【実施レポート】滑川市立寺家小学校の5年生41名が挑戦!カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」(富山県)

楽しみながら森について学ぶ、カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」を富山県滑川市立寺家(じけ)小学校で開催した様子をお届けします。

森林を守り、持続的に活用していくために必要な行動は何か?

ゲームで疑似体験しながら理解を深める。それがカードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」です。

体験を通してどのような学びや効果が生まれたのか、本稿では当日の体験の様子や子どもたちの感想も交えてお伝えします。

開催の経緯

2023年、プロジェクトデザイン富山オフィスの近くにある寺家小学校の6年生を対象に「CHANGE FOR THE BLUE」カードゲーム実施の機会をいただきました。その際、ゲームを使った学習効果を実感された校長先生より「本年も実施できないか」とお声がけいただき、今年は5年生に向けてカードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」を実施することとなりました。

カードゲーム実施の背景には、社会科の授業で伝える「日本の産業」の理解浸透に対する課題感がありました。

校長先生は次のように述べられています。

“私自身、5年生の社会科の授業で教える「日本の産業」について感じていたのは、「林業を身近に感じられない」ことです。産業分類の中でも製造業や農業などは、子どもたちにとって身近であるため実感しやすい。しかし、林業(山や森)だけは物理的に離れているためどうしても遠く感じてしまいます。その遠い存在をどのようにして身近に引き寄せるか、我々教員も学習方法を模索しています。子どもたちには、遠い存在を引き寄せる力を身につけてもらい、視野を広げて次の学習(歴史や世界)に繋げていって欲しいと思っています”

担任の先生方も、「社会科の教科書に則って日本の林業の現状や課題、地域の特徴について授業を行っているが、子どもたちはそれらを “教科書に載っていること” だと認識してしまい、自分のこと・自分の街のことではないと思っている」と課題感を共有してくださいました。

教科書には、砺波地区を中心に家の周囲に植えられる「防風林」や、海岸に植えられる「防砂林」など富山の事例も掲載されていますが、「いまいちピンと来ていない様子だった」と先生方は言います。子どもたちに「森や林業が自分にも関係していることだと理解を深め、学びと生活を繋げてほしい」という思いから、ゲーム実施のご相談をいただきました。

ゲーム体験の様子

2024年2月、寺家小学校で行われたカードゲームに、5年生2クラスの児童41名が挑戦しました。

1クラスにつき10グループに分かれ、グループごとに山の所有者や役所の人、猟師などまちにある職業が割り振られます。児童は自分のグループの職業カードに書かれている「ゴール」の達成と、森の状況を良くすることを目指してゲームに取り組みます。

今回は、担任の先生の名前をお借りし、1組を「おかもと村」、2組を「こいずみ村」と称し、どちらの村がより多くの「ゴール」を達成できるか、クラス対抗戦を行いました。

ゲームは全部で4ターン。職業に応じて「仕事」「生活」「お金」のカードが配られるため、どのような仕事をしてどのように生活するかをグループ内で相談します。ターンごとに「仕事」と「生活」のカードの中からそれぞれ1枚を選び、持っている「お金」を使ってカードに書かれた行動をしていきます。

選んだカードを進行役のファシリテーターに持って行くと、そのカードに対応する結果のカードがもらえます。

ファシリテーターから結果カードをもらう様子

森・まちの状況は、「森への愛情(関心)」「手入れ・管理」「整備森林(資源量)」「林業の経営力」の4つのメーターで示されます。カードを選ぶタイミングやカードの中身によって、「森への愛情」が増えたり、「整備森林(資源量)」が減ったりします。

ターンの終わりに、その都度森・まちの状況を確認します。

最初はルールが分からず、机上のカードとにらめっこしていた子どもたち。しかし、2ターン目以降は積極的に他グループに足を運び、情報交換や次なる手を相談する様子が見られました。

「どうすればメーターが上がるんだろう?」「この結果を周りの人に伝えたら良いと書いてあるけれど、どうやって伝えれば良いのか分からない!」と嘆いたり、「このカードを実行したら、森への愛情が1つ上がったよ!」と両手を挙げて喜んだり、一喜一憂しながら全力でゲームに取り組んでいました。

チームで相談しながらゲームをプレイする様子

この日のゲーム結果は、1組の「おかもと村」で10グループ中6グループがゴール達成、対する2組の「こいずみ村」は10グループ中9グループがゴール達成し、「こいずみ村」が勝利しました。

ゲーム終了後、ゴールの達成状況を報告し合う中で、ゲーム結果を現実と結び付けた “気づき” が生まれました。それは「整備森林(資源量)には適正な量があること」です。

職業カードの1つ「漁師・森を育てる団体の人」のゴール達成条件は、「整備森林(資源量)のメーターを7~8にする」ことです。今回、2クラス共にメーターの数値が8より多かったため、どちらのグループもゴール未達成となりました。

この結果から、「メーターの数が多ければ良いと思っていたけど、資源量はありすぎてもだめなんだ!」と多くの子どもたちから驚きの声が上がりました。

このように、子どもたちはゲーム結果や勝敗に関わらず森林に対して正しい知識を持つことや、職業の垣根を越え仲間と協力しながら問題解決する重要性について学びました。

1組「おかもと村」のゲーム結果。10チーム中6チームがゴールを達成した

参加した児童の感想

“相手と協力する時に、相手と自分の考えが合わなかったりしたことがあって、譲り合いが少し難しかった”

“皆で情報を共有し、協力することが大切だと学びました”

“森でのボランティアに取り組んでみたいです”

“チームで協力したり頭を使ったり、誰でも楽しみながら森林について知ることができました”

ワークシートを用い、チームで話し合う様子

先生方のコメント

“子どもたちはこのゲーム体験を通して、森と自分の身近なことを関連付けたり、周囲の人との協力や情報交換の大切さを体感できたと思います。また、ゲーム開始直後はとても静かでしたが「情報交換した方がメリットが大きいぞ!」と分かってからはどんどん動きが出てきて、とても盛り上がっていました。そのような変化も非常に面白かったです”

“学校では「林業の仕事をする人がいる」と学ぶものの、「自分たちの生活にどう関わっているのか」を身近に考えることができなかったのだと、子どもたちの姿を見て感じました。森林への愛情や関心を高めるには、普段の生活の中でどのように関わっていくのかが大切になってくると思います。カードゲームに出てくる仕事内容についても、いつ取り組むのが最良なのか、実行するとどのような効果が生まれるかなど、その行動について改めて考えることが大切です。なぜ取り組むのか、何から取り組むのか、順序立てて行動することを学習にも繋げていきたいです”

“「自分だけが頑張るのではなく、様々な職種の人が協働しなければ良い結果が生まれない」と気づき、皆で相談し協力して取り組む姿が見られました。ゲーム中に起こる災害などのニュースに対し「次はこうしよう」と子どもたちから声が上がり、社会科の授業として森林の勉強をするよりも、身近に感じることができていると思いました。子どもたちの中には、ゲーム中に「どれか1つだけではなく、全てのバランスが大切なんだ」と気づいていた子もいます。また、これまで「森林は増やせば増やすほどいい」と思っていた子は、「適切に使っていかないとダメなんだ」と考えを改めていました。このような気づきは、社会科の授業だけでは生まれなかったと思います。カードゲームの実施により、これまで授業で得ていた森林に対する知識や考え方がより深まりました”

※寺家小学校のHPでも、体験の様子をご紹介いただきました。

参考:富山県の森林を守るには??(5年)|寺家小学校

ご案内

今回は滑川市立寺家小学校5年生が体験した様子をお届けしましたが、カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」は、学校の授業だけでなく、ニーズに応じてさまざまなシーンで活用することができます。

1.学校・林間学校の授業では、SDGsや探究的な学習の導入として  
2.企業・行政の研修では、産官学民を巻き込みながら効果的な森や森林資源を活用する啓発セミナーに  
3.親子向けや多世代交流イベントの市民向けワークショップで、森について楽しく学んでいただくツールとして

など、多様な活用方法があります。

2024年1月現在、カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」の体験者数は延べ2,560名(23都府県)に上り、全国各地で展開されています。

森の現状に関しての正確な知識や理解がないために起きているさまざまな問題(森林資源に関する誤解、森林の誤った活用、森に関して無関心な市民の増加)を解決する助けとなるツールとして、カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」をご活用いただければと思います。

体験会も実施しておりますので、ご興味のある方はぜひ一度体験会にお越し下さい。

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