
  • その他(1,965人)

参考:唐津市まち・ひと・しごと創生総合戦略(2020年4月)P17

転出の理由には様々なものがあると思いますが、一つには「働いたり自由に楽しく遊んだりする場が唐津の地にもっと多くあれば、転出しなくてもよかったはず」ということがあると思っています。

つまり、個人が実現したい事業というのは、一緒に取り組む人脈に出会えれば実行できるチャンスが広がる! 言い方を変えると、実現できないとすれば、単に人脈と出会えていないだけだろうと思っています。 

唐津で人脈とつながれば、働きがいのある職場を唐津で見つけられるかもしれないし、プロジェクトや小さなアクションを地元で行っていくことも可能である、という気づきを提供したい。

これを、この場の意図として設定しました(実際に僕自身も、偶発的なキャリアの中で多くの人脈に出会うことによって、弊社プロジェクトデザインという働きがいのある組織に出会えています)。 

3. ゲーム体験 

午前はゲーム体験会です。ビジネスゲーム「SDGs de 地方創生」を実施しました。

各種産業従事者、NPO、企業代表者、市議会議員、市職員など総勢60名以上の参加者が、名刺や肩書を脱ぎ捨てて対等にチェックイン。

ゲームでは、会場を中央で左右に分け、2つのエリアをそれぞれ「まち」とみなします。そして、それぞれのまちで、各参加者は異なる価値観や目標を抱いたプレイヤーの役割を演じ、個人の目標達成と持続可能な地域の実現を目指します。 

ゲーム開始直後から、総勢60名を超える方々が一斉に動き出し、活発に連携・交渉が繰り広げられました(途中からは唐津市の峰市長にもご参加いただきました!)。 

ゲーム体験の様子_Karatsu-WILL-Project

ゲーム終了後は振り返りの時間。ゲーム体験と現実との紐づけていきます。会場から出た気づきや学びをいくつか紹介します。 

  • ゲームでは、お互いのWILL(想いやゴール)を確認したから、相互に目標達成のために貢献できた。現実社会でも目標の共有が大切。同様に、行政もどんな目標を掲げているのかを住民に分かりやすく示すことが大切。 
  • 地域の最終結果を作り出したのは、行政だけではないし民間だけでもない。全員が作り出した結果。まちづくりは、全員が得意分野を活かした役割分担によって行っていくことが大切。 
  • 自分が起点となって行動するからこそ、まちづくりは楽しい!ということが腹落ちできた。 
  • 自分にない知識やノウハウは、他人に頼ればよい。「協力してください」と声を上げることが重要。 

4. 地域プロジェクト創出ワークショップ

いよいよ午後からは、地域プロジェクトを創出するワークショップ。ここから先は、運営するファシリテータ―は主導権を手放し、参加者の方々の可能性に委ねていきます。 

まずは、参加者全員が次のテーマで語り合います。 

  • 唐津の地域資源や人脈と繋がってやってみたいこと 
  • 衝動的なワクワクを感じること 
  • 協力したい!協力できそう!と思うこと 

これを模造紙に書いたうえで席替え。他のテーブルに移動し、コメント、アドバイス、アイデアなどを自由に模造紙に書いていき、どんなプロジェクトを実施したいか、協力できる事業はどんなことかなどに思いを飛ばします。 

ワークショップの様子1_Karatsu-WILL-Project

次に、全員が輪になります。実施したいテーマがある人は、輪の中心に出てきて、テーマを提案し、一緒にやってくれる人を募ります。

この場のパワーは、本当に圧巻です。長い沈黙を突き破って出てくる意志のパワー、エネルギーは、本当に強烈で尊い(僕は一人で感極まっておりました…)! 

ワークショップの様子2_Karatsu-WILL-Project

会場からは様々なプロジェクトが提案されました。 

提案されたプロジェクト_Karatsu-WILL-Project

※実際には提案者のお名前も書かれていますが、ここではお名前を伏せてあります。 

会場内にはテーブルの島をいくつも作り、プロジェクトの提案者がそれぞれの島に散っていき、「この指とまれ!」の方式で、そのプロジェクトを一緒に進めたい人や協力したい人が集まっていきます。そして、プロジェクトの提案者がない島も準備され、自由に対話する場所が設けられました。 

ワークショップの様子3_Karatsu-WILL-Project

この一連のプロセスでは、僕は場に言葉を発することなく、特段のガイド無しで自然にプロジェクトごとに仲間が集まり、実施に向けた対話が始まっていきました。「場を信じて委ねる」ことにより、全員が主体的に動いていく風景を目の当たりにするのは、何とも言えず奥深いです。 

さらに、特に話し合うプロジェクトが割り当てられていない島からも、具体的なプロジェクトが生まれていました。人が持っている主体性や可能性に言葉を失った瞬間でした。 

そして最終発表。 

最終発表の様子1_Karatsu-WILL-Project
最終発表の様子2_Karatsu-WILL-Project
最終発表の様子3_Karatsu-WILL-Project

次はいつ、どこで集まって打ち合わせをするかを決めてワークショップは終了。 

この後のプロセスにおいては、複数のプロジェクトに同時に関わっていくこともできるし、一旦抜けることも自由です。具体的に実現に向けたロードマップを言語化しているグループもあり、今後の事業化が楽しみです。今後、唐津市の事務局にて進捗の見守りをされることになっています。

5. クロージング

最後のクロージングでは、唐津市未来づくり研修会(通称「みらけん」)の取り組みの紹介がありました。

「みらけん」とは、原則として40歳までの有志の若手市職員で構成される部門横断型のプロジェクトチームで、職員の意識改革、政策立案能力の向上、組織の横断的な連携を図ることを目的として平成29年度に発足されました。政策部市長公室の香月さんから「からつっ子応援ギフト」について説明がありました。 

令和3年10月号の市報記事抜粋
令和3年10月号の市報記事抜粋

香月さんからは「『子育て世帯を応援したい』という想いから未来づくり研究会の中で意見を交換し、自身の子育て経験に照らして『あったらいいな』を形に企画しました。企画を進めるにあたっては『唐津市まち・ひと・しごと創生総合戦略』に基づく市と連携関係にある企業等から事業趣旨に共感を頂き、ありがたいことにコンテンツの協賛や企業版ふるさと納税を通じた寄附を頂くことができました」というお話がありました。 

市長公室の香月さん_Karatsu-WILL-Project

さらに夜は懇親会。プロジェクトを提案した方からは「あれほど勇気を振り絞ったのは人生で初めてでした!勇気を出して良かった!!」という声もいただきました。 

プロジェクトの実施は、ここからが本番。個人の想い「WILL」を起点として、独り立ちして実装されていくことを願っております。

6. 唐津市の方々からのコメント 

唐津市の方々からコメントをいただいていますので、ご紹介いたします。

稲津さんからのコメント

WILL Projectを語るうえで欠かせないのが、未来づくり研究会の「からつっ子応援ギフト」の事業化までのエピソードです。 

未来づくり研究会の大きな目的は2つあります。1つ目は若手職員の政策立案能力の向上、そして2つ目に若い方のアイデアを政策に活かすことによって、市民目線の行政運営につなげるためです。 

人口減少対策の視点での研究をスタートさせたとき、未来づくり研究会メンバーのアイデアは既存事業の領域からなかなか脱却できずにいました。得てして公務員は民の力を借りることに消極的で、そこには大きなハードルがあるからです。 

そこで、メンバーにSDGs de 地方創生カードゲームを体験させ、自分の仕事を俯瞰的に見ることの大切さ、そして周りとの連携や協力によって生み出される地方創生のうねりを実際に感じてもらいました。その点、竹田さんの講義は、職員が気付きを得るのに十分に応えていただけるものでした。 

唐津市の人口は現在12万人、50年後には半減すると予想されています。人口減少は税収の落ち込み以外にも、「地域の力」が失われる大きな課題です。 

そこで、未来づくり研究会が取り組んだのが、唐津で子育てをしたいという若い世代を応援しようとする企画。この応援ギフトの考案は、ご存知フィンランド政府が無償で配布しているマタニティBOXが由来。また日本では各地のテレビ局が「はじめて箱」として、生まれたての赤ちゃんへギフトを提供しています。この仕組みをいくつかの自治体が子育て政策として実施していることなどを調査し、唐津でも取り組めないかと検討を進めました。 

未来づくり研究会メンバーには、ギフトとして提供して喜ばれるものは何か、唐津の独自性が出せないかなどの視点で検討をさせました。私はというと、未来づくり研究会をまとめる事務局として、後方支援の立場から企業協賛のお願いに走りました。 

「はじめて箱」の仕組みが、大手広告代理店を通じて各県のコープ生協が主体となっていることを聴き、飛び込みでコープさが生協さんを訪ね、趣旨を説明させていただきました(本当のところグループメンバーにさせたかったのですが・・・)。 

コープさが生協さんからは、「実は佐賀でもはじめて箱をやりたかった。人口規模や広告代理店等との協賛の調整ができずやれなかった企画。それを唐津市が独自でやりたいということであればぜひ応援したい」と快く快諾していただいたときは、私のゲリラ営業が何とかつながったと胸をなでおろしたものです。 

その他、包括連携協定をしている企業さんからも協賛商品を提供していただき、また企業版ふるさと納税での事業予算が確保できたことが、「からつっ子応援ギフト」の誕生に大きく左右しました。これこそパートナーシップの構築、官民連携の一つの大きな事例です。 

このギフトには、支援していただいた皆さんの想い「したい・しよう・しませんか?」というWILLが詰まっていると私は信じています。皆さんのご厚意が形となり事業化へつながったことに深く感謝し、これからも唐津で産まれ育つ子供たちが健やかに成長してくれますよう祈っています。 

今回のようなゲーム体験と地域プロジェクトを創出ワークショップを実施することによって、地域のWILLが詰まった活動と成果をどんどん増やしていきたいと思います。 

原野さんからのコメント 

原野さん

【WILL Projectへの想い】 

仕事や日常生活の中で、誰しも一度は「こうだったらいいのに」と思ったことがあると思います。一方で、地方自治体といった組織においては、法令規則に沿った事務の要請からか個人の想い(WILL)は重視されにくい傾向にあり、それぞれのWILLは心の裡に閉じ込められがちです。 

しかし、実はWILLこそが社会を変える原動力であり、それゆえWILLをオープンにできる雰囲気をつくることがとても大切なのではないかと感じています。 

特に、少子高齢化や人口減少といった行政だけでは解決できない難題を抱える地方自治体こそ、固定観念にとらわれず、組織を超えて他者との共創を目指すマインドを尊重することが必要であり、「WILL Project」にはそれを達成できるプラットフォームとしてポテンシャルがあるものと確信しています。 

香月さんからのコメント 

香月さん

今回ワークショップに参加して、行政職員のみならず民間事業者の皆様と一緒になって地域について考える大変貴重な機会でした。普段の業務では関わることのできない他業種の方から、それぞれの立場や考え方、率直な本音を実際に聞くことができ、地域の将来や課題を見つめ直すきっかけとなりました。 

持続可能な地域の実現に向けて地域一体となって取り組むのはもちろん、それぞれの想いをつなぐ役割も必要と改めて感じました。 

7. あとがき(プロジェクトデザイン竹田) 

弊社はこれまで数多くの体験型ゲームを作って、世の中に広げてきました。

その中でよくいただく相談は、「ゲームを実施した後で、実際に現実世界で行動につなげていくにはどうしたらよいか?」ということです。この点について、一定の型を作って実装することによって一つの解を提示することができた、そんな貴重な事例だと捉えています。 

本文でも言及しましたが「SDGsや地方創生の理念を組織に浸透させるにはどうすればよいか?」という相談をよく受けるのですが、「浸透させればうまくいくはず」というのは幻想にすぎません。知識やノウハウ、事例をインプットするのは、「とりあえず理解した」状態にはなれるかもしれませんが、行動が伴わないと現実を変えていくことはできません。 

持続可能な地域をつくっていくためには、本質的には「地域における具体的な行動(プロジェクトの実施)」が必要です。行政職員や民間事業者といった名刺・肩書とは無関係に、地域のためのアクションを企画する、仲間を見つけて実行する。そのために、みんながまちに飛び出して人脈と繋がることが必要だと思います。 

ゲームで体験したことを、現実のまちに置き換えて、具体の人脈と繋がって具体のプロジェクトをつくりあげる、そんな素晴らしい場が唐津から生まれました。しかも、市が主催するからこそ、こんなにも大勢の方々にお集りいただく場を作れたのだろうと思います。 

このノウハウを標準化して、「地方創生 WILL Project」と題して、日本全国にお届けしていきます。 

ご相談、ご依頼はこちらまでお気軽にどうぞ。 

プロジェクトデザイン 運営事務局 竹田(富山オフィス)
support-team@projectdesign.co.jp 

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