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サステナビリティをめぐる、価値観の変遷。そして、調査から読み解く「私たち一人ひとりの変化」
- 最終更新日:2025-12-22
環境問題や気候変動に対する、私たちの考え方や価値観はどのように変化しているのでしょうか?
そこで本稿では、サステナビリティをめぐる価値観の変遷をわかりやすく解説します。また、政府の世論調査や民間企業の調査結果に触れながら、環境問題や気候変動に対して、今どのような価値観や考え方を持ち、どんな意識や行動の変化が生まれているのかをご紹介します。
時代とともに変化する、環境と経済に対しての考え方や価値観
かつて、環境問題への取り組みや対処は、企業活動や経済にとっては制約やコストである考え方が主流であった時期が日本においてもありました。企業などの経済主体にとっては、利益を生み出すことが重要であり、それを「環境」や「社会」に還元すれば良いという考え方です(図1)。
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図1)サステナビリティをめぐる、価値観の変遷 ①
そして次第に「環境」と「経済」と「社会」それぞれが重なり合う領域で企業活動を行うことが重要だと認識されるようになります(図2)。この時点では、環境も経済も社会もすべての価値が同様に重要である(並列的である)と捉えられていました。
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図2)サステナビリティをめぐる、価値観の変遷 ②
しかしながら、気候変動による災害の激甚化など地球環境が損なわれることにより、経済・社会への甚大な影響があることが顕在化してきたことで、今では環境こそが人間の社会や経済を支える最も基礎的な価値であるという考え方が共有されるようになっています(図3・4)。
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図3)サステナビリティをめぐる、価値観の変遷 ③
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図4)サステナビリティをめぐる、価値観の変遷 ④
環境価値が全ての土台。その上に経済価値、社会価値が成立する
いまや「環境と経済の両立」をさらに越えて「環境価値がすべての土台で、その上に経済価値、社会価値が成立する」という考え方を持つことがより一層重要だと言われています。
近年、気候変動による温暖化など気候の変化を受けて、台風、豪雨などの災害の激甚化や熱中症なとの健康影響、農作物や海産物等の生育環境の変化、食糧生産への影響など、環境が損なわれることによって社会生活が脅かされていることを感じる機会が増えています。
自然環境や生物多様性の健全性があってはじめて、人間の社会生活や経済活動が成立するという考え方は、今後より受け入れられていく、重視されていくのではないでしょうか。
ちなみに、私たちプロジェクトデザインではカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を提供することを通じて、ゲーム参加者に「環境と経済の両立」という社会の要請をお伝えするだけではなく、ゲーム内で発生するシナリオや気候イベントなどの将来の事象を疑似体験することで、環境価値が全ての人間社会の土台となっている考え方もお伝えしています。
私たち一人ひとりの「価値観や考え方」の変化
ここからは、幾つかの調査をご紹介します。まずは、政府が行なっている環境教育に関する世論調査[1]と、気候変動に関する世論調査[2]です。
内閣府環境教育に関する世論調査(令和7年9月調査)
本調査の中に「環境と経済の両立」が人々にどう捉えられているのかに関連する調査結果があります。
それによれば、環境保全と経済の関係について回答者の約7割が「環境と経済の両立」は可能であると回答していることがわかります(下記図の回答番号1(青)、2(赤)の合計)。
前述の通り、環境問題に取り組むことは経済にとっては制約やコストであるという考え方が主流であった時代もありましたが、環境課題に取り組むことは経済の成長につながる考え方が日本においても主流になってきていることを示す調査結果のように思います。
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図)環境保全についての意識(出典:内閣府環境教育に関する世論調査(令和7年9月調査)より作成)
内閣府「気候変動に関する世論調査」(令和7年9月調査)
本調査でも、気候変動が引き起こす問題への関心が非常に高いことがわかります(関心がある(青)、ある程度関心がある(赤)の合計が回答者の約91%を占めています)。
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図)地球環境問題(気候変動)に関する関心(出典:内閣府「気候変動に関する世論調査」(令和7年9月調査)より作成
私たち一人ひとりの「行動」の変化
気候変動問題や環境と経済への考え方や価値観の変化は、私たち一人ひとりのどのような行動の変化につながっているのでしょうか。より広く考えていくために、ふたつの民間企業の調査をご紹介します。
ひとつは、博報堂「第六回 生活者の脱炭素意識&アクション調査」[3]、もうひとつが電通「第17回 カーボンニュートラルに関する生活者調査」です。
この2つの調査は全国15~79歳を対象としておりインターネット調査という手法をとっています。政府の世論調査が18歳以上を対象とし郵送方式をとっていることを鑑みると、より若年層の考えを反映しているものであると思われます。
博報堂「第六回 生活者の脱炭素意識&アクション調査」(2024年10月)
本調査は、脱炭素社会に向けた意識と行動の変化に焦点を当てられています。
調査結果によれば「脱炭素」や「カーボンニュートラル」の認知率はいずれも9割超と高水準です。脱炭素に向けて「行動している」人は 33.6%であり、行動している人の割合は、10代(15-19歳)と70代で4割を超え、他の年代よりも高い傾向にあります。一方、20~40代の行動の実施率は25%前後と低めです。
また、気になる点として、若年層の諦めがあるのではないかという結果も出ています。10代では、行動しない理由として「自分一人の行動が影響を与えられると思っていないから」や「行動しても意味がないと思っているから」などの諦めの気持ちや、「過激な思想家・意識高い系だと思われたくないから」といった他者評価を気にする傾向が全体より8~9ptほど強く見られるようです。
電通「第17回 カーボンニュートラルに関する生活者調査」(2025年8月)
本調査では、カーボンニュートラルへの取り組み姿勢、特に「緩和」と「適応」の認知と行動意向に注目しています。
調査によると、気候変動に対して今後自身で取り組む予定がある人の割合は「適応」(34.8%)が「緩和」(29.8%)よりも 5.0 ポイント高い結果となりました。また、気候変動対策として「適応」が必要だと思う人は 8割(82.9%)を超えており、特に、15~19歳と60代・70代でその傾向が強いとのことです。
地球温暖化や気候変動というと、過去にはCO2などの温室効果ガスの削減に関する取り組み(緩和策)に比重が置かれることが多かったと思いますが、酷暑や災害の激甚化などを受けて、気候変動による被害をどう抑えるか(適応)という意識が強まっていることが窺える結果だと感じます。
まとめ:今後の鍵は、行動の壁を乗り越えること
世論調査から、気候変動への国民の関心は極めて高く(約91%)、環境保全と経済発展は両立可能という考えが主流になっています(約7割)。
また、サステナビリティに関する価値観も、環境が社会・経済の基盤であるとする「第三世代」へと変遷しています。行動の面では、脱炭素(緩和)への関心維持と同時に酷暑や災害への対応(適応)に対する意識が向上する結果が見られます。
一方で、10代には「自分の行動が影響を与えられない」という諦めの傾向も見られるのは気にかかります。もちろん、若い世代だけではなく全ての世代において、自身の行動が社会が良くなる方向につながるという効力感を持つことが必要だと思います。
こうした意識変化と行動の課題を乗り越えることが、今後の個人のアクションや企業によるSX(Sustainability Transformation)の進展につながっていくと思います。
本記事で紹介したアンケート調査の概要
| 調査名 | 調査期間 | 対象者 | サンプル数 | 調査方法 | 主な目的/焦点 |
| 内閣府「環境教育に関する世論調査」(速報) | 2025年9月25日 ~ 11月2日 | 全国 18歳以上の日本国籍を有する者3,000人 (対象) | 回収数 1,666人 (回収率 55.5%) | 郵送法 | 環境教育に関する国民の意識把握 (環境意識、行動、教育機会など) |
| 内閣府「気候変動に関する世論調査」(速報) | 2025年9月11日 ~ 10月19日 | 全国 18歳以上の日本国籍を有する者3,000人 (対象) | 回収数 1,766人 (回収率 58.9%) | 郵送法(郵送配布、郵送/インターネット回収) | 気候変動に関する国民の意識把握 (脱炭素、適応、熱中症予防など) |
| 博報堂「第六回 生活者の脱炭素意識&アクション調査」 | 2024年10月15日~16日 | 全国 15-79歳男女 | 計 1,442名 (インターネット調査) | インターネット調査 | 脱炭素や気候変動に関する意識や行動の変化、特に若年層の意識 |
| 電通「第 17回 カーボンニュートラルに関する生活者調査」 | 2025年8月15日~8月18日 | 全国 15~79歳 | 1,400人 + 追加調査3,993人 (インターネット調査) | インターネット調査 | カーボンニュートラルに関する「認知・理解」や「興味・関心」の現状把握 |
ご案内
過去から現在にかけて私たちが行ってきた様々な活動が地球環境にどのような影響を与えているのかをマクロ的に俯瞰することによって、私たちの価値観や考え方に気づき、行動変容に働きかけるためのシミュレーションゲーム。
それが、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」です。
ゲーム体験を通して「なぜカーボンニュートラルが叫ばれているのか?」、そして「そのために、わたしたちは何を考えどう行動するのか?」に関する学びや気づきを得ることができます。
組織内のサステナビリティ推進に向けた研修や、社内外とのステークホルダーとのサステナ推進の協働体制づくりにご活用いただけます。

ゲームの活用用途が決まっていない、ゲームに興味はあるが具体的な活用法がイメージしづらい方向けに、活用提案のコンテンツをご紹介します(カーボンニュートラル推進における問題の観点からカードゲーム「2050カーボンニュートラル」の活用方法をスライドを交えながら、分かりやすくご提案します)。
この記事の著者について
執筆者プロフィール

南原 順(なばら じゅん)
島根県浜田市生まれ。京都大学大学院地球環境学舎修了(修士・環境政策専攻)。2005年より南信州を中心に、市民が出資・参加する自然エネルギー事業の立ち上げ及び運営に携わる。その後、ドイツを拠点に欧州4カ国での太陽光発電プロジェクトの開発・運営を経験。帰国後は日本企業にて国内のメガソーラーの事業企画、開発を行う。2016年にコミュニティエナジー株式会社を設立し、島根県浜田市を拠点に地域主導の自然エネルギー導入の支援を行う。セミナー等での講演や企業・自治体向け職員研修・ワークショップの実績多数。
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