「The 商社」の開発ストーリー(ビジネスゲーム開発日誌 Vol.10)

2009年当時、私は自信を無くし、迷っていました。

前年に起きたリーマン・ショックは人材業界に軒並み大打撃を与え、人材採用・育成の支援会社の営業職であった私の仕事は激減。お客様である人事部を営業訪問をしても具体的な商談に発展することはほぼなかったように思います。

その代わり、人事部の方々の話に耳を傾ける時間が長くなりました。すると、不思議なことに、人事部の皆さんは一様に同じ話をされていることに気付きました。曰く、

「この苦境を乗り越えるようなリーダーシップとクリエイティビティを持った人材が欲しい」

とのこと。最初の頃は「なるほど、そうですね」と耳を傾けていましたが、同じ話を聞く人数が10人を超え、20人に達するあたりから、静かな怒りのようなものがこみ上げてきました。

「リーダーシップとクリエイティビティを持った人材の登場に期待するのではなく、人事の責任者である貴方がそうなれば良いんじゃないの?」

という感情です。青臭いです。今だったら、人事部の方にも様々な都合があり、動こうにも動けない状況だったのかもしれない。そのように当時の状況を想像することができます。しかし、10年前の僕は人の感情を推察するという点に関して未熟でした。

複雑な感情を抱えながら、当時の私は人事部の皆さんとの対話を続けますが、怒りは徐々にたまっていきます。

「まだ見ぬ英雄的な人や若い世代に期待するのではなく、人事の責任者たる自分自身が動かないと!」

心の中でそう叫びました。

しかし、人事部の方との対話を重ねていく中で、あるとき気づいたのです。私もまた、自分自身が変わろうとするのではなく、他者である人事部の方に一方的に期待し、そして落胆していたのだと。

「自分自身がこの苦境を乗り越える、リーダーシップとクリエイティビティを持った人材になるためのチャレンジをしなければいけない」。

そんな内なる声が聞こえて来ました。

私は自分自身のリーダーシップとクリエイティビティを試すために起業をしました。自分自身が様々なチャレンジのロールモデルになりたいという気持ちを抱き、起業と同時に初のビジネスゲームを開発しました。

それは、今でも当社のビジネスゲームの看板商品として多くの企業や団体でご活用いただいている「The 商社」です。

ネーミングに関しては「なぜ、商社なんだ?」と様々なご意見をいただきました。

「ウチはメーカーだから、商社というネーミングはちょっとね」
「ウチは商社だから、商社ってネーミングだと自分の仕事と違和感を感じる人もいるかもね」

そんな声を様々なところから頂きました。しかし、結局ネーミングを変えることはしませんでした。

この商品をもって、黒船によって開国に至り、国中が混沌としていた明治の時代に、資源がないと言われていた日本を出て、己のリーダーシップとクリエイティビティを武器に世界と商売を始めた、岩崎弥太郎をはじめとする野武士のようなビジネスパーソンの気概をもう一度取り戻したい。

そういう思いを込めて開発した商品ですから、商品名を変えるわけにはいきませんでした。

私自身、経営に迷ったとき、商談での交渉に迷ったとき、このビジネスゲーム「The 商社」で得られる気づきを判断のひとつの拠り所としています(そして、それは思った以上にうまくいったと感じています)。

  • 周囲の状況が不透明な中でも方針を決めねばならない
  • ひとつひとつの取引でwin-winを目指していく
  • 足し算のビジネスから、かけ算のビジネスに発想を飛躍させる
  • 行き詰まったときほど、新たな発想で状況を打開するチャンス

などなど、多くのことを「The 商社」の参加者として、ファシリテーターとして学びました。

そして時は流れ、2020年の今、私たちはリーマン・ショックと同等、あるいは、それ以上の大きな苦境の真っただ中にいます。

私たち現役世代が「よく生き」、将来世代に負債を残さないようにするために、今一度、ひとりひとりが、リーダーシップとクリエイティビティを少しずつでも磨くことが求められているのではないか。

そんな思いから「The 商社」のオンライン版、「The 商社 Online」を新しく開発しました。この「The 商社 Online」のプレイ感は、現在のビジネスコミュニケーション(オンラインでの商談や会議)の姿に非常に近いと思います。

ぜひ一度、オンラインの体験会にお越しください。

執筆者プロフィール

福井 信英

富山県立富山中部高等学校卒業、私立慶應義塾大学商学部卒業。 コンサルティング会社勤務、ベンチャー企業での営業部長経験を経て富山にUターン。2010年、世界が抱える多くの社会課題を解決するために、プロジェクト(事業)をデザインし自ら実行する人を増やす。というビジョンのもと、株式会社プロジェクトデザインを設立。現在は、ビジネスゲームの制作・提供を通じ、人材育成・組織開発・社会課題解決に取り組む。開発したビジネスゲームは国内外の企業・公的機関に広く利用され、英語版、中国語版、ベトナム語版等多国語に翻訳されている。課題先進国日本の社会課題解決の実践者として、地方から世界に売れるコンテンツを産み出し、広めることを目指す。 1977年生まれ。家では3人の娘のパパ。

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