SDGs3「すべての人に健康と福祉を」の企業の取り組み事例・私たちにできること

  • SDGs3「すべての人に健康と福祉を」
    あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する(Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages)

本稿では、このSDGs3の理解を深め、実際に企業が取り組みを進めている事例を知り、私たちにできることを考えていきます。

Contents(目次)

SDGs3「すべての人に健康と福祉を」とは?

健康とは何か、福祉とは何か

健康という言葉は聞きなれていても、具体的な言葉の定義を知らない方は少なくありません。WHO憲章(日本WHO協会訳)では「健康」を以下のように定義しています。

“健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあること(“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity)”

次に、福祉とは何か。福祉には「公的扶助やサービスによる生活の安定、充足」という意味があります(参考:広辞苑)。

日本では、

  • 誰もが医療サービスにアクセスできる国民皆保険制度
  • 高度な医療インフラ
  • 安全でおいしい水を供給する水道インフラ
  • 安全対策が充実している交通インフラ
  • 義務教育課程で提供される保健教育
  • 健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護制度

など、人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するための取り組みが行われていますが(※)、そうでない国は、途上国を中心に数多く存在します。

例えば、国土交通省の調査では水道水を飲める国は15ヶ国(特定都市含む)しかありません。また、世界銀行と世界保健機関(WHO)の発表によると、世界人口の半数が基礎的保健サービスを受けられずにいるとのこと。

・参考:THE WORLD BANK|プレスリリース|2017年12月13日

上述の事例に限らずに、SDGs3を構成する13個のターゲットに示されている通り、私たちが解決すべき問題は多岐に渡ります。

※日本は世界の中で福祉が充実している一方で、自殺率の高さ・介護難民の増加・医師不足・社会インフラの老朽化などの固有の問題を抱えているのも事実です。

SDGs3を構成する13個のターゲット

3.1|2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。

3.2|全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、 2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。

3.3|2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。

3.4|2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。

3.5|薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。

3.6|2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。

3.7|2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用できるようにする。

3.8|全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。

3.9|2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。

3.a|全ての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。

3.b|主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。

3.c|開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。

3.d|全ての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。

SDGs3「すべての人に健康と福祉を」の企業の取り組み

メロディ・インターナショナル

メロディ・インターナショナルでは「安心・安全な出産を世界の全てのお母さんへ提供する」という理念を掲げ、発展途上国・新興国を中心として海外でも活動の幅を広げています。

“日本の周産期医療は世界一優れています。周産期医療の指標を表す数値である妊産婦死亡率、周産期死亡率とも日本は世界一の低さを誇っています。それは高度周産期医療の発達ももちろんですが、母子健康手帳を含めた妊婦健診体制と分娩監視装置(CTG)の普及率がその基礎を支えています。この基本的な周産期医療を世界に広げることがメロディ・インターナショナルのミッションです。CTG普及率が低く専門医が不足している発展途上国や新興国では、この妊産婦死亡率、周産期死亡率が非常に高く、医療体制の強化が課題となっています。周産期遠隔医療プラットフォーム”Melody i”と遠隔医療対応のプチモバイルCTGがその一助となること願い、さらなる開発を進めています”

参考:海外活動|メロディ・インターナショナル株式会社

トヨタ自動車

トヨタ自動車では社員の自発的な取り組みの中で、足踏み式消毒スタンド「しょうどく大使」が生まれています。

“仲間や家族を守るために、何ができるだろうか——。2020年春、新型コロナショックが本格的に拡大すると、トヨタの社員たちは誰かから指示されたわけでもなく自発的に行動をはじめました。そうして生まれたのが、足踏み式消毒スタンド「しょうどく大使」です。同様の装置が各地の工場で自然発生し、誰が最初の発明者なのかは今でも分からないほど。その後、誰小さなお子様や車いすの方でも使いやすくどこにでも設置しやすい装置を目指して30を超える試作品がつくられ、改善が重ねられました。工場内で自発的に生まれた装置は「安くつくって普及させられれば世の中のためになる 」という、エコカーと同様の考えのもと、市販を開始。1日に800台以上を生産し、スーパーや病院をはじめとして多くの場所でご利用いただいています”

参考:SDGsへの取り組み|サステナビリティ|トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

島津製作所

社是である「科学技術で社会に貢献する」を胸に真摯に社会の課題と向き合い、事業を通じてその解決に直接的・間接的に取り組んできた島津製作所では、新生児マススクリーニング(赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけるための検査)の新しい検査方法「タンデムマス法」を開発し、新興国に広げる取り組みを進めています。

“新生児マススクリーニングでは、ガスリー法という検査方法が長く採用されてきました。これは採取した血液を染み込ませたろ紙を使う方法で、1960年代に開発され、検査費用も安いため世界的に普及しました。一方、私たちが開発した方法は、質量分析装置を2台直列につないだタンデム型質量分析装置を用いるもので、「タンデムマス法」と呼ばれています。1検体当たりの分析時間はわずか1~2分で、分析ピークがはっきりと記録紙上に現れることから、1台のタンデムマスで年間6万人を検査でき、しかもガスリー法では検査できなかった20種類以上の病気を一度に検査できます。加えて、ガスリー法に比べて精度も格段に向上し、偽陽性例の数も著しく減ります。患者さんのご家族の生活の質向上に貢献しています。現在は、この検査方法を日本などの先進国だけでなく、先天性の病気の診断を受ける新生児が全体の1割未満にとどまる新興国にも広げる取り組みを進めています”

参考:[SHIMADZU] 血液から病気の因子を測定し新生児における疾患の発症や重症化を予防|サステナビリティ|島津製作所

住友化学

住友化学では同社が持つの持つポリエチレンと防虫剤の技術を融合させる形で防虫剤処理蚊帳「オリセット®ネット」を開発しました。現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、約100カ国の国々に供給されています。

“ポリエチレンにピレスロイドという防虫剤を練りこみ、薬剤を徐々に表面に染み出させる技術「コントロール・リリース」。もともとは工場の虫除けの網戸として使われていた技術ですが、住友化学は、これをマラリアに苦しむ人々のために役立てられないかと考え、研究開発を積み重ねた結果、防虫剤処理蚊帳「オリセット®ネット」を開発しました。2001年には世界保健機関(WHO)から世界で初めて長期残効型蚊帳としての効果が認められ、使用が推奨されています。現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、約100カ国の国々に供給されています”

参考:住友化学のマラリアへの取り組み|社会貢献活動|住友化学株式会社

参考情報

本稿ではSDGs3「すべての人に健康と福祉を」についての事例をお届けしてまいりました。もっと多くの事例を知りたい方、SDGs17の目標単位で様々な事例を知りたい方は下記の記事をご覧いただければと思います。

具体的でわかりやすい!SDGs17の目標毎の企業のSDGsの取り組み例

様々な企業のSDGsの取り組みをSDGs17の目標毎に分類しました。具体的にSDGsの取り組みを進めていく上で、参考になる情報があれば何よりです。

詳しく見る

SDGs3「すべての人に健康と福祉を」について私たちにできること

募金・寄付をする

人々の健康は貧困問題と密接に関わっているため、募金や寄付を通じた支援によってSDGs3の目標達成に貢献することができます。

  • 国境なき医師団
    国境なき医師団は民間で非営利の医療・人道援助団体です。紛争や自然災害、貧困などにより危機に直面する人びとに、独立・中立・公平な立場で緊急医療援助を届けています。
  • WFP国連世界食糧計画(国連WFP)
    国連WFPは女性と子どもの栄養強化、小規模農家の生産性向上と損失削減、国やコミュニティによる気候に関する災害への備えと対応支援、学校給食支援による人的資本の強化に取り組んでいます。
  • ユニセフ(国連児童基金)
    ユニセフは世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関です。保健、栄養、水と衛生、教育、暴力や搾取からの保護、HIV/エイズ、緊急支援、アドボカシーなどの分野で支援活動をおこなっています。

自分や家族の健康に気を付ける

新型コロナウイルス感染症では感染者の増加に伴う医療資源のひっ迫が問題視されているように、限られた医療資源を有効活用する観点で私たち一人ひとりで健康でいることはとても重要です。

感染予防のためにマスク着用や手指衛生(手洗い、手指消毒)を心がけること。健康診断をきちんと受けること。食生活の改善や運動の習慣化に取り組むこと。そういった健康への配慮の積み重ねによって、SDGs3「すべての人に健康と福祉を」に貢献することが可能です。

パートナーシップの輪を広げる

SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」の観点で自分が起点・ハブとなり、自身が所属する会社や団体・地域コミュニティとパートナーシップ(協力関係)を築き、SDGsの取り組みを進める。

これも私たちにできることの一つです。

例えば、私たちプロジェクトデザインでは「SDGsについての理解・実践」を支援するツールとして様々なSDGsゲームをご提供しています。これらのゲームを活用することであなたの所属先やコミュニティでSDGsの取り組みを進めやすくなります。

・参考:SDGsゲーム

SDGsクイズ:「すべての人に健康と福祉を」編

【問1】 世界の妊産婦の死亡率の削減目標は?

“2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり●●人未満に削減する”

これはSDGs3のターゲット3.1の内容です。この「●●人未満」に当てはまる内容として正しいものは次の選択肢のどれでしょうか?

<選択肢>

  • 50人未満
  • 70人未満
  • 90人未満
  • 110人未満

正解は「70人未満」です。

厚生労働省の調べでは2019年の日本における妊産婦死亡数は29名。出産10万人当たり3.3人とあります。

【問2】 UHCとは?

“全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、●●●●●●●●●(UHC)を達成する”

これはSDGs3のターゲット3.8の内容です。この「●●●●●●●●●(UHC)」に当てはまる内容として正しいものは次の選択肢のどれでしょうか?

<選択肢>

  • ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
  • ユニバーサル・ヘルスケア・カバレッジ(UHC)
  • ユニバーサル・ヘルスケア・コミット(UHC)
  • ユニバーサル・ヘルステック・カバレッジ(UHC)

正解は「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」です。

“UHCとは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指しています。

持続可能な開発目標(SDGs)においてもゴール3(健康と福祉)の中でUHCの達成が掲げられておりますが、UHC達成のためには「保健医療サービスが身近に提供されていること」、「保健医療サービスの利用にあたって費用が障壁とならないこと」の2つが達成される必要があることから、2017年7月の国連総会では「必要不可欠の公共医療サービスの適用範囲」と「家計収支に占める健康関連支出が大きい人口の割合」をSDGsにおけるUHC指標とすることが採択されました。

UHCを達成するためには、物理的アクセス、経済的アクセス、社会慣習的アクセスの3つのアクセスの改善に加え、提供されるサービスの質が高まることが重要です”

参考:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)|国際協力・ODAについて – JICA

監修者プロフィール

長瀬 めぐみ

岐阜県高山市出身、富山県滑川市在住。実家が100年以上続くお菓子屋を営んでおり、幼少期より観光や地域産業が身近な環境で育つ。高校時代、同級生が家業を知らない現実にショックを覚え、地域創生に関心を持ち始める。短大卒業後、すぐにUターン。まちづくりのNPOで子どもの教育支援や大学のない中山間地域へ若者を誘致するインターンシップ、農業支援などの取り組みで4年間で延べ600人以上の学生と関わる。様々な活動の中で、地域が元気になるためには、地元の若者が育つ仕組みと地域の大人が楽しんで地域に参画する土壌づくりの必要性を感じ、公立高校で学校と地域をつなぐコーディネーターなども務めた。体験から気づき、意識・行動変革をもたらすゲームコンテンツに魅力を感じ、全国に広めたい!とプロジェクトデザインに参画。地元飛騨が大好き。

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SDGsの17の目標

SDGsは17の目標と169のターゲットで構成されます。SDGsは壮大すぎてどこから手を付ければ良いかが分かりづらい面がありますが、それぞれの目標に分けて見ていくことで、自分たちがどのようなSDGsの取り組みをすべきかのヒントが浮かび上がってきます。是非、以下のアイコンからSDGsの1~17の目標の解説記事をご覧ください。

※現在は、SDGs1~7、13・14を公開中です(順次公開してまいります)。