【実施レポート】カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を活用し、クライアントとの関係強化(日本海ガス)
組織名:E&C-21(日本海ガス)
事業内容:研究会(環境にやさしい家づくり、最新ガス機器提案)、講演会(環境、経済、住宅、エネルギー等に関する講演会の開催)、研修会(最新のガス機器、住宅設備機器の見学会、研修旅行の開催)など
会員数:42社(2024年4月)
- 毎年、座学中心の講演会を年に2回行ってきた。今回は双方向性のある形で開催したい。
- 会員間での交流や日本海ガスと取引先でもある会員との交流の機会を増やしたい。
- 消費者に、カーボンニュートラルを起点とした商品説明をできるようにしたい。
- 双方向での研修とするため、ワークショップ形式のカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を実施する。
- カードゲームを通して、業界全体が共通して向き合うべきカーボンニュートラルについて理解を深める。
- 会員間での対話がたくさん生まれ、会員間の繋がりを強化することができた。
- カーボンニュートラルの知識を深めることができた。
- カーボンニュートラルの実現のためには、個々の組織の枠をこえて取り組むことの重要性を会員が体感した。また、仕事のみならず個人として何ができるかを考える機会になった。
- 日本海ガスと同社の取引先でもある会員に価値ある研修を提供できたことにより、顧客との関係を強めることができた。
本稿では、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を活用した研修事例をご紹介します。
今回お届けするのは、2024年5月、日本海ガス株式会社(以下、日本海ガス)と富山県内の住宅企業等で組織する「E&C-21」で実施した内容です。
ゲーム体験会には、総勢47名の会員の皆さんにご参加いただきました。
<組織プロフィール>
「E&C-21」では、環境にやさしい家づくり・最新ガス機器提案などの研修会をはじめ、環境・経済・住宅・エネルギー等に関する講演会の開催、最新のガス機器・住宅設備機器の見学会・研修旅行などを行っています。ハウスメーカーや工務店の正会員、住宅設備機器メーカーやガス機器メーカーの賛助会員と日本海ガスとのパートナーシップの構築を図るために2001年に設立されました。組織名のEはEcology(環境)やEnergy(エネルギー)、CはCommunity(社会、共同体)、21は21世紀を表しています。
日本海ガスの取り組み
日本海ガスでは、カーボンニュートラルへの取り組みとして、以下の商品を提案・販売しています。
- エネファーム
ガスを使って発電する家庭用燃料電池。発電時にできた熱を給湯と暖房に利用でき、毎日使う電気の6割程度を自家発電でまかなうことができる。停電や断水に備えた機能もついているので、もしものときにも安心。
- 吸収式冷温水発生器
水を冷媒とし、吸収液を使用するため、フロンを全く使用しない空調システムで、消費電力を減らすことができる。大空間の冷暖房に最適。
- カーボンオフセット都市ガス
都市ガスのライフサイクル(生産から消費まで)において排出される温室効果ガスを、同量のクレジットにてカーボンオフセットする商品。「大口供給約款」適用のお客さま向け。
カードゲーム「2050カーボンニュートラル」とは
カードゲーム「2050カーボンニュートラル」は、カーボンニュートラルについての理解を進め、行動変容に働きかけるためのシミュレーションゲームです。
過去から現在にかけて私たちが行ってきた様々な活動が地球環境にどのような影響を与えているのかをマクロ的に俯瞰することによって、私たちの価値観や考え方に気づくことができます。
このゲームでは、会場全体が1つの「日本」に見立てられます。商社や政府、電力会社など12のチームに分かれたプレイヤーたちが、各々のチームの事業目標達成や2050年のカーボンニュートラルの実現を目指して行動します。行動できるのは4ターン。各チームは、①企業・組織と、②個人・市民としての2つのアクションを各ターンごとに実行します。アクションが引き起こす社会情勢の変化は現実世界を模したものです。
ゲームロジックには実際のビジネスや社会活動など現実世界の仕組みを反映させており、ゲームを楽しみながら現実で起こり得ることを疑似体験できます。
さらにカードゲームは「環境意識の高低にかかわらず、みんなが対等に存在を認め合い対等に対話できるツール」でもあります。成功も失敗もリスクなく楽しみながら体験でき、どちらの体験からでも学びや気づきを得られる有用性があります。
体験会の様子
開会挨拶
はじめに、「E&C-21」会長のタカノホーム株式会社 代表取締役社長 髙野二朗様の挨拶で、2022年に断熱等級が7まで新設されたことや、省エネ法の改正により2025年以降すべての新築住宅・非住宅に断熱等級4の適合が義務付けられることが紹介されました。
また、現在9割の建物が断熱等級3以下であることから、高い断熱等級を市場に普及させ、カーボンニュートラルに貢献することの重要性を述べられました。
ゲーム体験
カードゲーム「2050カーボンニュートラル」では、温室効果ガスの排出量が11という設定でスタートします。ここから、4ターン(ゲームでは20年)でカーボンニュートラル(排出量=吸収量)の状態になることを目指します。
今回の体験会では、第1ターンで短期的に資金を獲得するアクションが実行されたことで、意図せず排出量が14に増えてしまいました。
第2ターンでは、他のグループとの交渉や情報交換が行われるようになり、排出量は14から12に削減。しかし、排出量の大幅な削減には繋がらず、温室効果ガスは増え続けます。
ターンを進めるにつれて吸収量と活用量を増やすことができましたが、最終結果として、カーボンニュートラルの状態にはなりませんでした。
また、温室効果ガスの増加によってターン終了時には悪いニュースが発生。その影響で各企業が資金を支払わなければならない場面もあり、市場のGDPはゲームスタート時の半分に減少しました。
ゲーム終了後の振り返りでは、問いと対話を通して、「ゲーム中に起こった出来事」と「それを作り出した行動」を言語化。カーボンニュートラルの実現に向けて「何を考えてどう行動していくか」について気付きを得て、カーボンニュートラル実現の難しさや必要性及び可能性について理解を深める時間となりました。
研修内容
研修プログラム
- イントロダクション
- カーボンニュートラルとは?
- ルール説明
- カードゲーム「2050カーボンニュートラル」の実施
- 振り返り
研修受講者の声
“自分のチームのゴール達成ばかりを意識し、他のチームのゴールに意識が向かなかった。他のチームの目的を知ったうえで協業すればよかった。部分最適ではなく全体最適を目指す必要があると感じた”
“排出削減に向けた動きを早期に実施しなかったことにより、気候変動の被害を受けて経済損失が発生した。この損失をカバーするために短期的な儲けに走った結果、さらに温室効果ガスの濃度が上昇した。今すぐ、排出削減を社会全体で行いながら経済を回していく、ということを社会全体で合意形成することが大切だと気づいた”
“市民アクションの部分にも着目し、カーボンニュートラルに貢献できたら良かった”
主催者の声
“参加者の方から研修終了後、「良かった」とご感想を言いに来てくださいました。また事後アンケートでも、全員から「大変良かった」「良かった」とご回答いただくことができました”
“会員のみなさんで環境を良くしていこう、という意識を高める機会になりました”
“会員の取引先企業にカーボンニュートラルの観点で、エネファーム(ガスを使って発電する家庭用燃料電池)など環境機器の商品の良さを理解いただくことに繋がりました”
日本海ガス株式会社 竹内様、松井様、高嶋様
研修講師より一言
今回のご体験者である会員(ハウスメーカー及び工務店、住宅設備機器メーカー、ガス機器メーカーに所属)の皆様は、普段は相互に「競合関係にある」状態とも言えるかもしれません。
今回のワークショップでは、皆様が熱狂して交流しながらゲームを楽しんでいただく中で、カーボンニュートラルという共通の理念を目指しました。
カーボンニュートラル実現のためには、日本海ガス株式会社様とクライアント様(同社の取引先)、そしてクライアント様同士が相互に共通の理念を持って、共に歩みを進めることが重要であると改めて感じることができる場であったと思います。
今回の研修が、「E&C-21」の会員の方々が組織や業界の枠組みを越え、カーボンニュートラルに向けて切磋琢磨していくことにお役立ていただければ幸いです。
株式会社プロジェクトデザイン
竹田 法信
研修講師プロフィール
竹田 法信(たけだ のりのぶ)
富山県立富山中部高等学校卒業、筑波大学第三学群社会工学類卒業。大学卒業後は自動車メーカー・株式会社SUBARUに就職し、販売促進や営業を経験。その後、海外留学などを経て、地元・富山県にUターンを決意。富山市役所の職員として、福祉、法務、内閣府派遣、フィリピン駐在、SDGs推進担当を歴任。SDGsの推進にあたり、カードゲーム「2030SDGs」のファシリテーションを通して、体感型の研修コンテンツの可能性に魅せられ、プロジェクトデザインへの転職を決意。ファシリテーターの養成、ノウハウの高度化などを通して社会課題の解決を目指す。富山県滑川市在住。
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カードゲーム「2050カーボンニュートラル」の活用事例は、下記ページでも公開中です(ぜひご覧ください)。
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