2015年に政府が掲げた「一億総活躍社会」。

 

政府の方針については賛否あると思いますが、現在の経済社会が抱える困難な課題への対策として重要な考え方のひとつであることは明らかでしょう。

特に「一億総活躍」として挙げられた目標は、「希望出生率1.8の達成」や「介護離職ゼロ」など、かなりハードルの高い目標だと感じていました。

 

もちろんコストやマンパワーの不足は世間でも頻繁に言われていますが、経済社会のシステムは一人一人の生活が連なってカタチを成しているので、システムそのものを変化させないと、いくら予算や人員を投入してもうまくいきません。

政府広報オンラインより

 

 

 

 

「一億総活躍社会」とは?

 

というわけで、平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」を見てみましょう

 

  1. 成長と分配の好循環メカニズムの提示
  2. 一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題である働き方改革の方向
  3. 「希望出生率1.8」に向けた取組の方向
  4. 「介護離職ゼロ」に向けた取組の方向
  5. 「戦後最大の名目GDP600兆円」に向けた取組の方向
  6. 10年先の未来を見据えたロードマップ
    ・希望出生率1.8の実現
    ・介護離職ゼロの実現
    ・名目GDP600兆円の実現

 

このプランでは、日本の経済成長のボトルネックを「少子高齢化」捉え、子育て支援や社会保障の基盤を強化することで経済を強くすると考えています。

 

企業などにとって、もっとも影響が大きく、また早急に取り組むべきは二つ目の「働き方の改革」でしょう。

この中に含まれる項目の中では、「長時間労働の是正」「高齢者の就労促進」は大きな課題だと思います。

 

 

なかなか解消しにくい残業問題

 

「長時間労働の是正」はいわゆる残業削減であり、過労死問題が騒がれた20年くらい前から本格的に取り組んで来た課題のはずですが、TVで取り上げられるようなよほどモデル的な企業でない限り、残業削減に成功してる企業は少ないのではないでしょうか?

 

働き方にもいろいろなタイプがあって、いわゆる「じっくり取り組んでよりよい成果を出す」といったタイプの方も多いことでしょう。

やみくもに労働時間を短くすることは、このようなタイプの方の仕事のやり方や個人の特性に対して評価を下げることにもなってしまい、総活躍の趣旨に矛盾を生む可能性があるのが、なかなか取り組みが進まない理由と考えられます。

 

だからこそ、子育てや介護をはじめとする家庭や生活の事情を重視したフレックススタイルや、テレワークや在宅ワークといわれるようなロケーションフリーな働き方を組み合わせていく必要があると思われます。

 

 

高齢者の就労は日本の企業理念に合わない?

 

「高齢者の就労促進」は、介護保険や年金制度の崩壊、医療費の高騰などが根本にあると思われますが、何よりも健康寿命が伸びてきていることが大きな要因でしょう。

 

企業としては、労務費の削減と先進スキルへの対応を考えると早期退職してもらって若年層を雇用していきたいという面があると思います。

また、早期退職した高齢者の側もしばらくやりたいことをやってみるものの、老後の不安を感じたりまだまだ働ける体力があったりするものです。

 

高齢者の継続雇用や再雇用には、コスト削減のメリットがある反面、体力や気力が業務内容に追いつかなくなることもあります。

高齢者の求人を見ても、作業中心の肉体労働やサービス業務が多く、ホワイトカラーは少ない傾向にあります。

 

歳をとると体力や吸収力は衰えますが、分析力や判断力など経験を必要とするスキルは蓄積されます。

これを「結晶性知能」と呼びますが、なかなか一般的な組織構造では、役割分担してこの結晶性知能を活用するのは難しい傾向にあります。

 

 

ジョブ型評価で変化に対応できる企業を目指す

 

ここまであげた「働き方の改革」で分かるのは、何かひとつの効果的な方法があるわけではなく、様々な施策にはメリットの反面、デメリットも存在し、複合的かつ適切なポイントで進めることが重要です。

企業側の視点で考えると、従来のメンバーシップ型評価制度(職能型評価ともいう)で、勤務年数に応じて一定昇級していくようなスタイルでは、対応しきれないかもしれません。

 

2013年には、政府も「ジョブ型正社員」の本格的導入に向けてルールづくりを始めています。

まだまだ国内では取り組んでいる企業は少なく、人事制度の転換は大変な困難を伴うものですが、これからの社会経済の変化に対応するためには、ジョブ型評価制度(職務型評価ともいう)を検討していくことも必要なポイントだと思います。

 

人事制度の全てを転換しなくても、まずは職務を分解して、業種や事業ごとにジョブ型評価を取り入れていく方法もあるでしょう。

まずは特定のジョブを設定して、それを遂行するためのスペシャリストとして「ジョブ型正社員」を採用していくだけでも大きな変化を生み出すことになるかもしれません。

 

ジョブ型正社員のひろがり

 

ジョブ型正社員のメリットとしては、本人の生き方やスキルを活かした働き方を実現できることだと思います。

時間を自由に設定できる反面、職務を遂行するための高いスキルと強靭な精神力を必要とするので、本人の特性やスキルに適合していればマネジメントは思っているほど負荷は大きくないことが多いです。

 

職務に合ってさえいれば、無理なストレッチをする必要もなく、ワークライフバランスの成立や高齢者のスキル活用もしやすいと言えます。

ただし、経営の動向によりその職務自体がなくなった場合には、代わりのポジションの確保がしにくいという面については、現在の日本の雇用制度内では対応が難しそうです。

 

まとめ

 

一億総活躍社会の実現のためには、政府や制度のバックアップが最重要ですが、持続可能な仕組みとしていく上では一人一人が考えて行く必要があります。

 

まずは、国民それぞれが「自分の生き方」を大事にし、会社に縛られたり頼りっぱなしにしたりするマインドを変える必要があります。

そして、各企業は社員への職務範囲や責任を見直し、場合によっては人事制度を転換するなどして、時代の変化に対応していくことが求められています。

 

 

 

 

ライター:広部 志行
大阪大学卒業後、大手出版会社にて人材リソースや教育のコンテンツ制作を担当。IT企業に転職し、システム開発やデータベース構築を行う。その後、広島に移住し大手商社でソリューション提案、戦略マーケティングを担当する中で、異業種交流研修会も企画運営。その活動の中から、社会貢献事業への目標を見出し、医師らとともに在宅医療クリニックを設立。人事・スタッフ教育・研修企画・広報マーケティングなど広く手がけ、独自開発した地域創生に関する体験型研修が評判となり、全国の医療機関や行政にて実施。現在はプロジェクトデザインのマーケティング責任者として、制作開発も担当。福井県出身。