
【先輩ファシリテーターの足跡】組織の体制・役割に合わせて、複数名で挑む
中国銀行の組織横断的な脱炭素支援
- 最終更新日:2025-01-31
私たちプロジェクトデザインが展開するカードゲーム「2050カーボンニュートラル」には、「カーボンニュートラルの実現」という志を共にし、組織の事業活動や個人の日常行動の変革を生み出すべく、カードゲームの力を使いながら日々活動している公認ファシリテーターが全国各地にいます(2024年12月末現在188名)。
※公認ファシリテーター…「公認ファシリテーター養成講座」を受講し、修了した方が認定される制度です。公認ファシリテーターとなることで、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を自ら開催することができます。
プロジェクトの始動から2年。ブランドマネージャーの竹田が、改めて公認ファシリテーターへインタビューし、カードゲームに出会ったきっかけや、養成講座を受講した背景、目指している姿などをお伺いしました。
この記事では、先輩ファシリテーターの足跡(ゲームとの出会い、ファシリテーターになった経緯、今の状況、将来に向けた考え)をご紹介することを通じて、「ゲームの魅力や活用法」「ファシリテーターになったことで生まれる新たな可能性」などの情報をお届けします。
第3回となる本稿では、株式会社中国銀行(以下、中国銀行)コンサルティング営業部の河内 浩治様、地方創生SDGs推進部の天野 久美様・原 未有様へのインタビュー内容をお届けします。
中国銀行では、6名の公認ファシリテーターが、社内外でカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を活用した取り組みを進められています。
組織内で複数名のファシリテーターを養成することが、どのような可能性を生み出すのか、具体的な事例としてご参考になれば幸いです。
お話を伺った方
株式会社中国銀行 コンサルティング営業部 河内 浩治(こうち こうじ)様 株式会社中国銀行 地方創生SDGs推進部 天野 久美(あまの くみ)様
株式会社中国銀行 地方創生SDGs推進部 原 未有(はら みう)様

<企業プロフィール>
岡山県岡山市北区に本店を置く地方銀行。広島県と香川県にも多くの店舗を展開。2022年10月に金融持株会社のちゅうぎんフィナンシャルグループを設立し、同社の完全子会社となった。地方銀行として預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替業務、外国為替業務、信託業務、各種代理業務、債務の保証、国債等公共債および証券投資信託ならびに生命保険の窓口販売、金融商品仲介業務、M&A仲介等投資銀行業務などを行う。「地域のお客さまに選ばれ信頼される銀行」を目指している。
地域企業の脱炭素に向けた支援
-カードゲーム「2050カーボンニュートラル」公認ファシリテーター養成講座を6名の方がご受講された背景には、どういったものがあるのでしょうか。
天野様:脱炭素を含めたサステナビリティ(持続可能な発展を目指す考え方や行動)は、中国銀行の中期経営計画の重要な柱です。その実現に向けて、地域の脱炭素を支援するための人的資本の拡充に力を入れ、積極的に取り組みを進めています。
中国銀行の地域特性として、営業基盤である岡山県を中心とした東瀬戸内経済圏は、温暖な気候や発達した交通網、豊富な森林資源など高いポテンシャルを有した地域です。しかし、製造業が主要産業であり、脱炭素への取り組みは喫緊の課題とされています。このため、自治体とも連携しながら、地域全体のサステナビリティ向上を目指しています。

外部環境(中期経営計画「未来共創プラン ステージⅢ」より)
天野様:サステナビリティ経営に向けた取り組みとして、中国銀行は各種方針の制定や体制整備を進めるとともに、「環境・社会問題の解決に向けたお客様の取り組みを支援するための投融資目標」や「ちゅうぎんグループにおけるエネルギー使用に伴うCO2排出量の削減目標」を掲げています。

サステナビリティ経営に向けた取組み(中期経営計画「未来共創プラン ステージⅢ」より)
-中国銀行様では、地域企業の脱炭素に向けた支援として、具体的にはどのような取り組みをされていますか。
河内様:株式会社ゼロボード様との業務提携を通じて、顧客企業(取引先企業)の脱炭素経営を支援する取り組みを進めています。
その一環として、私たちが提供するGHG(Greenhouse Gasの略。温室効果ガス)排出量算定・可視化クラウド「ちゅうぎんGXボード」を企業に導入していただくことを、一つの重要な戦略と位置づけています。この「ちゅうぎんGXボード」は、中国銀行のホワイトラベル(他社製品を自社ブランドで展開する方式)として提供しており、今後の連携や誘導についても検討を重ねています。
さらに、企業がサステナビリティ関連の取り組みを適切に対外発信できるよう、各種フォーマットの提供やSDGs宣言の支援など、様々なメニューを用意して対応しています。
また、GHG排出量算定が完了した後には、削減計画の策定やその実行に向けた相談が寄せられると予想しています。これに関しては、ちゅうぎんフィナンシャルグループ内にPPA(Power Purchase Agreementの略。電力購入契約)を手掛けるエネルギー関連の会社もあることからその機能を活用したりしながら、各種提案につなげていきたいと考えています。
-地域企業の脱炭素支援に取り組まれる中で、どのような課題感からカードゲーム「2050カーボンニュートラル」をビジネスツールとして選択いただいたのでしょうか。
河内様:私はコンサルティング営業部に所属し、民間企業向けにESG関連のファイナンスやコンサルティングを提供するチームで活動しています。民間企業の方々と会話する中で感じた課題の一つが、脱炭素の話題を自分事として捉えにくい点です。
※ESG・・・「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取ったもので、企業が持続可能な成長を目指すために考慮すべき重要な要素
民間企業の方々に短時間で、かつ言葉だけで脱炭素への主体的な取り組みを促すのは難しいと痛感しています。しかし、カードゲームをビジネスツールとしてうまく活用することで、多くのお客様に「自身の行動が脱炭素に影響している」という気づきを提供できると強く感じています。
カードゲームを使ったワークショップには、受講者を没頭させ、新たな気づきを生む魅力がある
-カードゲーム「2050カーボンニュートラル」の魅力はどのような点だと感じられていますか。
原様:単なる座学ではなく、実際に動いて学べる「体感型」である点が、大きな魅力だと思います。
このワークショップ全体の構成は、まず知識を習得し、次に自分たちで考えて行動してみる、最後に結果について全員でディスカッションする、という3つの段階から成り立っています。このような流れが受講者の没頭を促し、参加意識やワークショップに対する満足度にもつながっているのではないかと感じています。
天野様:実際に体感した上で「ふり返り」を行うことで、自分の中に新たな気づきが生まれる点が、このワークショップの最大の魅力だと思います。一般的な研修は座学が中心で、知識は得られるものの、それをどう活かすかを実感することが難しいと感じています。
-中国銀行様には、現在ファシリテーターの方が6名いらっしゃいますが、どのような体制でカードゲーム「2050カーボンニュートラル」をご活用いただいているのでしょうか。
河内様:一つの組織に6名のファシリテーターがいるのは比較的多いほうだと思いますが、銀行内では部門ごとに異なるミッションを担っているため、同じ担当者で全業務をカバーするのは難しい状況です。
たとえば、民間企業向けの業務はコンサルティング営業部が担当し、銀行内や地域向けの業務は地方創生SDGs推進部が担当するなど、組織体制が分かれています。そのため、それぞれの部門にファシリテーターを配置する必要があり、結果として6名になりました。
この先、主に民間企業向けの対応を強化する目的で、さらに3名のファシリテーターを増やし、年度内には合計9名のファシリテーターを揃える計画を進めています。銀行全体として、脱炭素に向けた取り組みをさらに推進するという経営方針を示しており、それに基づいて脱炭素への取組みを促す過程をより手厚くする必要があると認識しています。
-カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を使ったワークショップは、どのような場でご活用いただけましたか。
原様:社内向けには、中国銀行の支店長や行員、当社グループの社員を対象に実施しました。
ワークショップ後のアンケートでは、「脱炭素に対する理解が非常に深まった」「事業と環境の両立もさることながら、他者との連携の難しさを感じた」という感想がありました。また、副次的な効果として、「チームビルディングにとても役立った」といった声も寄せられています。さらに、「実際に脱炭素の取り組みに向けて行動を起こすためには、指導や働きかけを担う役割が必要だと気づいた」「バックキャスティング(未来の理想的な状態から逆算して現在の行動を計画する手法)の考え方は支店の営業活動にも活かせると思った」という意見もありました。

顧客企業との連携促進ツールとしての活用
-地域企業でのカードゲームを使ったワークショップの実施は、どのような貢献をもたらすと期待されていますか。
河内様:カードゲームを使うことで、営業店(銀行の支店)の行員と顧客企業の連携が促進されることを期待しています。
顧客企業内でGHG排出量算定を進めていただくには、財務部門以外の担当者との連携が必要となる場面が多くあります。しかし、営業店の行員が顧客企業の財務部門の担当者以外とは面識がないことも少なくありません。
顧客企業と連携するにあたっては、財務部門も含んだ多くの部門の担当者、さらには社長にもワークショップにご参加いただき、その場に営業店の行員が同席するのが良いと考えています。顧客企業の社長が「うちの会社でも脱炭素の取り組みをもっと進めなければならない」と社員の方に向けて発信される場面やディスカッションの様子を営業店の行員が直接見て、顧客企業と目標や意識を共有することが大切だと思います。
-顧客企業の社長や財務部門の担当者と営業店の行員が目標や意識を共有することで、脱炭素の具体的な取り組みがよりスムーズに進むことを期待されているのですね。
河内様:はい。また、営業店の行員がワークショップを実施した顧客企業を訪問した際に「先日社長があのようなお話をされていましたが、その件についてどうお考えですか」という会話が生まれるきっかけになることを期待しています。
-ワークショップが単なるイベントに終わらず、実際の営業活動や顧客企業との連携促進につながる仕組みとして活用される点は、このゲームの効果的な使い方として非常に参考になります。それでは、今後のカードゲームを活用した計画や展開をお聞かせください。
河内様:当行とお取引のある、法人のお客様を対象としたサービス「ちゅうぎんグリーンワークショップ」において、カーボンニュートラルについての講義とカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を実施し、ふり返りとしてディスカッションを行う計画です。

河内様:そして次の段階として、「ちゅうぎんGXボード」、CO2排出量算定のご支援を行う 「ちゅうぎんカーボンニュートラルサポート」、GHG排出算定支援や削減目標の策定支援を行う「ちゅうぎん脱炭素コンサルティング」の導入等につなげていきたいと考えています。
-公認ファシリテーター養成講座の受講料を組織として予算化されたそうですが、どのように調整されたのでしょうか。
原様:予算化にあたっては、経営方針とカードゲームの導入を関連付け、カードゲームの導入がどのようなニーズを満たし、どのような気づきを促すのか、さらに最終的にどのような効果があり、企業価値の向上に寄与するのかを明確に示すことが重要だと思います。
具体的には、カードゲームを活用したワークショップが「脱炭素経営の推進」や「人材育成」といった組織の目標にどう貢献するかを示すことが有効です。ワークショップの効果や期待される成果を経営層に分かりやすく説明することが、予算承認のポイントであると考えます。
-地域企業と連携し、脱炭素へのリーダーシップを発揮されている中国銀行様が、経営計画の目標達成に向けて、ファシリテーターを9名に増員し、組織の体制や役割に合わせて組織横断的に取り組まれているお話を伺うことができました。河内様、天野様、原様、ありがとうございました!
公認ファシリテーターになりたい方へ
公認ファシリテーターになるには、まずはカードゲーム「2050カーボンニュートラル」をご体験いただく必要があります(体験会にご参加いただくほか、組織内研修やイベントの場でカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を体験いただく形でもOKです)。
その後、「ファシリテーターになることをご検討の皆さまへ」をご一読いただき、その上でファシリテーターになることを希望される場合は、「体験会/養成講座」のページから養成講座にお申込みいただきますようお願いいたします。
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