
【事例】組織統合に向けたコミュニケーションの土台を築くためのマネージャー合宿研修に「ビールゲーム Online」を活用(塩野義製薬)

組織名
塩野義製薬株式会社
業界業種
医薬品
事業内容
医薬品、臨床検査薬・機器の研究、開発、製造、販売
組織規模
4,959名(2025年3月31日時点)
私たちプロジェクトデザインは、人と組織、社会の変革をビジネスゲームで支援する会社です。お客様の変革課題に向き合い、変革への挑戦をシミュレーションするビジネスゲームを活用した様々なサービスやソリューションをご提供しています。
本稿では、「組織統合」の変革支援の事例として、塩野義製薬株式会社(以下、塩野義製薬)におけるビジネスゲーム「ビールゲーム Online」の活用事例をご紹介します。
「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」という2030年に成し遂げたいビジョン(2030年Vision)の実現に向けて積極的な事業投資を進める塩野義製薬では、M&A後のPMI(統合に向けた活動)の一環として、SHIONOGIグループのサプライチェーン領域のコミュニケーションの土台を築く目的のもとに一泊二日のマネージャー合宿研修を実施されました。
このマネージャー研修の中で活用いただいたビジネスゲーム「ビールゲーム Online」について、その導入背景と効果、今後の展開についてインタビュー形式でお届けします。
<お話を伺った方>
塩野義製薬株式会社 サプライ管掌オフィス 久米田 慎一郎 様
塩野義製薬株式会社 サプライ管掌オフィス 伊藤 侑作 様
<インタビュアー>
株式会社プロジェクトデザイン 古野知晴

<企業プロフィール>
1878年創業の塩野義製薬は、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」を基本方針とし、感染症治療薬をはじめ、医療用医薬品を中心に診断薬等の研究開発、製造、販売活動を行っています。世界中の患者さんや社会の抱える困りごとをより包括的に解決するための革新的なヘルスケア製品・サービスを継続的に創出し、時代のニーズに応えてさらなる進化を目指しています。
単なる「知識伝達型の研修」ではなく、「本音で語り合い、コミュニケーションの土台を築くための研修」を実現するツールとしてビジネスゲームを選定
―はじめに、一泊二日のマネージャー合宿研修を実施された背景をお聞かせいただけますか。
久米田様:今、私たち塩野義製薬では、鳥居薬品の完全子会社化(2025年9月1日付)とJTの医薬事業の承継(2025年12月1日付)、そしてグループ会社であるシオノギファーマの吸収合併(2027年4月1日付)など、M&A後のPMI(統合に向けた活動)が最優先の経営課題となっています。
当社では、R&D、ヘルスケア事業、サプライ、コーポレートの4つの管掌のもとに本部を置く業務執行体制を構築しています。
私たちが所属するサプライ管掌においても、鳥居薬品とシオノギファーマのサプライチェーン部門との組織統合を進めていく中で、元の所属会社が異なることに起因する組織間の心理的な壁が依然として立ちはだかっており、コミュニケーションの希薄化やミスコミュニケーションの問題を招いていました。
そんな状況において、私たちは、SHIONOGIグループのサプライチェーン領域を支える各社のマネージャー同士が互いに理解し合い、共通認識を醸成することが必要だと考え、急遽、一泊二日のマネージャー合宿研修を企画することにしました。
単なる知識伝達型の研修ではなく、本音で語り合い、コミュニケーションの土台を築く研修。これを一丁目一番地の施策として位置づけたのです。
―研修はどのような内容で行われましたか。
久米田様:1日目は工場見学のほか、それぞれの人となりや業務を知るためのプログラムとして業務紹介や懇親会を行いました。そして2日目の午前中に「ビールゲーム Online」を実施し、合同研修を締めくくりました。

―プロジェクトデザインにご依頼いただいた経緯をお聞かせください。
伊藤様:ビジネスゲームというツールがあること、そして御社の存在は以前から知っていました。
今回の研修目的である「コミュニケーションの土台を築くためのツール」を検討する中で、御社のビジネスゲームを選ばせていただきました。関係性の浅い間柄であっても「オープンなコミュニケーション」が自然とできる点が決め手となった形です。
久米田様:合宿研修の2日目のプログラムについては「サプライチェーンをテーマにディスカッションし、アクションプランを決める企画」など、一般的な研修も考えていたのですが、「その内容ならオンラインでもできるよね」という意見が挙がりました。
「せっかく拠点の異なる人たちが同じ場所に集うのだから、空気感も含めて一体感が醸成できるような企画が良いよね」という話になり、それであればビジネスゲームだろうと考えました。
—なるほどです。一体感の醸成という観点で、ビジネスゲームはどういった点が良いと感じられたのでしょうか?
久米田様:参加者が「思っていることを正直に話し合える環境」をつくることができる点ですね。
利害調整が必要な現実世界の役割から離れて、それぞれが一人のプレイヤーとして協力し合うビジネスゲームであれば、心理的安全性が保たれた状態の中で失敗を恐れずに率直なコミュニケーションができると感じています。
―ビジネスゲームの中でも「ビールゲーム Online」を選ばれたのはなぜでしょうか?
伊藤様:実は、合宿研修にはコミュニケーションの土台を築く目的のほかに、各社のマネージャーがサプライチェーンの全体像を深く理解する目的を掲げていました。この2つの目的に最も合致したのが、「ビールゲーム Online」だったのです。
―その目的であれば、サプライチェーン全体のコスト最適化に挑戦する「ビールゲーム Online」が最適ですね。
ビジネスゲーム「ビールゲーム Online」とは
「ビールゲーム Online」は、参加者がビールのサプライチェーンの4つの役割・工程(工場、一次卸、二次卸、小売店)に分かれて4~8人でチームを組み、サプライチェーン全体のコスト最適化を目指すビジネスゲームです。
消費者から小売店、小売店から二次卸、二次卸から一次卸、一次卸から工場へと週単位でビールを発注する中で、サプライチェーン全体のコスト最適化を実現したチームの勝利となります。
各役割・工程間での発注情報の共有が禁止されるルールがある中で在庫と受注残(欠品)のコスト増をいかに抑えるかが問われます。

「ビールゲーム Online」の体験を通じて、ベテランでも部分最適の罠に陥ることを痛感
―「ビールゲーム Online」のどのような点を評価いただいているのかについてお聞かせください。
伊藤様:プロジェクトデザインの「ビールゲーム Online」は、オンラインでリアルタイムに進行できる点が良いですね。
在庫コスト・欠品コストなどの数値の変化が即時反映され、ゲーム参加者の行う意思決定の影響が可視化されます。また、意思決定をする際には時間の制約があるので、現場さながらの緊張感が再現できています。
久米田様:サプライチェーンは、販売側の営業目標と生産側の製造数の間を取り持つ立場です。販売側からは「なぜ供給できる製品がないのか」、生産側からは「年間計画が決まっているのになぜ毎月変更させるのか」と言われ、常に板挟みの状態となります。
私たちが扱う医薬品は、感染症の流行などで需要が激しく変動する不確実性を孕んでいます。それが販売側と生産側の板挟みをより過酷なものにしているのです。
それでも、サプライチェーン領域のマネージャーたちは「手術で使われる薬や感染症の治療薬など、医療現場で必要になる命に直結する医薬品を絶対に切らしてはいけない」と安定供給への強い使命感を持って仕事にあたっています。
このような背景を踏まえて、販売や生産などの他部署の苦労や、板挟みが起きる構造を客観的に理解するツールとして「ビールゲーム Online」を評価しています。このゲームには、感情を揺さぶられながらシステム思考を醸成し、システムの本質を理解するプロセスがあり、研修後の深い対話と良好なフィードバックを生む要因になると考えています。
―今回、その「板挟み」の構造を体感するために、「ビールゲーム Online」の実施にあたって工夫されたことはありますか?
伊藤様:はい。他部署の苦労や板挟みの正体を客観的に理解できるよう、できる限り普段の業務とは異なる役割を担当してもらいました。
久米田様:自身の担当外の役割であっても、マネージャー陣にはサプライのプロとしての強い自負があります。そのため「絶対に失敗できない」という熱気がゲーム開始直後から溢れていました。
マネージャー陣がゲームに熱中する様子を観察していて印象的だったのが、ベテランのキーパーソンほど、ゲームの要諦を理解しつつも、現実さながらに発生する在庫過多や欠品に対して感情をあらわにする場面があったことです。
ゲーム終了時の感想としても、「自分ではプロとして熟知しているはずのサプライチェーンで、やってはいけないミスを犯してしまった」「これが現実でなくゲームで本当に良かった」などの率直な声が上がっていました。
普段は他部署に不満を抱いていたのに、いざ自分がその立場になると同じ過ちを起こしてしまう。そんな悔しくも面白い体験を通じて、「SHIONOGIグループ全体の利益を考えようとしても、実際には部分最適に陥りがちである現実」を痛感させられたのだと思います。
―「板挟み」の構造は、それぞれが良かれと思って判断する「部分最適の視点」から引き起こされているということですね。
久米田様:はい。「熟練のプロであっても、情報が遮断されたシステムの中では部分最適に陥ってしまう」という事実は、参加者に大きな衝撃を与えました。
問題の所在は「個人の能力ではなく、システム(構造)」にあり、変えるべきは「人ではなく、仕組み(コミュニケーション)」なのだという本質的な気づきを得られたと感じます。
「ビールゲーム Online」を通して、こうした構造的な対立や板挟みの正体を認識できたことで、部分最適から抜け出し、課題を自分事として捉え直すことが可能になったと言えます。

ゲーム体験を通じて互いの心理的距離が縮まった。研修前からすると、ここまで仲良くなるとは考えられなかった。
―「ビールゲーム Online」の実施によって、「コミュニケーションの土台を築く」目的の方は達成されましたか。
久米田様:はい、達成できたと思います。ゲームはお互いが初対面同士となる2〜3人のチーム編成で組んだのですが、肩を寄せ合って1つのPC画面を覗き込みながらゲームに取り組む姿が微笑ましかったです。
普通はまだどこか「心理的な壁」や「相手への遠慮」があるものですが、それが全く感じられない。夢中でゲームに没頭する中で、いつの間にか互いの心理的距離が縮まっているように感じました。
合宿研修の開始時の様子をふり返ると、ここまで仲良くなるとは考えられなかったですね。

―「ビールゲーム Online」のゲーム体験の中では、敢えて「その場にいるのに話せない」という不自由な状況を体験いただいたことで、ゲーム体験後のふり返りが非常に盛り上がりました。参加者の皆様にはどのような変化が起きていたのでしょうか?
久米田様:ゲーム中は喋りたくても喋れないという足かせ(※)があり、全く思い通りにならないのが面白かったです。
※「ビールゲーム Online」では同じ役割の人とは相談できるものの、異なる役割間では直接会話できず、スタンプ(つぶやき)しか送信できないルールがあります。

久米田様:普段は饒舌なマネージャー陣が、話せないストレスを体験したことで、ゲーム体験後のふり返りの時間が非常に活発な対話の場となりました。
「喋れば済むのに、喋れないとそんなことになるのか」、「普段もろくにコミュニケーションをしないで、指示だけ言ってしまっている時がある」などの感想に現れているように、深い学びに繋がっていたことがとても良かったです。

―感想と言えば、今回の研修では、現実の業務と結びつけて具体的な意見を出される方が非常に多かったことが印象的でした。
久米田様:仰る通りだと思います。弊社では研修で終わらせない癖がついています。
「同じ数字なのに、立場や部署、組織のカルチャーによって捉え方が異なり、認識のずれが生じている」、「ずれが起きることを前提に、日頃からのコミュニケーションやそれぞれの部門の背景・状況を踏まえた合意形成が重要だ」など、研修の学びを実務に活かす意思を感じ取れる意見が多く、プロジェクトデザインさんにお願いした甲斐がありました。
―ありがとうございます。合宿研修の後に起きたコミュニケーションの変化はいかがでしたか?
久米田様:はい。電話・チャット・メール、いずれのコミュニケーションにおいても非常にやりやすくなったと聞いています。
これには、研修後に本社のオフィス機能が新たな拠点に集約されたことも関連しています(2025年11月27日より業務を開始)。
「ビールゲーム Online」を活用した研修を通じて、心理的な距離が近づいたこと。そこに、これまで拠点が離れた場所にあった鳥居薬品とシオノギファーマのサプライチェーン、グローバルサプライチェーン戦略部や営業・販売機能が一か所に集う場ができたことによって、物理的な距離が近くなったこと。
この相乗効果によって、コミュニケーションの希薄化やミスコミュニケーションの問題は解決に向かっていると感じています。実際に、昼食時やコーヒーを飲みに行く時などの場面でも、元の所属会社の壁を越えた雑談や会話が生まれています。
ちなみに、新オフィスには、和室でボードゲームもできる共有空間を設けたので、若手の有志が勤務後にゲームを行う様子もよく見られます。こういった組織を跨ぐコミュニケーションをさらに促進していきたいと考えています。
対立が起きやすい部門の人たちが一緒にゲームをすることには大きな意味がある
―私たちプロジェクトデザインでは、「ビールゲーム Online」の進行を担う講師の派遣とゲーム運営を行わせていただきました。私共のメンバーの仕事ぶりはいかがでしたか。
久米田様:総じてストレスがなく、プラスしかありませんでした。講師の山崎さんは、初対面同士で緊張していた我々をうまくリラックスさせながら進めてくださいましたし、進行も時間配分も非常に上手でした。安心してお願いできる講師だと思いました。
事務局の宮崎さんも、事前の研修準備から当日の研修実施の裏方まで上手くサポートしてくださいました。確認事項が明確だったので、こちらも思考を整理する時間を持つことができ、非常に心地よく進められました。
―嬉しいお言葉をありがとうございます。最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか。
久米田様:この「ビールゲーム Online」をサプライチェーンに携わる人全員に展開する機会があってもいいと感じています。今回はマネージャー層が対象でしたが、実務者の方にもやっていただきたいと思います。
また、サプライチェーンと関連組織の間でも、たとえばS&OP(セールス&オペレーション)会議は、業務特性上、営業・販売機能とサプライの間で対立が起きやすいので、セールスとオペレーションの人たちが一緒にゲームをすることには大きな意味があると感じています。
―本日はありがとうございました! 今後ともよろしくお願いいたします!
参加者の声
"組織文化が異なるマネージャー同士が、生産・サプライのプライドにかけて真剣に、かつ肩寄せて話し合う様子が見られ、マネージャー間の人材交流を図ることができた”
"自部門の判断が他部門に与える影響を理解できたとの声が多かった。部門間の情報共有不足が過剰在庫や欠品を招くことを体験し、参加したマネージャー全員が共通して、コミュニケーションの重要性を再認識した”
"鳥居薬品マネージャーのクロージングで、「研修全体のうち最も印象に残ったのが『ビールゲーム』でした」とのコメントがあり、気づきや学びを活用できる手応えを得た。今後は(サプライ管掌の)All SHIONOGIで日常業務の意思決定やリーダーシップ発揮に活かせる土壌ができた”
鳥居薬品の社内報
鳥居薬品の社内報では、以下のように紹介されました。
“全体最適化の重要性を体感する研修
研修中で最も印象的だったのが、2日目に行った “ビールゲーム” と呼ばれるサプライチェーンにおける全体最適化の重要性、意思決定の困難さを学ぶための研修でした。
工場・卸・小売といった役割のチームに分かれ、サプライチェーンの中で各チームが在庫量を管理しコスト最適化を目指すというゲームです。私のチーム(工場班)では恥ずかしながら過剰在庫・工場未稼働の発生という、実際には決して起こしてはいけない結果となってしまいましたが、これがゲームでよかったと安堵すると共に、自分の役割において最適な意思決定を行っても全体としては最善にはならないということ、問題解決のために全体を俯瞰して物事を理解し考えること、情報収集とコミュニケーションの大切さを身に染みて分かりました。
これをただのゲームで終わらせるのではなく、教訓として実際の業務にも活かしていきたいと思いました。サプライ領域ではない皆様にもぜひやっていただきたいと思います”
ご案内
ビジネスゲーム「ビールゲーム Online」は、「自分自身のメンタルモデル」「システム思考」「対話の必要性」について学ぶことができます。
ゲーム中は各役割・工程間でのコミュニケーションに制約があるため、毎回自分たちに届く発注情報に対して「なぜこんなに発注数が多い(少ない)のか」「私たちの意図がなぜ伝わらないのか」など、様々な感情の揺らぎが起こります。
その感情の起伏がなぜ起こったのか、自身のメンタルモデルに気付くことで、自分と他者のメンタルモデルのズレが生み出す行動や結果の行き違い(過剰在庫や受注残)を理解できます。
システム思考研修、コミュニケーション研修、チームビルディング研修、ロジカルシンキング研修などに活用できます。
社内外のさまざまなステークホルダーと共に、サステナビリティ推進における壁を乗り越えるためのコミュニケーション(研修やイベント)にご利用いただけます。
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