
【事例】知識としてではなく、自らの判断と行動の結果として理念を腹落ちさせる!「Our Philosophy チャレンジ」(味の素株式会社)

組織名
味の素株式会社
事業内容
調味料・食品・ヘルスケア等
組織規模
単体3,627名 連結34,860名 (2025年3月31日現在)
私たちプロジェクトデザインは、人と組織、社会の変革をビジネスゲームで支援する会社です。お客様の変革課題に向き合い、変革への挑戦をシミュレーションするビジネスゲームを活用した様々なサービスやソリューションをご提供しています。
本稿では、「ビジョン・パーパス浸透」の変革支援の事例として、味の素グループの「Our Philosophy チャレンジ」をご紹介します。
「Our Philosophy チャレンジ」は、味の素グループ独自の強みである「アミノサイエンス®(※)」を通じた事業創造の可能性を体感できるシミュレーション型ワークショップです。本ワークショップで望ましい結果を得るためには、社会が抱える課題に関心を持ち、部門や立場の壁を超え、勇気を持って挑戦することが必要です。「Our Philosophy」を、どれだけ実践・実現することができるかが試されます。
※味の素グループは、100年以上にわたるアミノ酸のはたらきの研究や実装化のプロセスからさまざまな素材・機能・技術・サービスを創造してきました。さらにそれらを最大限に活用し、社会課題の解決や Well-being へつなげる独自の科学的アプローチを展開しています。味の素グループでは、その科学的アプローチを総称して「アミノサイエンス®」と呼んでいます。
この取り組みを推進された人事部 Our Philosophy 共感推進グループの皆様に、「Our Philosophy チャレンジ」の制作背景や、国内外にもたらした反響についてお話を伺いました。
<お話を伺った方>
味の素株式会社 人事部 Our Philosophy 共感推進グループ長 筧 雅博様
味の素株式会社 人事部 Our Philosophy 共感推進グループ Neupane Rajan(ラザン ネウパネ)様
味の素株式会社 人事部 Our Philosophy 共感推進グループ 出口 桂様
<インタビュアー>
株式会社プロジェクトデザイン 代表取締役 福井信英



<企業プロフィール>
味の素グループは、1909年に「おいしく食べて健康づくり」という志をもとに、世界で初めてうま味調味料「味の素®」を製品化しました。それから100年を超え、食品、アミノ酸、メディカルフード、農業畜産資材、香粧品、医薬中間体、電子材料と多様な事業を生み出し、現在に至っています。一連の事業創造のベースには、味の素グループ独自の「アミノサイエンス®」と、創業の志から進化した、事業を通じて社会課題を解決し社会価値と経済価値を共創する取り組みであるASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)があります。このASVをパーパスを実現するための中核と位置付けた理念体系を “Our Philosophy” として設定し、アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献することに挑戦しています。
「Our Philosophy」とは
—はじめに、味の素グループの「Our Philosophy」についてお聞かせください。
筧様:味の素グループは、創業以来一貫して事業を通じた社会課題の解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創造することで経済価値を向上し、成長につなげてきました。
この取り組みを「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」と称し、志(パーパス)を実現するための中核と位置付けた理念体系を「Our Philosophy」として設定しています。

「Our Philosophy」を表す図(Our philosophy|グループ企業情報|味の素グループ)
筧様:味の素グループの「Our Philosophy」は、当社グループが大切にしてきた理念を体系化したものです。最上位に志(パーパス)である「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」が位置し、その土台をASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)と、価値観・行動指針であるAGW(Ajinomoto Group Way)が支えています。
—「Our Philosophy」が刷新されたのは、「中期ASV経営2030ロードマップ」の発表と同時であったとお聞きしています。どのような経緯があったのでしょうか?
筧様:私たちが2023年に掲げた「中期ASV経営2030ロードマップ」は、従来の延長線上では到底到達できない野心的なものです。この高い目標を達成するには、従業員がバックキャスト(ゴールから逆算)して「今何をすべきか」を考え、自発的に新たな挑戦を起こす組織への変貌が不可欠でした。
10年ほど前から、経営陣が抱いていたのは、世の中の急速な変化に対する強い危機感です。「現場が部分最適に陥り、組織の動きが鈍くなっているのではないか」「組織全体で社会の要請に応えられているのか」という懸念がありました。
この課題に向き合い、味の素グループの従業員の一人ひとりが共感し挑戦し続けられるように、私たちは「Our Philosophy」を刷新しました。
―「Our Philosophy」は刷新される前後で志(パーパス)の内容が変わっていますね。これはなぜでしょうか?
筧様:志(パーパス)の変化は、私たち味の素グループの在りたい姿の進化そのものです。
「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題解決」から、「アミノサイエンス®で人・社会・地球の Well-being に貢献する」へと志(パーパス)を進化させることで、アミノサイエンス®の強みを活かし、ヘルスケア、フード&ウェルネス、ICT、グリーンの4つの成長領域に向けて持続的な成長を実現し、味の素がつくり出す社会価値を拡げていく狙いがあります。

「中期ASV経営 2030ロードマップ」(P5)より
シミュレーション型ワークショップ「Our Philosophy チャレンジ」とは
「Our Philosophy チャレンジ」は、味の素グループ独自の強みである「アミノサイエンス®」を通じた事業創造の可能性を体感できるシミュレーション型ワークショップです。
本ワークショップでは、参加者は、調達、製造、物流、販売、コーポレート、研究開発の6つの部門に分かれて活動します。ゴールは、ワークショップ終了時に人・社会・地球の「Well-beingメーター」を上げ、「Our Philosophy」が実現されている状態になること。
望ましい結果を得るためには、社会が抱える課題に関心を持ち、部門や立場の壁を超え、勇気を持って挑戦することが必要です。「Our Philosophy」をどれだけ実践・実現することができるのかが試されます。

「Our Philosophy チャレンジ」に込めた3つの想い
―「Our Philosophy チャレンジ」に込めた想いをお聞かせください。
筧様:3つあります。1つ目は、味の素グループの理念体系の最上位にある「志(パーパス)」と価値観・行動指針である「AGW(Ajinomoto Group Way)」を実際の行動(実行力)に直結させること。
そのため、私たちが大切にする価値観を中核に据えた体験ができるように「Our Philosophy チャレンジ」を設計しました。
2つ目は、味の素グループ独自の強みである「アミノサイエンス®」を通じた事業創造の可能性を従業員にリアルに体感してもらうこと。
実際のアミノサイエンス®の組み合わせで社会課題をどう解決できるのか? ワークショップで使用するカードを現実に即した内容としてつくり込むことで、従業員が「自分たちの事業にはこんな可能性があったんだ」と本気で没入し、深い気づきを得られるようにしました。
3つ目は、まずはバットを振ってみる(やってみる)マインドを体感できること。
味の素グループの従業員は、ルールを完璧に理解してから動こうとして石橋を叩きすぎる真面目な傾向があります。そこで、あえて「やりながら学ぶ(Learning by doing)」仕掛けを取り入れました。

「Our Philosophy」を知識としてではなく、自らの判断と行動の結果として腹落ちさせる
―「Our Philosophy チャレンジ」を通じて、従業員の方々にどのような疑似体験をしてほしいと思われましたか?
出口様:アミノサイエンス®という独自の強みを使って新しい事業を生み出し、社会貢献と利益創出を両立させる「味の素グループの事業プロセス」を体感してほしいですね。
「Our Philosophy チャレンジ」の中で、個人の志(マイパーパス)を起点に部門を越えて協力し、高い目標へ挑戦し続けるプロセスを通じて、「部分最適から全体最適への視点の切り替え」や、失敗を恐れず打席に立ち続ける「Nice Swing!(果敢な挑戦)」の大切さに気づくことができます。
志(パーパス)とASV、AGWのつながりによって示される「Our Philosophy」を知識としてではなく、自らの判断と行動の結果として腹落ちさせることが狙いです。
「失敗は単なるミスではなく、次の挑戦への前進である」というメッセージを可視化した「Nice Swing!カード」
― 「Our Philosophy チャレンジ」における、最も象徴的な仕掛けは何でしょうか。
ラザン様:「失敗は単なるミスではなく、次の挑戦への前進である」というメッセージを可視化した「Nice Swing!カード」の導入です。
たとえプロジェクトが結実しなくても、その勇気ある挑戦を「Nice Swing(良い挑戦だった)!」と称え合う仕組みを組み込んだことで、ワークショップの質が劇的に高まりました。
筧様: 新しい価値を生み出すためには、従業員が打席に立ち続けることが不可欠です。最も避けるべきは失敗を恐れてバットを振らない(自ら行動を起こさない)こと。「Nice Swing!」という言葉は当社の文化を象徴しており、この仕組みによって、「新しい価値を生むための挑戦を促したい」という私たちの意図が、体験を通じてダイレクトに伝わるようになりました。

打ち合わせを重ねるたびに「必ず良いものができる」という自信が私たちの中にも芽生えていきました
―「Our Philosophy チャレンジ」の制作過程における、私たちプロジェクトデザインの関わりはいかがでしたか。
出口様: 制作当初は、新しいワークショップで何を伝えるべきか、私たち自身も模索している状態でした。
それでも、プロジェクトデザインの皆さんの進行が非常にスムーズで、明確なスケジュールとともに伴走してくださったことが、大きな安心感に繋がりました。 そして、打ち合わせを重ねるたびに「必ず良いものができる」という自信が私たちの中にも芽生えていきました。
また、テストプレイを重ねる中で、味の素グループの独自の文化を深く理解していただき、「こういうやり方がいいですね」と一緒にコンテンツをブラッシュアップできたことで、自信作となるコンテンツがつくれたと思っています。
筧様:「このコンテンツを使って従業員の挑戦意欲を増したい」「実行力を強化したい」「パーパスドリブンな(パーパスを意識した)行動を強化したい」という私たちの思いを汲み取って、「それなら我々にできます」とプロジェクトデザインの皆さんが、自信を持って断言されるんですよね。
その自信はどこから来るのかと思いましたが、お話を深める中で、私たちが求めることに対して、非常に多くの引き出しやノウハウを持っていることを実感しました。
―嬉しいお言葉をありがとうございます。
「ワークショップの中で起きた出来事は、現実の仕事でも起きていませんか?」という問いかけに、皆さんがハッと気づく瞬間があります
―完成した「Our Philosophy チャレンジ」を体験した従業員の方々の反応はいかがでしたでしょうか?
出口様:「Our Philosophy チャレンジ」を通じて伝えたかったメッセージに気づいてくれている声が多いですね。「部分最適ではなく、全体最適の視点・情報共有が大切だと分かった」、「味の素グループ全体の資産であるアミノサイエンス®をしっかり理解しなければならない」などの感想をいただいています。
また、ふり返りのパート(※)では、「プレイ開始直後はマイパーパス(自分の志)を周りに共有して『自分の解決したい社会課題を選んで行動しよう』と言っているのに、プレイに熱中するうちに本来の目的を忘れてしまい、今ある手元のリソース(お金や時間、アミノサイエンス®の組み合わせ)でどうやったらお金を稼げるかに終始してしまう。その結果、自分がやりたいことは何だったか、隣の人がやりたいことをどうサポートできるかに頭が回らなくなってしまう」という反省点を挙げていただく方が多いですね。
※「Our Philosophy チャレンジ」では、ワークショップ後にワーク中の行動をふり返り、自身のメンタルモデル(無意識の思考の癖や思い込み)や得手不得手への気づきを促します。また、学んだ内容を他の状況にも応用できるように抽象化・一般化し、自分の中に落とし込みます。
筧様:プロジェクトデザインさんからは、ふり返りのパートが重要だと言われていましたが、本当にその通りだと感じました。
「ワークショップの中で起きた出来事は、現実の仕事でも起きていませんか?」という問いかけに、皆さんがハッと気づく瞬間があります。
「自分は、現実の仕事の中でも思っていることを口に出して言えていないところがある。あるいは、情報共有が上手くできていないかもしれない」。そういった気づきが本ワークショップの最大のポイントであり、ワークショップの体験が腹落ちする瞬間なのだと思います。

― 海外法人での反響も非常に大きいと伺っています。
ラザン様:おっしゃる通りです。「アミノサイエンス®の全体像を初めて理解できた」、「自部門以外の挑戦を知る機会になった」など、海外の従業員からの高い評価を得ています。
海外では、味の素グループの理念を体系的に理解する機会が少なかったため、ワークショップを通じて「Our Philosophy」の全体像を学べる点が非常に喜ばれている状況です。
この「Our Philosophy チャレンジ」は、中国、台湾、ベトナム、インドネシアなどへ急速に広がっている他、今後は、韓国、マレーシア、フィリピン、アメリカでも実施予定です。
その中でも驚いたのは、アメリカ法人の反応です。私がこれまで8年間に渡って海外とやり取りをしてきた中で最もプロアクティブ(主体的)な姿勢だと感じました。今後アメリカで100人規模での「Our Philosophy チャレンジ」の一斉実施を予定しており、その準備に、熱量高く取り組んでいます。私たちもファシリテーターとして出張支援する予定です。


「Our Philosophy チャレンジ」の今後の展望
―最後に、「Our Philosophy チャレンジ」が味の素グループ全体で活用されていくことを通じてどのような組織を目指していきたいか、皆様のビジョンをお聞かせください。
筧様:周りが「お前やりすぎだよ」と言うぐらい、バットを振っている人が社内のあちこちにいる状態を目指したいです。
かつてある役員の方から、「君たちは『そこまでやれと言っていない』と言われるほど頑張りなさい」と励ましの言葉をいただいたことがあります。失敗を恐れずに、ビュンビュンとバットを振る組織になれば新しい価値はどんどん生まれますし、何より働いていて楽しく、成長できる会社になれると確信しています。
ラザン様:従業員にも会社のフィロソフィーが浸透し、一人ひとりが自分の志(パーパス)と会社の志(パーパス)を繋げて考えられるようになってきています。それを見た味の素グループの他の法人が「私たちも負けていられない」と刺激を受けており、繋がっていると実感しています。このようなグローバルな共鳴をさらに広げていきたいです。
出口様: 一人ひとりが「なぜ味の素グループで働くのか」を自分の中でしっかり言語化できている状態を作りたいですね。目の前の業務から少し高い目標にチャレンジしようと思える状態です。
当社には、本人の期待値を「1.0」とすれば、背伸びが必要な「1.2」の仕事を任せ、成長を促す文化が根付いています。この「1.2の難易度(期待値)」の仕事を創意工夫によって「0.9の労力(時間)」で完遂し、そこで生み出した余白を自発的に次の挑戦へ投資していく。そんな内発的動機に基づいた行動が連鎖し、挑戦者を周囲が全力で応援する。その土壌が整えば、この組織はさらにとてつもない力を発揮できるはずです。
今はまだ、自らの志(パーパス)を胸に秘めていたり、目立つことをためらっている人もいるかもしれません。しかし「Our Philosophy チャレンジ」を通じて「挑戦してもいいんだ」という空気感を醸成し、志(パーパス)を同じくする味方を見つけやすい土壌を整えていきたい。その先に、一人ひとりの熱意が組織の巨大な推進力へと変わる未来を信じています。
―素晴らしいお話をありがとうございました。皆様の熱い想いが詰まった「Our Philosophy チャレンジ」が、これから世界中でさらに多くの「Nice Swing!(勇気ある挑戦)」を生んでいくことを楽しみにしています。

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