前進?それとも後退?COP30の結果が伝えるもの

2025年11月にブラジルのベレンで開催されたCOP30、1995年の1回目の開催から節目となる30回目を迎えたCOP30の結果を皆さんはどのように評価されていますか?

本稿では、COP30での主な成果と課題について解説します。そして、COP30の結果から、私たちは何を学び、どう行動すべきかを考えたいと思います。

Contents(目次)

COPとはどんな会議?

COP(コップ)とは、「国連気候変動枠組条約締約国会議」(United Nations Framework Convention on Climate Change Conference of the Parties)の略称で、地球温暖化対策について話し合う国際的な最高意思決定の会議です。

地球の気候変動問題に取り組むために、条約を結んだ国々(締約国)が毎年集まり、対策の進捗状況を確認し、今後の行動を決める場になります。パリ協定で掲げられた「世界の気温上昇を産業革命前から1.5℃に抑える[1]」という目標を達成するために、国際社会が団結して取り組むことの重要性を話し合います。

毎年行われる会議では、以下のような幅広いテーマが議論されます。

  • 気候変動の現状
  • 対策の進捗状況
  • 温室効果ガス排出削減(緩和策)
  • 途上国への支援(気候資金・技術移転・能力構築)
  • 気候変動の影響への適応[2]
  • 公正な移行[3]
  • 森林や自然[4]

COP30の位置付けと期待

COP30:アマゾンの玄関口、ベレンでの開催
開催概要

*期間:2025年11月10日~22日(1日延長)
*場 所:ブラジル連邦共和国パラー州ベレン
*議長国ブラジルのスローガン:「 Mutirao(ムティラン)」
– 先住民の言葉で「助け合い」を意味し 、 地球規模課題解決のための協働を呼びかけ。

主要な背景

*パリ協定採択から10周年。
*2025年1月のトランプ米大統領就任後、初のCOP。米国はパリ協定離脱を表明し、政府代表団を派遣せず。
*2035年目標(NDC)の提出が多くの国で遅れ、1.5°C目標達成との間に依然として大きなギャップが存在。

COPで議論される内容は常に重要ですが、その時々によって主要なテーマや期待される成果は変化してきました。

COP30という名前からわかるように、第1回の会議であるCOP1(ドイツ・ベルリン)が開催されてから30年目の会議になります。COP30の主なテーマは、各国が2035年の温室効果ガス削減目標をどこまで高められるか、化石燃料から脱却するロードマップに合意できるか、途上国への資金的支援を具体化できるかなどです。

また、開催国のブラジルはアマゾン川の河口に位置し、熱帯林との関連ではシンボリックな場所としてのベレンを開催地に選んだように、森林保全・森林破壊防止の有効な仕組みを構築することも、特に豊富な森林資源を持つ国々にとって重要なテーマとされました。

COP30開催前に期待されたこと
NDC(国別削減目標)の提出と目標引き上げ

2025年2月の提出期限を過ぎても未提出国が多数/科学的要請の1.5℃目標に向けたNDC目標の引き上げ

化石燃料からの脱却に向けたロードマップの合意

「化石燃料からの段階的廃止(フェーズアウト)」という文言が最終合意に盛り込まれるか否か

適応資金の
具体化

「抽象的だった「グローバル適応目標(GGA)」にの達成度を測る指標の決定や適応資金など途上国支援の実行可能な枠組みづくり

今回の会議では議長国ブラジルが積極的な役割を果たしたと評価される一方で、第二次トランプ政権がパリ協定から離脱を表明し、COP30に政府代表団も派遣しなかったことが、気候変動の交渉を停滞させたとの声も聞こえてきます。

COP 30の成果について、政府や研究機関等の発表[5][6][7]をもとにまとめてみたいと思います。

COP30の主な成果

まずは、主な成果です。

気候(適応)資金の3倍化への努力の呼びかけ

2035年までに途上国向けの適応資金を少なくとも3倍に増やす努力を呼びかけることで合意されました。

これは、COP26(2021年)で設定された適応資金目標(約400億ドル)の約3倍にあたる1,200億ドルの新目標を実質的に設定したものです。気候変動の影響を最も受けている途上国や、コミュニティのレジリエンス(強靭性)強化を加速させるための重要な一歩と位置づけられています[8]。

ベレン・ポリティカル・パッケージの採択

COP30の最終成果は「ベレン・ポリティカル・パッケージ」と総称され、緩和策や資金に関する包括的な内容を含む「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。

この決定は、ポルトガル語で「共同作業」を意味する「ムチラオ」の精神に基づき、パリ協定の10周年、交渉から実施への移行、実施・連帯・国際協力の加速の三点を柱としています。また、NDC(国が決定する貢献)をいまだに提出していない締約国に対し、可能な限り早期に提出するよう促す文言が盛り込まれました。

持続可能燃料の利用促進(4倍宣言)

持続可能燃料の利用を促進する「ベレン持続可能燃料4倍宣言」がブラジルと日本を含む23カ国によって共同提案されました。

この宣言では、2035年までに水素、バイオ燃料、合成燃料などの持続可能な燃料の生産と利用を世界全体で4倍にする目標が掲げられています。この目標は特に脱炭素化が難しいとされる航空、海運、鉄鋼、セメントといった産業での持続可能燃料の需要を拡大し、排出量削減を促進することを見込んでいます。

また、森林保全については、国際熱帯林保護基金(TFFF:Tropical Forest Forever Facility)(※)が主要な成果の一つとして取り上げられ、「立ち上げ(launch)」、または、その潜在的なブレークスルー(突破口)となる可能性が強調されました。

※TFFFはCOP30に先立って開催されたリーダーズサミット(首脳級会合)初日の11月6日に設立が発表されました。この基金の目的は、アマゾンや東南アジア、コンゴ盆地など世界の主要熱帯林を対象に、森林破壊や火災を防ぐことです。TFFFでは、国際的な資金メカニズムとして先進国や民間セクターから資金を集め、債券などへの投資収益を森林保護に還元する仕組みが導入される予定です[9]。

COP30で残された課題と停滞

一方で当初の期待通りには進まず、COP30で残された課題について見ていきたいと思います。

最も大きく取り上げられているのが、化石燃料の「段階的廃止(Phase-out)」に向けたロードマップの合意がなされなかったことです。

化石燃料からの脱却ロードマップに関する合意の失敗

COP30の最終合意文書(グローバル・ムチラオ決定)には、温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ)目標達成に向けた石炭、石油、ガスなどの化石燃料からの段階的な廃止(フェーズアウト)や、脱却に向けた具体的なロードマップは盛り込まれず、合意に至ることができませんでした。

これは、化石燃料依存度の高い少数の産油国による集中的なロビー活動によって取引が弱体化された結果であると言われており、段階的な廃止を求めた80カ国以上の期待に応えられないものとなりました。この結果、地球温暖化の最大の原因への対応策が具体的な国際ルールとして確立されないままとなってしまっています。

NDC提出と目標の引き上げに関しても十分な成果が見られませんでした。

各国のNDC(削減目標)の積み上げ不足は解消されず

パリ協定の締約国は2035年までの温室効果ガス(GHG)削減目標を盛り込んだNDCを提出する必要がありますが、COP30閉幕時点で提出を行っていない締約国が多数残りました。

また、これまでに提出されたNDCの多くが、気温上昇を1.5°C未満に抑えるというパリ協定の目標と整合していないと評価されており、国際社会全体としての排出削減への野心と目標が不足していると言われています。

この現状を鑑み、「グローバル・ムチラオ決定」では未提出国に対し可能な限り早期の提出を促す文言が盛り込まれています。

COP 30の成果:資金と森林で前進、化石燃料では後退
主な成果と進展
  1. 気候資金
    途上国の適応資金を2035年までに少なくとも3倍にする「努力」を呼びかけ

  2. ベレン・ポリティカル・パッケージの採択
    「ムチラオ」の精神に基づき、交渉から実施への移行、実施・連帯・国際協力の加速の三点を柱に

  3. 持続可能燃料
    日本、ブラジル、インド等23カ国が「ベレン持続可能燃料4倍宣言」に参加
主な課題と停滞
  1. 化石燃料
    「化石燃料の段階的廃止」に関するロードマップ策定は合意に至らず

  2. 1.5℃目標とのギャップ
    各国のNDC(削減目標)の積み上げ不足は解消されず、パリ協定の1.5°C目標との乖離は解消されず

COP30の結果から見えてくるもの

前述したように、成果もあったCOP30ですが、主要課題が解決できなかったことにより、国際的な気候変動対策の停滞や後退が改めて懸念される状況になっています。

米国がパリ協定からの離脱を表明し、COP30に代表団を送らなかったことについては、リーダーシップの空白や産油国の影響拡大につながったとの分析もあります。同時に世界最大の経済大国であるアメリカが資金拠出にコミットしないことで、他国の資金協力への積極性を削ぎ、対策推進へのネガティブな雰囲気を世界に振りまいたと考えられます。

NDCの提出遅延と目標の野心不足が継続していることでパリ協定が目指す1.5℃目標とのギャップが埋まらない現状が固定化されつつあります。

COP30では、世界の気温上昇が一時的に1.5℃を超える「オーバーシュート」を公に前提とし、その後「小幅」かつ「短期間」で1.5℃以下に戻るべきだという認識が再確認されましたが、この「戻す」ことの実現可能性については強い懸念があります。

気温を引き下げるためには、大規模な「ネガティブエミッション」(負の排出)状態を長期間実現する必要があり、これは、今のエネルギー産業と同等の規模のCO2除去産業が経済的に成立する構造を構築するという非常に困難な社会的課題を伴うためです[10]。

気候変動の影響の深刻化と取り組みの停滞の中で何をすべきか

国際的な気候変動対策が停滞し、1.5℃目標との乖離が広がる現状は、日本にとっても国際的な協力や国内外での脱炭素事業の推進の面で逆風の状況にあると感じられるかもしれません。

一方で、国際交渉の進展にとらわれずに日本国内の対策(2035年NDCの大幅強化、GX戦略、気候被害への適応策等)を積極的に進めていくことは、国内において気候変動の影響を低減し、経済社会を守るためにも重要です。

企業にとっても、脱炭素に取り組まないことが経営上のリスクである状況に変化はありません。単なる法令遵守に留まらず、サプライチェーンにおける排出削減(スコープ3も含む)の推進や、イノベーションを通じて国際競争力を高める機会でもあります。

私たち一人ひとりの市民も、例えば消費者として商品の購入やサービスの利用において環境負荷の低い選択を意識的に行う、脱炭素に積極的な企業を選ぶといった行動や、選挙を通じて(有権者)として気候変動対策を求める声を上げていくことも大切です。

国際的な停滞が続く今こそ、日本は国内の挑戦を最大限に引き出し、脱炭素と経済成長を両立させる成功モデルを世界に示すべきと言えるのではないでしょうか。

[1] 「パリ協定 – JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター」

[2] 気候変動の悪影響に対する適応策に関する議論や、グローバル適応目標(GGA)の達成に向けた具体的な指標や枠組みの策定に関する議論など

[3] 脱炭素社会への移行において、雇用や経済が影響を受ける労働者やコミュニティに配慮し、公正に移行を進めるための議論。

[4] 森林保全、森林破壊の阻止、生物多様性との連携強化など、自然を利用した気候変動対策(NbS:自然ベースの解決策)に関する議論

[5] 環境省「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)結果概要」

[6] JETRO「COP30の最終合意文書、脱化石燃料には至らずも資金調達と持続可能燃料の利用促進で前進」

[7] 外務省「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(結果)」

[8] ただし当初目指された「2030年まで」という年限は5年後ろ倒しになっており、また基準年も不明という点で不透明さが残る

[9] TFFFについて詳しくは、松下和夫「国際熱帯林保護基金(TFFF)の可能性と課題」

[10] 「東大・江守正多教授「『0.1℃』の気温上昇が数千万人の生活を破壊する」

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この記事の著者について

執筆者プロフィール

南原 順(なばら じゅん)

島根県浜田市生まれ。京都大学大学院地球環境学舎修了(修士・環境政策専攻)。2005年より南信州を中心に、市民が出資・参加する自然エネルギー事業の立ち上げ及び運営に携わる。その後、ドイツを拠点に欧州4カ国での太陽光発電プロジェクトの開発・運営を経験。帰国後は日本企業にて国内のメガソーラーの事業企画、開発を行う。2016年にコミュニティエナジー株式会社を設立し、島根県浜田市を拠点に地域主導の自然エネルギー導入の支援を行う。セミナー等での講演や企業・自治体向け職員研修・ワークショップの実績多数。

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