「カーボンニュートラル」とは何か?企業の取り組み事例と、私たちにできること。

カーボンニュートラルとは何か? そして、カーボンニュートラルを達成するために世界と日本ではどのような取り組みが行われているのか?

本記事では、カーボンニュートラルについての基本的な知識を共有すること、そして、様々な実践事例をご紹介することを通じてカーボンニュートラルの達成に貢献します。

Contents(目次)

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは何か。環境省では以下のように定義をしています。

“カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています”

参考:カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省

待ったなしの地球温暖化対策

なぜ、カーボンニュートラルを達成する必要があるのでしょうか?

それは、地球温暖化の進行を主因とする自然災害の深刻化(猛暑や大規模干ばつ、集中豪雨や大型台風など)が懸念されているからです。

人が使用する化石燃料(石油や石炭)の燃焼によって生じる二酸化炭素などの温室効果ガスが地球全体の温度を高くする一方で、二酸化炭素を吸収する役割を担う森林が森林伐採や森林火災によって破壊される状況が続いています。

地球の平均気温がどのぐらい上昇しているかについては、以下の動画が参考になります。1880年からの平均気温の変化を時系列で追うことで、気温上昇のペースが徐々に上がっていることに気付かされます(1980年以降の変化が顕著です)。

世界の二酸化炭素の排出量

人の活動によって増加した主な温室効果ガスには幾つかの種類がありますが、二酸化炭素の占める割合が全体の76%を占めています。

<人為起源の温室効果ガスの総排出量に占めるガスの種類別の割合>

    • 二酸化炭素:76.0%
    • メタン:15.8%
    • 一酸化二窒素:6.2%
    • フロン類等:2.0%

参考:気象庁 Japan Meteorological Agency

この二酸化炭素に関して、世界各国ではどの程度の量を排出しているのでしょうか? その答えを知る上では下図が参考になります。

全体の約3割を排出している中国を筆頭に、アメリカ14.1%、インド6.9%、ロシア4.9%と続き、日本は世界第5位の位置にいます(全体の3.2%)。

上位はいわゆるG20の国々が占めている状況です。

カーボンニュートラルの達成に向けた世界の動き

2050年カーボンニュートラル

温暖化という地球規模の問題に立ち向かう上では世界の団結が大前提となることは言うまでもありません。世界の国々は国連の下に集い、COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)を含めた様々なレベルの交渉を継続しています。

2015年にフランスのパリで開催されたCOP21では、気候変動に関する2020年以降の新たな国際枠組みである「パリ協定」が採択されました。そして、

  • 世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
  • 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

などのパリ協定の合意に基づき、120以上の国・地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げました。日本では2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを2020年10月に政府が宣言しています。

経済と環境の好循環を作るためのグリーン成長戦略

かつて、地球温暖化に対応することは経済成長の制約・コストと見なされる向きがありました。

しかし、MDGs(ミレニアム開発目標:2001~2015)やSDGs(持続的開発目標:2016~2030)の取り組み、ESG投資(環境・社会・ガバナンスを考慮した投資)の普及などの国際的な潮流の中で、今、地球温暖化に対応することは成長の機会として捉えられるようになっています。

日本においても、地球温暖化対策を積極的に行うことで産業構造や社会経済の変革を実現し、経済と環境の好循環を作っていく産業政策として、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。

“2050年カーボンニュートラルの実現は、並大抵の努力では実現できず、エネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベーションの創出といった取組を、大きく加速することが必要です。そのため、グリーン成長戦略に基づき、予算、税、金融、規制改革・標準化、国際連携など、政策を総動員します。これにより大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった企業の前向きな挑戦を後押しし、産業構造や経済社会の変革を実現します”

参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました(METI/経済産業省)

このグリーン成長戦略の中で、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて「産業として成長」と「温室効果ガスの排出削減」を両立する観点で重視されている分野は以下の通りです。

  • エネルギー関連産業
    ①洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)
    ②水素・燃料アンモニア産業
    ③次世代熱エネルギー産業
    ④原子力産業
  • 輸送・製造関連産業
    ⑤自動車・蓄電池産業
    ⑥半導体・情報通信産業
    ⑦船舶産業
    ⑧物流・人流・土木インフラ産業
    ⑨食料・農林水産業
    ⑩航空機産業
    ⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業
  • 家庭・オフィス関連産業
    ⑫住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業
    ⑬資源循環関連産業
    ⑭ライフスタイル関連産業

各産業分野では「現状の課題」「今後の取り組み」「2050年までの成長戦略の工程表」が定められており、それを実現するために、国はあらゆる政策と政策ツール(予算、税制、金融、規制改革・標準化、国際連携など)を総動員しています。

例えば、予算については、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に10年間で2兆円の基金を造成しています。2050年カーボンニュートラルは極めて困難な課題であり、これまで以上に野心的なイノベーションへの挑戦が必要だからこその枠組みです。

“2050年カーボンニュートラル目標に向けて、令和2年度第3次補正予算において2兆円の「グリーンイノベーション基金」(以下「基金」という。)を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に造成しました。本基金では、「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策であるグリーン成長戦略において実行計画を策定している重点分野のうち、特に政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期間の取組が必要な領域にて、具体的な目標とその達成に向けた取り組みへのコミットメントを示す企業等を対象として、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援していきます”

参考:グリーンイノベーション基金 (METI/経済産業省)

カーボンニュートラルの達成に向けた企業の取り組み

住友林業

住友林業では、事業の礎である森林経営と木造建築、木の価値をさらに深める取り組みにより、脱炭素社会の実現に貢献しています。

“日本は国土面積の約7割を森林が占める、いわば森の国だ。しかし実態を見ると、その4割に及ぶ人工林の多くは十分な手入れがなされていない。森林は「植え、育て、活用し、また植える」という循環可能な資源としての価値に加えて、二酸化炭素(CO2)の吸収・固定、生物多様性保全、水源涵養、土砂災害防止といった多面的機能を持っているが、現状のままではこうした機能の低下が懸念される。また、若い木は成熟した木に比べ多くのCO2を吸収するが、伐採が滞り森林が高齢化するとCO2の吸収量も落ちていく。森林を適切に維持していくには年々力を失ってきた林業の再生が必要であり、国としても2010年、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を制定して木の積極活用を促している。森林、木を事業の柱とする住友林業は、森林維持と木材利用のこうした課題に本業で応えるため、2011年、商業・教育・事務所といった非住宅分野の施設を木造化・木質化する“木化”の取り組みを開始し、多くの実績を積み上げている”

“そもそもなぜ建築物の木化が温室効果ガス(GHG)排出削減に寄与するのか。まず木造は、鉄骨や鉄筋コンクリート造の建築物に比べて躯体部分の材料を製造する際のCO2排出が少なくなる。また、木は生長過程で大気中にあるCO2を吸収し、固定しているため、木材を建築資材として活用すればそれだけCO2排出を抑制できることになる。加えて、解体した際は木材をバイオマス発電の燃料として使えるので、化石燃料の削減につながり、脱炭素に向けて効果的なインパクトを与えられる”

参考:住友林業×脱炭素|住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~|現在の取り組み|住友グループ広報委員会

イーレックス

イーレックスは日本の脱炭素社会の実現に向けて、バイオマス発電の普及を通じて日本の発電量に占める再生可能エネルギーの割合を高めていくことを使命に掲げています。

現在5基のバイオマス発電所を所有する日本有数のバイオマス発電事業者として、着実に、力強く事業を推進しています。

“バイオマス発電所の建設地には、いくつかの立地条件があります。十分な敷地面積はもちろん、バイオマス燃料を輸送する大型船が停泊可能な水深の深い港が近くにあること。また、バイオマス燃料の搬送が容易であることや、送電線の空き容量があることも重要です。また、事前に環境への影響を調査・予測・評価を行い、深刻な公害や自然破壊を防ぐことを目的に「環境アセスメント(環境影響評価)」を行います。何年もかけて、地域にお住まいの皆さまの理解と安心を得られるように説明会を開催したり、地方公共団体などの意見を取り入れながら、手続きを進めていきます。建設にあたっては、地元企業や発電事業に理解のある事業者とのパートナーシップも重要です。当社の理念「共創の輪」の下、企業単体での事業推進ではなく、様々なパートナー企業と協働することで、互いにメリットをもたらすwin-winの関係を築くこととで事業を着実に実行し、成長することができるからです”

参考:日本の脱炭素社会の実現に向けて|イーレックス

日本ハム

日本ハムではライフサイクルアセスメント(製品やサービスに対する、環境影響評価の手法)を実施しています。主に個別の商品の製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用までの各段階における環境負荷を明らかにし、その改善策をステークホルダーと共に議論し検討しています。

“商品がお客様の手にわたり、消費されるまでには、原料(お肉、小麦等)の調達・生産・加工に始まり、商品パッケージの廃棄・リサイクルまでに大きく分けて5つの段階があります。これらの5段階でどれだけの環境負荷が発生しているのかを計算し、評価する「ライフサイクルアセスメント」の手法を利用した「カーボンフットプリント(炭素の足跡)」に取り組んでいます”

参考:ライフサイクルアセスメントの実施|気候変動|日本ハム株式会社

カーボンニュートラルの達成に向けて私たちにできること

家庭の中でのCO₂の排出を減らす

環境省の発表では、CO₂の部門別排出量(2020年度確報値)の中で家庭部門の占める割合は15.9%。全体で4番目に高い位置にある家庭におけるCO₂排出量を減らす工夫をすることには大きな意味があります。

  • 再生可能エネルギーのプランを取り扱っている電力会社に切り替える
  • エアコン(冷暖房機器)の使用は適切な温度設定にする
  • お風呂の残り湯を洗濯に活用する
  • 家電製品のコンセントをこまめに外す
  • 照明をこまめに消す
  • 車の運転頻度を減らす(公共交通機関や自転車を使う)

など、自分が無理なくできるものから取り組むことをお勧めします。

環境への配慮が見られる商品やサービスを使う

商品やサービスを購入する際に環境に配慮するマークの付いたものを選ぶ。それだけでも間接的にCO₂削減に貢献することができます。「環境ラベル等データベース」をチェックして、どんなマークがあるのかを事前に調べておくこともお勧めです。

    •  エコマーク
    • グリーンマーク
    • バイオマスマーク
    • グリーン・エネルギー・マーク
    • 間伐材マーク
    • エコリーフ環境ラベル
    • カーボン・ニュートラルラベル
    • カーボン・オフセット認証ラベル

参考:環境省_環境ラベル等データベース

監修者プロフィール

竹田 法信

富山県立富山中部高等学校卒業、筑波大学第三学群社会工学類卒業。大学卒業後は自動車メーカー、株式会社SUBARUに就職し、販売促進や営業を経験。その後、海外留学などを経て、地元・富山県にUターンを決意。富山市役所の職員として、福祉、法務、内閣府派遣、フィリピン駐在、SDGs推進担当を歴任。SDGsの推進にあたり、カードゲーム「2030SDGs」のファシリテーションを通して、体感型の研修コンテンツの可能性に魅せられ、プロジェクトデザインへの転職を決意。ファシリテーターの養成、ノウハウの高度化などを通して社会課題の解決を目指す。富山県滑川市在住、地元・富山県滑川市総合計画審議会委員。

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