STEAM教育とは何か?その意味と背景、学校の教育現場における事例

STEAM(スティーム)教育の意味とSTEAM教育が求められている背景、そして、学校の教育現場におけるSTEAM教育の事例を分かりやすくご紹介します。

Contents(目次)

STEAM教育とは

STEAM教育とは、各教科での学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための教科横断的な教育です。

“大きな特徴は、教科横断型の学び。一つのテーマを複数の教科から横断的に捉えていきます。例えばSDGsなど社会的課題をテーマにした際、問題解決のためにはどのような知識が必要か、学校で習っている教科に立ち戻ります。そして「この要素は数学の考え方が不可欠」「この要素は歴史の知識が必要」と各教科や科目にブレークダウンしながら、最終的に結論を導き出すためにどのように統合していくか考えていきます。横断的、総合的な学びが「STEAM教育」のポイントとなります”

参考:GIGAスクール構想」「STEAM教育」が日本のICT教育を大きく加速させる|【SDGs ACTION!】朝日新聞デジタル

STEM教育とSTEAM教育

科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)というサイエンス分野で構成されるSTEM教育は科学技術分野に優れる人材・革新や創造に特化した人材の育成を目指すものです。

STEAM教育では、このSTEM教育をベースに、サイエンスの力だけでは不足する部分を補うために、芸術・文化・生活・経済・法律・政治・倫理などを含めた広い範囲の “A(Arts)” の領域が加えられています。

STEAM教育の対象

STEAM教育は高度な内容になるため、高等学校の段階で重点的に取り組むべきである一方で、その土台として小学校や中学校の段階から取り組むことも重要であると言われています。

“STEAM教育は,「社会に開かれた教育課程」の理念の下,産業界等と連携し,各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていく高度な内容となるものであることから,高等学校における教科等横断的な学習の中で重点的に取り組むべきものであるが,その土台として,幼児期からのものづくり体験や科学的な体験の充実,小学校,中学校での各教科等や総合的な学習の時間における教科等横断的な学習や探究的な学習,プログラミング教育などの充実に努めることも重要である。さらに,小学校,中学校においても,児童生徒の学習の状況によっては教科等横断的な学習の中でSTEAM教育に取り組むことも考えられる。その際,発達の段階に応じて,児童生徒の興味・関心等を生かし,教師が一人一人に応じた学習活動を課すことで,児童生徒自身が主体的に学習テーマや探究方法等を設定することが重要である”

参考:STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進|文部科学省

STEAM教育が求められている背景

STEAM教育が必要とされている理由。それは、複雑化する社会課題を解決する上では、統合知(様々な学術分野の横断的な統合による知の創造)が重要であるからに他なりません。

“現代の複雑に事象が絡み合う社会課題の解決に科学技術の力は欠かせないが、より人間社会との調和的な科学技術の社会実装が肝となる。社会で新たな価値創造を高めていくためには、俯瞰的な視野で物事をとらえ、分野横断的、多様な「知」の集結、「総合知」が必要となる。サイエンスをベースに、異分野への興味関心、多様な知の受容力、社会的文脈や社会的課題への感覚を養う「STEAM教育」は、まさにこの課題解決・価値創造に向けたプロセスそのものであり、初等中等教育段階からの分野横断的な学び・STEAM教育の重要性が増している”

参考:Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ(P13)|総合科学技術・イノベーション会議

Society5.0の実現に貢献する、STEAM教育

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、デジタル化が進んだ社会像である「Society5.0」。

この「Society5.0」の実現に向けた教育・人材育成に関する3つの政策パッケージの柱の一つに、STEAM教育が位置づけられています(下記の政策2が該当します)。

<3つの政策パッケージ>

【政策1】子供の特性を重視した学びの「時間」と「空間」の多様化
【政策2】探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムの確立
【政策3】文理分断からの脱却・理数系の学びに関するジェンダーギャップの解消

具体的な政策の中身は、下記の通りです(子供の学びを社会全体で支えていく、スケールの大きなプロジェクトであることが分かります)。

【政策2】「探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムの確立」のための政策

※上記の画像をクリックいただくことで、当該サイトに遷移します(Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージの詳細を確認いただけます)。

<ご案内>
探究学習に関して興味の有る方は下記の記事をご覧ください(探究学習の基礎知識と企業の取り組み事例・私たちにできることをご紹介します)。

STEAM教育に関する教育現場の事例

ここからは、具体的なSTEAM教育に関する事例をご紹介します(STEAM教育を推進する学校の事例に限らず、STEAM教育を支える自治体の事例を含めてご紹介します)。

光華小学校

光華小学校では、探求型授業や教科横断型授業などでSTEAM教育の取り組みを実践しています。

“学年ごとのミッションに1年間をかけて挑み、学年の終わりにみんなの前で集大成を発表する、探究型授業です。ICT・プログラミングのスキルや課題解決の手法だけでなく、リーダーシップや協働性といった非認知能力も伸ばします”

“教科の枠にとらわれない、プロジェクト型の授業を行います。さまざまな知識を組み合わせて課題解決にあたる総合的な判断力や、プロジェクトを進める主体性などを育みます”

参考:STEAM教育|光華小学校

聖徳学園中学・高等学校

聖徳学園中学・高等学校では、学習の成果物を「作品」と捉え、クレイアニメーションやコンビニ経営シミュレーションなどの教科にとらわれない学びを実践しています。

“本校は、学習の成果物は「作品」であるべきと考えます。「作品」は、さまざまな評価が与えられ、評価する人も基準もバラバラです。またピカソの言葉に「作者はしばしば自分で予期しなかった結果に驚かされる」とあるように、自分でさえ気づかなった発見を得られることもあります。「作品」の評価や振り返りを通して「次はもっといいものを作ろう」「あの時学んだことを取り入れてみよう」という気持ちを持つことこそが、発展的な学びではないでしょうか”

“作品づくりには、あらゆる教科の知識や発想が必要です。例えば中1で制作したクレイ(粘土)アニメーションでは、シナリオを書くのは国語力が必要ですし、粘土を思うような形にするためには、美術だけでなく数学・化学・物理の視点も必要です。また映像にBGMをつけるとなれば音楽の教科に関わってきますし、音楽制作ソフトを使うのであれば情報科の力も借りなければなりません。このように一編のクレイアニメーションを制作するために、当然のように教科横断型の学びを必要とします。しかしこれは教科横断型の授業をするために考えた取り組みではなく、やってみたら一つの教科だけでは成り立たなかった、というだけなのです”

参考:STEAM|聖徳学園中学・高等学校

駒込中学校・高等学校

駒込中学校・高等学校では、「AI時代を生きぬく力を身につけること」をSTEAM教育の目的として掲げ、埼玉大学との協力関係のもとにSTEAM教育を実践しています。

“日本の代表的なSTEAM教育研究機関である埼玉大学STEM教育研究センターとの共同授業を行います。生徒たちは、オリジナルキットとソフトを使ったプログラミングで、身近な課題を実践的に解決していきます。外部コンテストにも積極的に参加し、2018年には有志生徒が「世界の人口増加に伴う食糧不足を解決する『農業支援ロボット』」を制作し、全国大会に出場。また、1年生は「国際STEM CAMP」というフィールドワークを通じて、海外の学生たちと共に被災地の課題を解決するロポットプログラミングに取り組んでいます

参考:STEAM教育|駒込中学校・高等学校

芝浦工業大学

芝浦工業大学では、小中学生の子供たちを対象にSTEAMプログラムを提供しています。

“子どもたちの工学・科学への興味関心を深めていくことを目的とした講座です。科学・技術・工学・芸術・数学等の各分野の講座を、STEAMプログラムとして提供する、子どもたちの未来の可能性を広げていくプログラムです”

参考:STEAMプログラム一覧|芝浦工業大学

村田製作所

村田製作所は、未来を担う子どもたちに科学技術の魅力を伝え、将来イノベーションを起こす人材を育成するためのSTEAM教育活動として、2006年から「出前授業」というスタイルで積極的にSTEAM教育を行っています。

“出前授業では主に3つのコンテンツで授業を実施しています。

キャリア教育
2005年に誕生した自転車型ロボット「ムラタセイサク君」を使った授業。開発過程やロボットに使用されている電子部品を紹介することで、モノづくりを支える技術者の仕事内容や面白さを伝えます。

環境教育
2012年にスタートした電気エネルギーと環境との相関関係を考える授業。小学校4~6年生の電気の授業内容に合わせ、手回し発電機によりコンデンサに蓄電したり、違った負荷につなぎ、消費電力の差を体験します。

プログラミング教育
2020年度から小学校でのプログラミング教育必修化に先駆け、教育現場からの要望を取り入れたコンテンツ「動け!!せんせいロボット」。論理的思考を養う力の習得を目的とし、親しみやすい授業になるように、ロボット役は人間がつとめ、タブレット上で動きの指示を出します。”

参考:ムラタのSTEAM教育|村田製作所

加西市(兵庫県)

加西市では、2021年からSTEAM教育の取り組みを始めています。

同市では、リアルな学びを高めていくためには「学校のリソース」だけでは不足することを前提に、関係機関(行政機関、企業、大学、NPOなど)のリソースを活用しながら、新たな教材開発や学校支援、学校外での加西STEAM環境を整えています。

“2021年は、STEAM教育を知る年とし、E-ラーニングを全教職員に実施しました。2022年は、加西市総合教育センター主催のSTEAM研修を実施し、より実践的な学びの機会を設けました。また、各校の教育課程に加西STEAMを位置づけ、校務分掌にSTEAM担当者を配置し、STEAM教育推進委員会を設置。加西市初のSTEAM担当者会も活動を開始し、各校の核となってSTEAM教育を推進しています。2023年からは、加西 STEAMを実装し、STEAMプログラムを蓄積していきます”

参考:リアルな学びに高めるために|加西STEAM

この記事の著者について​

執筆者プロフィール

池田 信人

自動車メーカーの社内SE、人材紹介会社の法人営業、新卒採用支援会社の事業企画・メディア運営を経て2019年に独立。人と組織のマッチングの可能性を追求する、就活・転職メディア「ニャンキャリア」を運営。プロジェクトデザインではマーケティング部門のマネージャーを務める。無類の猫好き。しかし猫アレルギー。

監修者プロフィール

大槻 拓美(おおつき たくみ)

長野県伊那市出身、2001年4月伊那市役所入庁。徴税業務、結婚支援業務、地方創生担業務などを担当。プライベートでは高校生や大学生が地域と関わる活動の支援や、地区の交通安全協会会長を担うなど幅広く地域活動に参加。また、5,000人以上が参画する公務員限定SNSコミュニティ「オンライン市役所」で、LIVE配信 “庁内放送” のパーソナリティを務めた。カードゲームのファシリテーターとして高校や大学、企業などの研修会にも多数登壇。こうした活動を通じてゲーム開発元の (株)プロジェクトデザインの経営理念に共感し、2022年4月に同社へ転職。カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲームなどのファシリテーターを務める。

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