【実施レポート】ビジネスゲーム「SDGs de 地方創生」(福井県大野市主催「大野市サスティナブルフォーラム」にて実施)

「~住み続けたい結のまちを目指してみんなができること~」

福井県の東部に位置する大野市は、日本百名山のひとつ「荒島岳」をはじめとする雄大な自然に囲まれ、市街地には名水百選の「御清水(おしょうず)」をはじめ、多くの湧水池が点在しており、「名水のまち」として知られています。

また、秋から冬の時期には雲海に包まれ、まるで雲に浮かんでいるように見える「天空の城 越前大野城」や、歴史や情緒を感じる城下町など、自然と街並みの調和のとれたこのまちは、古くから今日までお互いに助け合う習慣や様々な地域との絆を大切には育んできた文化から、「結の故郷(ゆいのくに)越前おおの」と表されます。

そんな大野市では、令和3年度から新たに「第六次大野市総合計画」がスタートしました。

総合計画とは、地方自治体の全ての計画の基本であり、まちづくりの目標と方向性を示す最上位の計画で、向こう10年間に目指すまちのあるべき姿の指標となりますが、大野市ではその策定プロセスで多くの市民参加を経ていること、またSDGsと計画に掲げる施策を紐付けているのが特徴です。

そうした中、「第六次大野市総合計画」とSDGsの理解を更に深め、大野市民一人ひとりが、みんなで「住み続けたい結のまち」を目指すことを目的に、令和3年11月23日(火)に「大野市サスティナブルフォーラム」が開催されました。

…もともと、8月に開催される予定でしたが、全国的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、一時は中止となりました。

しかし、大野市役所の担当者は準備の中で、SDGsに熱心なまちの人たちが多くいたことをきっかけに、改めて開催することとしました。

フォーラムの午前は、カードゲーム「SDGs de 地方創生」体験会。

「SDGs de 地方創生」は、それぞれ異なった価値観や目標を抱いたプレイヤーとなり、それぞれの目標を達成することを念頭に一つのまちづくりを体験するカードゲームですが、参加者は、学生や社会人、経営者や団体職員など、立場も違えば年代も違う、まさに「一つのまち」で暮らす人たちをリアルに表しているようでした。

「SDGs de 地方創生」のゲーム中の様子
<ゲーム実施の様子>

ゲーム中も、リアルそのもの。

「このプロジェクト(仕事)をしたい、必ず返すからお金を貸してくれないか」

「ちょっと待った。そのプロジェクトはまちの状況を悪化させちゃうんじゃないか」

「どなたか、○○の資源カードを持っている人はいませんか!?」

ゲーム開始直後から動き回り、必要な資源やお金の交渉を巡る人。配られたカードを目の前に腕を組んで唸る人。お金を投資するから一緒にプロジェクトを実行しないかと持ちかける人。

様々な思惑や行動を繰り返し、ゲームが進行するにつれて、その動きは活発化。蓋を開ければ全員がまちのプレイヤーとして、

「みんなで出来ることは何だろうか」

「みんなで目標を達成するにはどうしたら良いのだろうか」

と、お互いをサポートしあい、より良いまちに向けて行動されていたのではないでしょうか。その結果、参加者全員の目標が達成される、いわゆる「パーフェクト」に結び付きました!

(余談ですが、筆者は30回以上「SDGs de 地方創生カードゲーム体験会」の運営やサポートに携わっていますが、パーフェクトの場に立ち会えたのは今回で3回目となりました!大野市の皆さんありがとうございます!)

午後は大野市行政経営部の吉田部長による第六次大野市総合計画のご紹介。2030年の将来像である「人がつながり地域がつながる 住み続けたい結のまち」に向けて、行政だけでなく市民や団体、企業の皆さんが身近なところから取り組める「みんなができること」の紹介がありました。

この計画の特徴は、「多くの市民の方々が関わって、市と一緒に作った『手作り』の計画」ということです。アンケート調査や地区別でのワークショップを通して具体的な議論を重ね、2年かけて策定されました。

第六次大野市総合計画のご紹介:大野市行政経営部の吉田部長
< 第六次大野市総合計画のご紹介:大野市行政経営部の吉田部長>

その後は、「SDGs de 地方創生」の共同開発者である(株)プロジェクトデザインの竹田法信氏による「みんなができるまちづくり~大野市総合計画の視点から~」と題する基調講演。

基調講演:プロジェクトデザインの竹田さん
<基調講演:プロジェクトデザインの竹田さん>

みんなの想いを束ねてビジョンを描くのが行政ならば、ビジョンに向けて行動していくのは全員。

みんながつながり合って支え合う、そうやって地域の「結(ゆい)」を作っていくことが大切で、例えば地域のお店を積極的に利用することによって地域内で経済循環させる(地域外への流出を減らす)ことの重要性や、みんなが意識して公共交通を利用することの意義などの話がありました。

大野市総合計画を「イシューマップ」で表現
<大野市総合計画を「イシューマップ」で表現>

そして、最後はパネルディスカッション。

テーマは「大野市におけるSDGsとそれぞれの役割」。竹田氏のコーディネートのもと、パネリストには企業、学校、地域、行政からそれぞれ以下の方々が顔を並べられました。

  • 越前信用金庫 土藏常勤理事
  • 阪谷小学校 青木校長
  • 和泉自治会 北爪副会長
  • 大野市 石山市長
パネルディスカッションの様子

SDGsを知るだけではなく、知ったうえでどのような地域活動が実際に行われているのかを共有しました。

SDGsを理解することによって、地域課題を見る解像度が高まっていく、そして、それぞれ異なる立場で異なる想いがあるからこそ、対話を通じて尊重し補いあう土壌が、この「結の故郷 越前おおの」には脈々と受け継がれています。

だからこそ、みんな一緒に具体的なアクションを起こしていくことができる、そんな意見交換がありました。

そんな想い溢れる「大野市サスティナブルフォーラム」の開催に向け、奮闘された大野市行政経営部政策推進課のご担当者のお二人よりコメントをいただきましたので紹介させていただきます。

大野市行政経営部政策推進課 千京さん(左)、小野田さん(右)
<左:千京さん、右:小野田さん>

小野田さん:市が、SDGsと総合計画をテーマとしてイベントを開催するのは今回が初めてであり、成果を残さなければという不安がありました。SDGsの推進には「知ってもらう、理解してもらう、行動してもらう」という3段階があると考え、まずは「知ってもらう、理解してもらう」あたりをテーマにすることにしました。

また、準備の過程でパネリストの一人から「『ふくいSDGsパートナー』の中で連携してくれる主体を探していた」と聞きました。このようなニーズがあることを知り、SDGsを合言葉としてまちづくりの仲間が増えるようなフォーラムにしたいと思いました。

フォーラムで最も印象に残っているのは、カードゲーム「SDGs de 地方創生」です。対話による協働のまちづくりがいかに難しいかを改めて感じた場面でした。

大野市のブランド・キャッチコピーは、「結の故郷(ゆいのくに) 越前おおの」です。「結」という言葉には、昔から農作業や冠婚葬祭などのさまざまな仕事をお互いに助け合う習慣の意味があります。「SDGs」と「結」はよく似ており、どちらも「おもいやり」や「おたがいさま」といった意味合いを持っています。大野の人たちは意識せずとも、ずっと昔からSDGsが目指している社会を生活してきたものと思っています。

これからはSDGsを意識してもらうことが大切です。今回のフォーラムが、参加者にとって自分たちの暮らしや活動が見えないところにどんな影響を及ぼしているのか、住み続けたいまちを作っていくには何をしなければならないのか、考えるきっかけになったなら嬉しいです。

千京さん:4月からSDGs担当になりましたが、SDGs推進と言われても何から始めればいいのかわかりませんでした。小野田さんと役割分担をして準備を進める中で、会場内で「ふくいSDGsパートナー」に登録している市内の企業や団体のSDGsの取り組みを紹介する展示を企画しました。展示のために情報提供の協力を声かけした時も、みなさんとても協力的で嬉しかったです。もともと8月にフォーラムを開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大によって一旦中止になった時は本当に悔しかったです。

フォーラム終了後に、参加者から「このようなフォーラムに結構参加しますが、とても勉強になる良い内容のフォーラムでした」とお声がけいただいた時は本当に嬉しかったです。

私たち行政職員が抱えている課題=まちの課題ですが、市民一人ひとりが「自分事」として捉えるには、私たち行政がまちづくりについて工夫して情報発信していく必要があると感じています。

堅苦しくなく気軽にみんながまちづくりに参加できるようなまちとなるよう努めていきたいです。

また、当日のフォーラムで終日運営したプロジェクトデザインの竹田さんにも話を聞きました。

プロジェクトデザイン 竹田
<プロジェクトデザインの竹田さん>

フォーラム登壇のきっかけをくださったのは、僕が富山市役所職員時代、市町村横断的に開催された職員研修でご一緒させていただいた大野市職員の方でした。

その方が私を政策推進課の小野田さんにご紹介いただいたのがきっかけでした。さらに、当初は8月に実施するはずが新型コロナウイルス感染拡大により延期となり、「再度の延期はしない」という前提で満を持して実施したのがこのフォーラムでした(本当に、道のりが長かった・・・)。

フォーラム終了後の控室で大野市の石山市長から「このイベント、本当に大成功でしたね!」と言っていただき、全身の力が抜けていきました。

会場からは、まちづくりに向けた具体的なアクションの宣言がいくつもなされ、意識の変容が行動変容に繋がっていったように思います。「まちづくりはみんなでやる」という教養が根付いているのだと感じました。

<筆者あとがき>
今回ご縁があって(株)プロジェクトデザインの竹田さんにお声掛けいただき、サポートメンバーとして「大野市サスティナブルフォーラム」に関わらせていただきました。

このフォーラム開催に向け、ご担当されたお二人だけでなく、石山大野市長をはじめ部課組織の皆さんがチーム一丸となって開催を実現したこと、そして開催がゴールでなく大野市の未来の姿を見据えて市民総ぐるみで目指すという熱い想いが伝わる、とても刺激的で良い経験となりました。

素晴らしい機会をいただけたこと、この場を借りて御礼申し上げます。

SDGs de 地方創生公認ファシリテーター
大槻 拓美(長野県伊那市)

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