再生可能エネルギーとは何か?その意味と背景、企業や自治体の取り組み事例

再生可能エネルギーの知識を深めることが、CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスを減らすきっかけになることを願い、再生可能エネルギーの意味や背景、企業や自治体の取り組み事例をご紹介します。

Contents(目次)

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、永続的に利用できるエネルギーを意味します。

資源が有限な化石燃料(石炭・石油・天然ガス)を由来とする化石エネルギーとは違い、自然を由来とする再生可能エネルギーは資源が枯渇することがありません。また、発電・利用時にCO2を排出することもありません。

太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱、その他の自然界に存する熱、バイオマス(動植物由来の有機物)、海洋エネルギー等、再生可能エネルギーの種類は多岐に渡ります。

図. 再生可能エネルギーの定義
環境省の資料をもとに作成)

※FIT(固定価格買取制度)は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5つの再生可能エネルギーが対象となります。

再生可能エネルギーの背景

再生可能エネルギーとカーボンニュートラル

2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

カーボンニュートラルが国を挙げてのプロジェクトして位置付けられ、カーボンニュートラルを実現するための機運が高まる中、CO2排出量の削減に大きく貢献することができる再生可能エネルギーに注目が集まっています。

<ご案内>
カーボンニュートラルに関して興味の有る方は下記の記事をご覧ください(カーボンニュートラルの基礎知識と企業の取り組み事例・私たちにできることをご紹介します)。

再生可能エネルギーの現状

世界全体で普及が進む再生可能エネルギーは、2015年時点で最も容量の大きい電源となりました(今もなお、増加傾向にあります)。

国ごとの再生可能エネルギーの発電比率(2020年時点)は下記の通りです。

 再エネ
(水力含む)
再エネ
(水力除く)
主要再エネ
(水力除く)
EU38.6%27.2%風力
15.4%
ドイツ43.6%40.4%風力
22.8%
イギリス43.1%41.1%風力
24.3%
スペイン43.6%31.9%風力
21.7%
イタリア41.5% 24.8% 太陽光
8.9% 
フランス23.8%12.0%風力
7.7%
アメリカ19.7%12.8%風力
8.1%
カナダ67.9%7.9%風力
5.6%
中国27.7%11.0%風力
6.0%
日本19.8%12.0%太陽光
7.9%

表. 再生可能エネルギー発電比率の国際比較
資源エネルギー庁の資料をもとに作成)

起伏が激しく水力発電に使える河川が多いカナダ、風力発電に適した地形が多く存在する欧州など、再生可能エネルギーは自然由来だからこそ、その普及には地理的背景が少なからず影響しています。

日本における再エネの発電比率は19.8%(1,983億kWh)。主要な再エネは太陽光です。2030年度の温室効果ガス46%削減に向けて、36~38%(合計3,360~3,530億kWh)の再エネの発電比率を目指しています。

再生可能エネルギーの課題

再生可能エネルギーを普及させるには幾つかの課題があります。

一つ目の課題は、エネルギー密度(単位面積あたりの発電電力量)です。例えば、堺太陽光発電所と堺港発電所(火力発電所)との比較において、両者のエネルギー密度には約2,600倍もの差があります。

“堺港発電所の発電用設備は、堺太陽光発電所の約2分の1のエリアに設置。ところがその出力は、堺太陽光発電所の200倍、発電電力量は約1,300倍。単位面積あたりでは約2,600倍以上の発電電力量です”

参考:再生可能エネルギーの課題|再生可能エネルギーとは|再生可能エネルギーへの取組み|エネルギー|事業概要|関西電力

再生可能エネルギーによる発電で電力を賄うには広大な設備が必要になるため、メガソーラー(1,000kW以上の発電量を持つ太陽光発電システム)を設置する土地を確保するために大規模な森林伐採が行われ、自然破壊・土砂崩れ・景観の悪化等の別の問題を生むことが懸念されています。

“毎日新聞が伝えたのは各地で起きている太陽光発電の設置をめぐるトラブルだ。岡山県赤磐(あかいわ)市の山では、面積82ヘクタールにパネル32万枚が設置されたが、その後、山の斜面で土砂崩れが起き、地元の水田が土砂で埋まる被害が起きた。奈良県平群町では今年3月、住民約1,000人が「土砂災害の危険がある」として、太陽光発電の事業者を相手取り、事業の差し止めを求める集団訴訟を奈良地裁に起こした。森林の伐採で山は丸裸になり、土砂崩れが心配だという。事業者が当初の契約事業者と代わり、発電事業者の実態が分からないのも問題だとの地元住民の声も伝えている”

参考:毎日新聞が異例の「太陽光発電の公害」を告発! ただ莫大な国民負担には触れず!|COLUMN|原子力産業新聞

二つ目の課題は、需要に合わせた発電です。

再生可能エネルギーは太陽光・風力・水力などの自然の力を利用するため、発電量が天候や自然の状況に左右される特徴があります。電力は需要(電力使用量)と供給(発電量)のバランスを取ることが求められるため、発電量が安定的な火力発電や原子力発電などを組み合わせるエネルギーミックスが重要になります(そうすることで、発電量のバランスを取る他、発電コストや環境負荷のバランスを取ることができます)。

三つ目の課題は、発電コストです。

再生可能エネルギーの発電にかかるコストは比較的割高であると言われます(ただ、世界各国の再生可能エネルギーを推進する政策や技術革新によって太陽光や風力の発電コストは減少傾向にあります)。

<世界の再生可能エネルギー発電コストの推移(ドル/kWh)>

    • 太陽光 :0.38(2010年)→0.06(2020年)
    • 太陽熱 :0.34(2010年)→0.11(2020年)
    • 洋上風力:0.16(2010年)→0.06(2020年)
    • 陸上風力:0.09(2010年)→0.04(2020年)

“太陽光や風力の発電コストは今後も低下すると推察されており、コストに関するデータが更新されるたびにそれまでの予想を上回るコスト削減が進んでいます。太陽熱や洋上風力についても、2021年以降、発電コストの競争力は高まるとみられています。この他の主要な再生可能エネルギーである水力、バイオマス、地熱は技術的にも成熟しており、資源が豊富な所では太陽光や風力よりも安価な電源ですが、平均発電コストは2010年からあまり変化せずに推移しています。水力発電は遠隔地での開発のように高度な技術が求められる事業が増えており、コストを押し上げる要因となっています。また、ベースロード電源ともなる地熱発電は、高い初期投資コストや開発リスクが投資の障壁となっています”

参考:令和3年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2022)PDF版|資源エネルギー庁

再生可能エネルギーに関する企業の取り組み事例

石狩市(北海道)

石狩市では、北海道を代表する産業拠点・石狩湾新港地域における脱炭素化に注力し、地域の再エネを活用できる、再エネの地産地消を実現する複合産業エリア「REゾーン」の形成に取り組んでいます。

“GX実現に向けて約100ヘクタールのREゾーン(再エネ100%エリア)を設定し、このエリアに再エネを供給する仕組みを構築している。具体的には、バイオマス発電や風力発電、太陽光発電などを地域に供給する仕組みで、安定的に発電ができるバイオマス発電をベースロード型(再エネ安定電源)、風力発電や太陽光発電を自然変動型電源と位置づけて供給している”

参考:脱炭素先行地域・石狩市 「再エネの地産地消」で企業誘致|2023年6月号|事業構想オンライン

オリックス不動産

オリックス不動産では、箕面ロジスティクスセンターや松伏ロジスティクスセンターなどの「環境配慮型物流施設」を手掛けています。

“お客さまとお話していて、『環境に配慮しない企業は淘汰(とうた)されていく』という危機感が強まっていることを感じます。箕面ロジスティクスセンターに対して『入居するだけでCO2排出量の削減を推進できることはありがたい』というお声をいただいたことがありました。自社倉庫の屋根に、独自で太陽光パネルを全面に敷くには相当なコストがかかります。箕面ロジスティクスセンターは、そうした負担なく100%再生可能エネルギー由来の電力をご利用いただけるので、その点を評価し、関心を持ってくださるお客さまが多いですね”

参考:脱炭素を実現する物流施設~オリックス不動産が開発、テナント企業へ100%再エネ由来電力を供給する取り組みとは~ – MOVE ON!|オリックス株式会社

福岡市(福岡県)

福岡市では、次世代の再生可能エネルギーの実用化に向けて、日本初の「浸透圧発電」に挑戦しています。浸透圧発電では、海に放流している2つの排水(濃縮海水と下水処理水)を未利用資源として活用し、新たなエネルギーを生み出します。

“脱炭素社会の実現に向けた取組みを目的として、海の中道奈多海水淡水化センター、「まみずピア」で、自然現象である「浸透現象」を利用した発電を、実用規模プラント設置して行います”

参考:福岡地区水道企業団 日本初の「浸透圧発電」の実用化について

山﨑

宮崎県宮崎市に本社を構える山崎では、宮崎市との間で「ゼロカーボンシティみやざき」の実現に向けた相互協力に関する連携協定を締結し、宮崎での太陽光発電普及に向けた取り組みを推進しています。

“両社は今般の取り組みの第1弾として、9月18日に開業した山﨑都城営業所の屋根に、ソーラーフロンティアが設計した太陽光発電システム(設置容量213.61kW)を設置。そこで発電した電気のうち約45%を自家消費するという。また残りの電気については、自己託送によりそれぞれ約40km離れた山﨑本社および山﨑宮崎営業所(いずれも宮崎市)へと送電されるとする。なおこの送電は2024年より開始する予定で、九州電力の一般送配電線を利用して行われるとのこと。この取り組みにより、山﨑は年間約90tのCO2排出量を削減するとしている。

また山﨑の100%再エネ化実現に向け、都城営業所・本社・宮崎営業所において自家消費および自己託送で賄いきれない電力については、出光グリーンパワーが供給するプレミアムゼロプランに切り替えて利用するとのことで、これにより消費電力はすべて再エネ由来になるという”

参考:山﨑が100%再エネ化に向けソーラーフロンティアと協業 – 九州初の事例に|TECH+(テックプラス)

秋田県

秋田県では、県主導のもと、地元企業の出資を受ける形で、海沿いの県有保安林や秋田港湾内に陸上・洋上のウインドファーム(集合型風力発電所)を稼働させています。

そして、風車群の立っている県有保安林より内陸側にはさらに広大な県有地があり、その一角にある秋田県立大学の秋田キャンパスの南側に「再エネ工業団地」を整備する計画を着々と進めています。

“再エネ工業団地には、秋田県に豊富な風力発電のほか、太陽光発電や水力、バイオマス発電による電力を供給する。地元産の再エネ電力で工場や研究所などを運営できることをアピールポイントに企業を誘致する。秋田県の重点産業である輸送機器(自動車・航空機)や電子部品、医療機器、情報産業、新エネルギー産業のほか、データセンターや研究開発型企業などの進出を期待している”

参考:秋田県が「フィジカル再エネ」で企業誘致、風力と太陽光を集積|新・公民連携最前線|PPPまちづくり

【番外編】カーボンニュートラルに貢献する企業の取り組み事例

SPACECOOL

大阪ガスの放射冷却素材に関する研究成果をもとに同社からスピンアウトする形で設立されたSPACECOOL社では、独自の光学制御技術を応用した放射冷却素材「SPACECOOL」を提供しています。

ゼロエネルギーで消費電力を減らすことができる素材は、カーボンニュートラルに大きく貢献する可能性を秘めています。

“実証実験において工場へのSPACECOOL導入効果を検証したところ、同素材の施工箇所と非施工箇所で天井内部の温度に約15℃の違いが見られたという。また、分電盤に施工した場合は、施工前後で空調設備の消費電力が晴天日で約21%、雨天時や曇天日を含めても約20%削減できると確認した。「電気代の高騰が続く中、ゼロエネルギーで消費電力を2割程度減らせるのは大きな意味を持つだろう」(SPACECOOLの担当者)”

参考:熱を“宇宙に”逃がす、貼ると工場内温度が最大15℃低下するフィルム型新素材|材料技術 – MONOist

yuni

私たちの身近にある寝具は、年間1億枚もの量が廃棄(焼却処分)されています。そして、アパレルのリサイクル率37%に対して、寝具のリサイクル率はたった2%に過ぎません。

yuniでは、古くなった寝具を再生素材化するサービス「susteb(サステブ)」を展開することで、この寝具の問題解決にアプローチ。寝具の焼却処分によって生まれるCO2を減らすことによって、カーボンニュートラルに大きく貢献しています。

同社の優れた取り組みに興味のある方は、ぜひ参考リンクの動画をご覧ください。

参考:【優勝プレゼン】年間1億枚廃棄される寝具を、永遠に循環する資源に! 粗大ごみと再生素材の課題を解決するyuni「susteb(サステブ)」|YouTube

監修者プロフィール

執筆者プロフィール

池田 信人

自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営を経て2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部門のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。

監修者プロフィール​

株式会社プロジェクトデザイン 竹田

竹田 法信(たけだ のりのぶ)

富山県立富山中部高等学校卒業、筑波大学第三学群社会工学類卒業。大学卒業後は自動車メーカー・株式会社SUBARUに就職し、販売促進や営業を経験。その後、海外留学などを経て、地元・富山県にUターンを決意。富山市役所の職員として、福祉、法務、内閣府派遣、フィリピン駐在、SDGs推進担当を歴任。SDGsの推進にあたり、カードゲーム「2030SDGs」のファシリテーションを通して、体感型の研修コンテンツの可能性に魅せられ、プロジェクトデザインへの転職を決意。ファシリテーターの養成、ノウハウの高度化などを通して社会課題の解決を目指す。富山県滑川市在住。

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