SBTとは何か?企業が取り組む意義とSBT認定の事例をご紹介します(3分でわかる!カーボンニュートラルクイズ)

突然ですが問題です。SBTの正式名称として、正しいものは次の選択肢のどれでしょうか?

<選択肢>

  1. Science Based Targets
  2. Science Based Transforming
  3. Sustainable Based Targets

<正解>
正解は1番です。

SBTの正式名称は「Science Based Targets」です。パリ協定が求める⽔準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減⽬標を意味します。

<パリ協定とは>

“2015年11月30日から12月13日までフランス・パリにおいて開催された 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、新たな法的枠組みとなる「パリ協定」を含むCOP決定が採択されました。パリ協定は、「京都議定書」の後継となるもので、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです”

“世界共通の長期目標として、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前 に比べて2Cより十分低く保つとともに、1.5Cに抑える努力を追求すること」 が掲げられている”

参考:パリ協定|JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

SBTとは

SBTが削減対象とする温室効果ガス

SBT(Science Based Targets)ではサプライチェーンの上流から下流までの温室効果ガスの排出量(サプライチェーン排出量)を削減することを目指します。自社のみならず、その前後の工程(上流と下流)を含めるというのがポイントです。

そして、サプライチェーン排出量はScope1~3の排出量の総和として算出されます。

  • Scope1
    事業者⾃らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、⼯業プロセス)
     
  • Scope2 :
    他社から供給された電気、熱・蒸気の使⽤に伴う間接排出
     
  • Scope3
    Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

参考:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ

サプライチェーン排出量(SBTが削減対象とする温室効果ガスの排出量​)

SBTの意義(SBTに取り組むメリット)

SBTにはどのような意義があるのでしょうか? それは自社が「パリ協定」に整合する持続可能な企業であることを投資家や顧客などのステークホルダーにアピールできる点にあります。

・対投資家へのアピール
年金・保険系の機関投資家は、顧客から受け取った資金を数十年間の運用を行った後に償還する必要があり、中⻑期的なリターンを得るために企業の持続可能性を評価します。だからこそ、企業はSBTに取り組むことで自社が「パリ協定」に整合する持続可能な企業であることをアピールし、ESG投資の呼び込みに役⽴てることができます。

・対顧客へのアピール
サステナブルな意識の強い顧客は、その企業の製品そのものだけでなく、それらがどのように作られているのかにも大きな関心を示しています。どんなに素晴らしい製品であっても、原料の調達・製造プロセスにおいて環境破壊への関与があるものは支持されません。そんな中、企業はSBTの取り組みにコミットすることで、自社だけでなくサプライチェーン全体で環境対策に取り組んでいることをアピールし、顧客の支持を獲得しやすくなります。

SBTに関する企業の取り組み事例

アシックス

アシックスは、2018年度に世界のスポーツメーカーで初めて「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」から承認を取得。その後、2021年2月22日付でパリ協定の「1.5℃水準」へ目標を引き上げました。

<事業所からのCO2排出量(単位: トン)>

    • 2020:23,134(SCOPE1:2,873|SCOPE2:20,262)
    • 2019:25,988(SCOPE1:3,848|SCOPE2:22,140)
    • 2018:24,905(SCOPE1:4,002|SCOPE2:20,903)
    • 2017:25,444(SCOPE1:4,461|SCOPE2:20,983)
    • 2016:28,076(SCOPE1:4,835|SCOPE2:23,241)
    • 2015:30,858(SCOPE1:5,664|SCOPE2:25,194)

参考:エネルギー効率とCO2排出量|株式会社アシックス コーポレートサイト

オムロン

オムロンは、2022年5月、長期ビジョン「Shaping the Future 2030(以下:SF2030)」で設定した温室効果ガス排出量削減目標が、パリ協定における「1.5℃目標」を達成するための科学的根拠に基づいた目標と認められ、「Science Based Targets イニシアチブ」の認定を取得しました。

“オムロンは、2022年4月からスタートした長期ビジョン「SF2030」において、長期ビジョンとしては初めてサステナビリティ重要課題を特定しました。SF2030ではオムロングループの目指す姿として、5つの重要課題に取り組んでいます。重要課題のひとつ「脱炭素・環境負荷低減の実現」では、環境方針のもと、気候変動を「機会」と「リスク」の二側面で捉えた企業としての社会的責任の実践と更なる競争優位性の構築に取り組んでいます。

今回、同イニシアチブから認定を受けたGHG排出量削減目標は、オムロン環境方針に定めた「脱炭素に向けた製品・サービスの提供」、「エネルギー効率の改善」、「再生可能エネルギーの使用拡大」などにより、バリューチェーンにおけるGHG排出量削減を、「SF2030」において実行していくためのものです”

参考:「Science Based Targetsイニシアチブ」の認定を取得| オムロン

花王

花王は、「脱炭素」目標の達成に向けて設定した中長期目標について、国際的なイニシアチブであるSBTイニシアチブ(SBTi)から「1.5℃目標」の認証を取得しており、事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことをめざす国際的なイニシアチブ「RE100」にも加盟しています。

“脱炭素社会の実現に向け、CO2の「リデュースイノベーション」と「リサイクルイノベーション」に取り組むことで、事業活動に伴い排出されるCO2を2040年までにゼロ、2050年までにネガティブをめざしています。花王は2019年4月にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)を策定し、19の重点取り組みテーマを設定、本取り組みは「脱炭素」に貢献する活動です”

参考:花王|2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現に向けた活動を加速

島津製作所

島津製作所は、島津グループの2030年度CO2排出量の削減目標について、SBTイニシアチブからパリ協定における「産業革命前と比較して気温上昇を1.5℃未満に抑える水準と整合した目標」(SBT:Science Based Targets)として認定されました。

“当社グループでは、継続的に省エネ活動を実施してきました。島根島津などの国内拠点やマレーシアやフィリピンなどの海外拠点に太陽光発電パネルを設置し、京都の本社・三条工場をはじめとした国内の主要拠点と欧米のグループ会社では、再生可能エネルギー100%由来の電力利用へ切り替えています。また、環境性能が優れた製品を「エコプロダクツPlus」と認定し、お客様先でのCO2排出量の削減に寄与してまいります”

<エネルギー起因CO2排出量(島津グループ)>

    • 2017:49,398トン
    • 2019:38,548トン
    • 2020:34,468トン
    • 2021:18,321トン

参考:[SHIMADZU] 島津グループのCO2排出量削減目標がSBT「1.5℃水準」の認定を取得 

DMG森精機

DMG森精機及びグループ会社のドイツDMG MORI AKTIENGESELLSCHAFTは、2030年に向けた温室効果ガス削減目標について、国際的な環境団体「SBTイニシアチブ」により認定を取得しました。

“当社は、持続可能な社会を目指し、脱炭素社会や人と自然が共生できる社会、資源循環型の社会に向けた 取り組みを行っています。特にカーボンニュートラルに向けた取り組みをグループ一丸となって加速させており、2021年3月には、2021年にグローバルで生産する全商品の部品調達から商品出荷までの工程において カーボンニュートラル達成を宣言しました。今回認定を取得した新たな目標の達成に向けて、引き続き、自社でのCO2削減の活動に取り組むとともに、環境に配慮した商品の提供を通じて、お客様におけるCO2排出量の削減を実現します。当社は、工作機械事業そのものが環境保護に貢献するものと考えており、今後も持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組んでまいります”

参考:SBT(Science Based Targets)認定を取得|ニュース/トピックス|DMG MORI

野村総合研究所

野村総合研究所の掲げるNRIグループの温室効果ガス排出削減目標は、国際的な環境イニシアチブである「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」より、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるための科学的根拠に基づいた削減目標としての認定を受けました。

“NRIグループは2018年度に温室効果ガス削減目標を改定し、SBTイニシアチブから2℃目標の認定を取得しています。その後、IPCCの1.5℃特別報告書において、産業革命前から気温が1.5℃以上上がった場合、洪水や干ばつなどによる被害が甚大であることが示され、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える必要があると国際的に認識されるようになりました。NRIグループは、このような世の中の流れに呼応する形で2020年5月にBusiness Ambition for 1.5℃キャンペーンに賛同し、この度1.5℃目標の認定を取得しました。今回、1.5℃目標の認定取得にあたり、2030年度における温室効果ガス削減目標を改定し、2013年度比で温室効果ガス排出量を72%削減する目標を新たに掲げました。引き続き、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出削減を進めるとともに、より野心的に、今回認定を取得した1.5℃目標達成の前倒しも検討していきます”

参考:NRIグループの温室効果ガス排出削減目標が「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の「1.5℃目標」の認定を取得|お知らせ|野村総合研究所(NRI)

ブラザー工業

ブラザー工業は、2021年10月に改定した「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」のCO2排出削減「2030年度中期目標」において、国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブによる「1.5°C目標」の認定を取得しました。

“ブラザーグループは、地球規模の環境課題解決に貢献していくため、2018年3月に「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」を策定するとともに、そのマイルストーンとして「2030 年度中期目標」を設定しました。同年には、CO2排出削減の中期目標がパリ協定の「2°C目標」達成のための科学的根拠に基づく削減目標としてSBTイニシアチブから認定されました。そして、持続的発展が可能な社会の構築に向けた取り組みをさらに強化していくため、2021年10月にブラザーグループ 環境ビジョン2050を見直し、CO2排出削減の2030 年度中期目標と2050年度ビジョンを改定しました。2030 年度中期目標は、「スコープ 1,2 において 2015 年度比で30%削減」を「65%削減」に引き上げており、このたびこの目標が「1.5°C目標」として認定されました”

参考:2022-04-11 「1.5°C目標」の認定を取得|ブラザー

三井不動産

三井不動産は、グループ環境方針に基づき、エネルギー消費や温室効果ガスの排出が少ない建物や街づくりを推進するとともに、共同事業者やテナント企業、出店者さま、お客さまとともに省エネルギー活動などの地球温暖化対策を進め、脱炭素社会の形成を目指しています。

同社の掲げる気候変動に関する短中長期の目標はSBT認定済みです。

“2021年11月にグループ行動計画を策定しました。2030年度までに40%削減(2019年度比)、2050年度までにネットゼロという当社グループの温室効果ガス排出量の削減目標達成に向け、サプライチェーン一体となって行動を推進しています。

行動計画① 新築・既存物件における環境性能向上
行動計画② 物件共用部・自社利用部の電力グリーン化
行動計画③ 入居企業・購入者の皆様へのグリーン化メニューの提供
行動計画④ 再生可能エネルギーの安定的な確保
行動計画⑤ 建築時のCO2排出量削減に向けた取り組み

※その他の重要な取り組み 森林活用、オープンイノベーション、外部認証の取得、街づくりにおける取り組み、社内体制の整備等”

参考:気候変動|環境|ESG/サステナビリティ|三井不動産

3分でわかる!カーボンニュートラルクイズとは

カーボンニュートラルに興味のある方々が「このカーボンニュートラルに関連する用語の意味って何だっけ?」と思った際に、短時間で分かりやすく用語の意味を知ることのできるコンテンツ。

それが「3分でわかる!カーボンニュートラルクイズ」です。

用語の意味を理解するに留まらず、その用語を “活きた知識” へと昇華するためのクイズコンテンツをご提供します。

※カーボンニュートラルについて詳しい情報を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

この記事の著者について​​​

執筆者プロフィール​

池田 信人

自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営を経て2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部門のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。

監修者プロフィール​

株式会社プロジェクトデザイン 竹田

竹田 法信

富山県立富山中部高等学校卒業、筑波大学第三学群社会工学類卒業。大学卒業後は自動車メーカー、株式会社SUBARUに就職し、販売促進や営業を経験。その後、地元・富山県にUターン。富山市役所の職員として、環境モデル都市、環境未来都市、SDGs未来都市を担当。SDGsの推進にあたり、カードゲーム「2030SDGs」のファシリテーションを通して、体感型の研修コンテンツの可能性に魅せられ、プロジェクトデザインへ。ファシリテーターの養成、ノウハウの高度化などを通して社会課題の解決を目指す。富山県滑川市在住、地元・富山県滑川市総合計画審議会委員。

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