お久しぶりです、皆様。いかがお過ごしでしょうか?
 
 僕は、やっと地獄のような学期末が終わって・・・ません。最後の大仕事が一本残っています。それが終わるまでは、春休みが来ないです・・・いや、就活だったり、夏学期にとりたい講義に向けた自習もあるので、春休みなんてものはそもそもないのかもしれません。
 
 さて、本題に戻ります。今回は予定を変更して、「チャレンジングな組織の作り方」について話したいと思います。この「チャレンジングな組織」ですが、実現したくてもなかなか実現できなくて、頭を抱えている方々が多いのではないでしょうか?
 
 今回は、そんな「チャレンジングな組織」の作り方を、組織制度の観点から話していきたいと思います。採用とはまた別の観点ですので、「チャレンジングな人を採用すれば良い」という答えには至りません。皆様の関心は「現時点でチャレンジングでない人を、どうやってチャレンジングにするか」という方にあると思います。
 
 今回のキーワードは「リスク」です。チャレンジングな組織と関係の深い要素です。リスクへの対処こそが、チャレンジングな組織を生み出す要因となるのです。
 
 それでは、詳しく話していきましょう。
 
 

なぜ組織は「チャレンジング」になれないのか?

 さて、皆さん。宝くじはお好きでしょうか?僕はあまり好きではないですが、ごくたまに買うことがあります。仮に、手元に1万円があったときに、皆さんはその1万円を使って宝くじを買いますか?買いませんか?
 
組織論備忘録#4_1 ある人は「いいや、私は確実に1万円が欲しいから、宝くじは買わない」というでしょうし、「当たる確率と、当たった時の金額しだいでは買ってもいいかな」という人もいます。「1万円を使ったら、より大きな金額になるんだから、買う以外ない!!」というひともいるでしょう。宝くじに1つとっても、人によっていろんな対応があると思います。
 
 ではここで、「宝くじを買う」という状況から「新しい仕事をする(タイトルに合わせて、『チャレンジングな目標をたてる』でも良いです)」という言葉に変えてみましょう。新しい仕事というのは、経験が蓄積されていないために失敗する可能性があります。典型的な成果主義を取っている会社であれば、給与が下がってしまう可能性もあるでしょう。今までの仕事を継続するのであれば、ノウハウが蓄積されているので、少なくとも今までと同じ水準で給与などがもらえます。しかし、成功すれば貴方の会社の売上が上がるだけではなく、貴方の給料も大きく増える可能性があります。さて、貴方はこの「新しい仕事」をしますか?しませんか?
 
 宝くじならいざ知れず、「自分の生活」がかかっている方々であればあるほど、即断即決はできないのではないでしょうか。特に「自分の将来のキャリアや給与に関わる」という心配事は無視できない問題です。自分一人だけでなく、家族の生活を支えていかなければならないという状況が加わると、どうなるでしょうか?
 
 「挑戦しない」という選択をした人が多いのではないでしょうか?守るものが多い人ほど、「失敗した時の被害が自分に来る」ことのリスクを大きく評価したのではないのでしょうか?「自分の生活がかかっているから」こそ、挑戦するという選択肢が取りづらくなっているのかもしれません。ここに「チャレンジングになれない」理由があるのだと思います。
 
組織論備忘録#4_2 さて、今までは自分だけの問題でした。しかし、このブログを読んでいる方々の多くは組織の問題に関心があるともいます。上記の問題を自分ではなく「挑戦するかしないかの意思決定を、他人に任せる状況」と考えてみるとどうでしょうか?他人であっても、意思決定の際の判断材料に大きな差異はありません。
 
 さて、皆さんそろそろお気づきになられたと思います。人が何かを意思決定するときに、リスクの重さを考えてしまうことこそが、チャレンジングになれない原因です。つまり、組織全体でチャレンジングになるためには、「リスクに対してどう対処するか」という問題に対して、適切な対応策を打っておく必要があるのです。
 
 

チャレンジングな組織を生み出す方法の一例

 では、失敗の対処方法について考えていきましょう。ここでは対処法を2つあげます。ただし、この対処法は独立しているのではなく、互いに深い依存関係を持っています。1つ目は「失敗しても給与などに『負の影響』を与えないと約束すること」、2つ目は「失敗した時の『原因』を探れるような、管理手法を浸透させること」です。ここでの対処法はあくまで一例です。他に良い方法があるかもしれませんので、皆様適宜言い換えるなどして、読んでいただけると嬉しいです。早速、この2つについて話していきたいですが、その前に、対処法の芯となる考え方について話します。
 
 対処法の芯となる考え方は「いかに『挑戦しても良い』と思わせる状態と、『挑戦したい』状態を作り出すか」です。この2つの環境は同じようでいて、全く違います。特に前者は「挑戦しても良いけど、別に挑戦しなくても良い」と思っている状態です。我々の目標は「みんなに挑戦してもらう」状態を作ることです。しかし、挑戦してもらうためには、まず「挑戦しても良いかな」という状態に持ってこなければ、そもそも挑戦をしてもらえません。どっちか片方だけを実現してもダメなのです。
 
組織論備忘録#4_3
 では、1つ目の「失敗しても給与などに『負の影響』を与えないと約束すること」について話してきます。と言っても、言葉の通り「失敗しても給与は下げない」というような規定を作ってしまえばいいだけの話です。このような規定を設けて、人はやっと「挑戦しても良い」と思ってくれます。
 
 しかし、ここで同時に考えなければならないのは、「失敗した時の受け皿をどうするか」という問題です。これは企業の資源が有限であるところから発生します。この時の対処として挙げられるのは、成功した時の報酬を微量なものにするという方法です。つまり「成功した人と失敗した人の格差を少なくする」ということです。
 
 もちろん、格差を完全に無くせという意味ではありません。より正確に言えば、「短期間での格差を少なくする」ということになるでしょう。つまり、昇進などの「長期的な格差」はあっても良いと思います。一種のトレードオフの問題でもあるでしょう。すなわち、失敗した部分の被害を、成功した部分の収益で補うということになります。結果として、短期的には格差をなくなりますが、「チャレンジして成功すれば、将来良い役職に就ける」という誘因を与える方法になります。
 
 さて、以上が「挑戦しても良いかな」という状況をつくる方法でした。では「挑戦したい」状況を作るためにはどうすればよいでしょうか?ヒントは「長期的な格差をどのようにして生み出すか」ということを考えればでてきます。
 
 1つの方法としては、前述した「成功や失敗といった結果にかかわらず、『行動やプロセス』で評価すること」です。一見すると、長期的格差の源泉と関係ないように思えます。ここでのカギは「行動を評価する」という点にあります。
 
 成果で格差をつけられない以上、どこで格差をつけるべきでしょうか?例として、ここでは「どのように努力したか」という水準を設けることにします。より厳密に言えば「成果を出すために、どのように行動したか」が、格差の基準になります。成功・失敗に問わず、結果を出そうと一生懸命な人は行動に現れます(我武者羅な行動を推奨するわけではありません)。成果を出すために起こした行動や、そのプロセスを観察し評価を下すのです。
 
 行動やプロセスを評価する方法の最大メリットは「外的な要因に左右されない」という点です。数値(成功・失敗という結果)であれば、不景気や何かの事件によってその値は変化する恐れがあります。しかし、行動は「自分がやったかどうか」だけが問題です。行動ほど、自分だけでコントロールできる要因はありません。だからこそ、行動を評価することによって「過程を含めて評価してくれるならば、挑戦したい」と思わせることができるのです。
 
組織論備忘録#4_4 一方で、管理上のデメリットは「行動を観察するのに手間がかかる」という点です。例えば、半年に1回の評価サイクルである場合、対象の人の「半年間で行われた、日々の活動」を記録しておく必要があります。これには非常に大きなコストがかかります。
 
 しかし、このデメリットは、受け入れる以外に方法はないと思います。数値評価の「評価が成果のみに依存するので、評価のためのコストが低くなる」というメリットと、行動評価のデメリットは裏表の関係にあるからです。ただし、「全員がチャレンジング」な風土を作りたいのであれば、行動評価を導入するか、数値評価を導入するかについて熟慮しなくてはならないのは確かでしょう。
 
 ここで書籍を紹介したいと思います。二神軍平さんによる「ユニ・チャーム SAPS経営の原点(2009年、ダイヤモンド社)」です。この書籍では、行動評価を行うための、実践的なノウハウが多く詰まった書籍です。このブログを書く際に、大きな影響をあたえられた一冊でもあります。
 
 簡単に紹介すれば、ユニ・チャームでは行動評価を行うにあたり、社長を含めた全社員が30分刻みのスケジュール表を週次で作成し、それを全員で共有するための会議を丸一日かけて行っています。行動評価を有効に回すためには、これだけのコストをかけなければならないということです。しかし、それだけのコストをかけてはじめて、10期連続売上増かつ海外売上高比率6割という結果を生み出せているのだと思います。
 
 行動評価だけで無く、そもそもの「評価制度の設計」に興味のある方は、ぜひお読みになることをお勧めします。
 
 

「人に何かをさせるのは難しい」ことを理解することが、やはり重要

 前回のブログでも強調しましたが、「人に何かをさせるのは難しい」ということが、今回のブログを通じて暗に言いたかったことです。今回も「みんなにチャレンジしてもらうためには」という題材で話してきましたが、チャレンジさせる環境を作ることの難しさが伝わったでしょうか。
 
 悲しいことではありますが、私たちはどこかで損得勘定をしています。その損得勘定を元に様々な意思決定が行われています。この事実を無視して制度を設計してしまえば、目的が達成できないだけでは無く、より悪い状況を生み出しかねません。
 
 チャレンジングな会社は自然発生しません。その裏には「チャレンジングな人を生み出し続けるための仕組み」が必ず存在します。そして、その仕組みがうまくいっているときは、必ず「人は損得勘定によって意思決定をする」という原理原則に基づいて設計されていると言っても過言ではないでしょう。
 
 だからこそ、組織の問題に関わる人たちは「損得勘定で人は動く」という原理原則と直面しなくてはなりません(学生の僕が言える立場ではありませんが・・・)。この原理原則を理解することこそが「強靭な組織を生み出す」重要な要因であると思います。
 
 今回は以上です。いかがでしたでしょうか?今度こそ、「なんで間違った意思決定をしてしまうのか」という問題について話してみたいと考えています。
 
 それでは・・・
 
 
 
ライター:【三等兵】桑原健人
富山県立富山中部高等学校卒業
法政大学経営学部市場経営学科修了
現在、一橋大学商学研究科経営学修士過程所属
現在は学期中のため学生中。ようやくM1が終わりそうでホッとしている・・・余裕がない。
来年度も出たい講義が多すぎて、嬉しさ半分怖さ半分。加えて厄年なので気が抜けない。