悩む私も新卒入社から3年目になりました。
新卒の3年目と言えば?
そう、退職です!
 
『新入社員の3割は3年以内に退職する』
酷い話です。人事部は投資が無駄になり、新入社員も彼らなりの辛い思いをしているのでしょう。そしてお互いに『裏切られた!』という悲痛な思いを抱いてしまいます。
 
ではどうすれば新入社員の退職を減らして、新入社員と人事部でWin-Winの関係を築けるようになるのでしょうか?今現在悩んでいる私自身が「ここが正念場!」と自身に喝を入れて踏み止まるためにも、新入社員が退職する理由と対処方法を考えていきます。
 
 

①リアリティショック、想像していた仕事と違う

まず入社直後にぶち当たる壁は、入社前に想像していたのと実際の就業環境が違うという「リアリティショック」です。
「キャリアで語る経営組織 –個人の論理と組織の論理」によると、リアリティショックには2種類あるとされています。1つは『仕事におけるリアリティショック』です。期待していた仕事内容が与えられず、不本意な仕事をしなくてはいけないケースです。もう一つは『組織に対するリアリティショック』。組織の雰囲気や価値観に馴染めないというパターンですね。
過度のリアリティショックは『仕事へのモチベーションが低くなり、会社への愛着や仲間との一体感を持てなくなってしまう』事態を引き起こします。
 
リアリティショックを避ける一番の方法は、インターンや試験雇用で仕事や職場に実際に加わってもらうことです。お互いに早い内からコンセンサスとギャップを確認できるので、受けるダメージを大幅に減らすことができます。しかし、大勢の就職希望者を捌けないという問題点もあります。インターンや試用期間を導入する場合は、事前の絞り込み方法と併せて検討と再構築が必要になってきますので、採用制度を大幅に見直す必要がありそうです。
 
 

②仕事の意義が分からない、全体での役割が見えない

リアリティショックに耐え、職場に馴染もうと努力する過程で次なる障害は「自分の仕事の意義に対する疑問」です。やはり仕事をする以上、自分の仕事は単なるカネ稼ぎの手段ではなく、誇りを持てる責務であってほしいものです。特に職人気質の日本人ならばその傾向は海外の報告書で聞くより遥かに強いものになるでしょう。
 
新入社員は任せられる仕事の幅も狭く、情報の閲覧権限も限られるので、自分の仕事が組織全体の中でどのような貢献に繋がっているのか把握できません。時には「この仕事は無意味なのでは?」と疑問を持つこともあるでしょう。
無意味!
これほど期待と情熱に胸を膨らませる若者を苦しめるものはありません。
 
もちろん、仕事には意味があり、新入社員に学んでほしいことがあるからこそ、その仕事を割り振っているのです。そのことを新入社員がきちんと把握できるように、それ以上に「自分の仕事には有意義だ!」という実感が持てるようにしてあげてください。
 
新入社員が一番欲しているものは「承認」である。承認さえあればどんな所にでも たどりつけると決心している。
単純な話で「こまめに褒める」ことと「成果物が何に使われるか教える」だけでいいのです。見落としてさえいなければ、割と簡単に対処できる課題と言えます。
 
 

③人間関係、特に上司との悩み

「居心地の悪い職場」として新入社員が感じる最たる時は「上司と上手くいっていない時」で間違いないでしょう。同期とは別に仲が悪くても、新入社員のうちはお互いに嫌々でも接触しなくてはならないような大きな仕事は回ってこないでしょうから、対して不快感は蓄積されません。ですが上司とはそうもいかない。
 
上司とは報連相のために必ず接触しなくてはいけません。さらに単純な嫌いな人との付き合いをしなくてはならないこと以上にストレス要因となるものがあります。それは「上司には自分の評価、すなわち会社の中での生殺与奪を握られている」という権力への怯えです。
 
恐怖は人類の最も古い感情である(H・P・Lovecraft)
恐怖は最も古いゆえに根源的であり、最強の感情です。これを抱いたままでは快適な仕事はあり得ないでしょう。
 
この恐怖を克服するのが新入社員の仕事であり、和らげてあげるのが上司と人事部の仕事ではないでしょうか。
 
ではどうやって?
人にはそれぞれ個性があります。FFS理論に代表されるように個性に合わせた付き合い方があります。まずは新入社員の基本的な価値観と思考パターンそして性格を把握して、それから個人個人に合わせた適切な付き合い方を模索してみてあげてください。
ただ、個性の把握も、適切な付き合い方の発見もそれなりに時間コストがかかるのはご容赦を。
 
 

④タイムマネジメント、時間を自分でコントロールできない

今の私が直面している課題です。
「時間管理を自分の意思で決定できていない」また「自分の時間が確保できない」。
(過去には「タスクブレイクダウンで時間を上手く使う」というテーマで記事を書いたくせに!)
 
フラストレーションの根幹は時間管理について『アイ・ハブ・コントロール』と応えられない点に付きます。自分のことなのに自分で決められない、これは非常にイラッときます。
 
その原因の一つは「仕事の要求水準が高まったのに、追いつけていない」ことです。新入社員も3年目ともなれば、仕事にも慣れたと見なされ会社へのより多くの貢献が求められます。そしてその水準をクリアするには、今まで以上の努力が必要になり、必然的に努力のための時間を設定しなくてはいけません。リアリティショックの壁をようやく乗り越えたのに、一難去ってまた一難です。これはキツイ。
 
「ブラックジャック」の単行本未収録の回に「壁」というタイトルがあります。
その中では、人生は壁にぶつかっては乗り越え、また次の壁にぶつかっては乗り越えていく、その繰り返しなのだというセリフがあります。時間も自由に使えないまま、この終わりのない努力を『強いられているんだ!』と感じた時には、虚脱感に襲われました・・・
 
もう一つの原因は「仕事以外で手を付けることを増やし過ぎた」あまりにも手広く。詳細は省きますが、クオリティ・オブ・ライフを向上させるため、好奇心を満足させるため、仕事以外でも様々な活動、行事に参加するようになりました。必然的に休日のうち、休養に使える時間は減ってしまいます。当然、単純に体力が足りなくなってきました・・・
「好奇心は猫を殺す」と申します。9つの命を持つ猫でさえ殺されるのですから、人の身ではたまったものではありませんね。
 
では新入社員は、どのようにしてタイムマネジメントをしていくべきでしょうか?
まずは、自分自身の意思で「するべきこと」「しないこと」を決めさせることから始めるべきでしょう。「選択と集中」を生活においても実践させるのです。
 
ドラッカーが『自らをマネジメントする』と表現したように、経営理論の中には個人の人間生活にも応用の利くものがあります。そうした経営理論をあらかじめ教え込んでおけば、新入社員が自己解決できる人材に育つことでしょう。
私も、いくつか重要でない、コスト-ベネフィットの悪いタスクは捨ててしまうことにしました。これでどれ程効果があるか、仕上げを御覧じろといったところですね。
 
 

⑤スキルアップさせる、有能な人間を逃がさないために

新入社員の退職で最悪なのは、競合に人材を引き抜かれてしまうことでしょう。自社が投資したのに他社にリターンを取られる、トンビに油揚げです。しかも引き抜かれるということは有望な人材でしょうから増々痛い。
引き抜きを防ごうにも、引き抜きを行おうとするほどの会社ですから、大概の場合は自社よりもネームバリュー、給与待遇ともに良好でしょう。これらの面は変更させ辛く、競争になった時点で負けてしまいます。
 
ではこうした競争を避けるには?
あからさまな好条件以外の側面で新入社員を魅了しておく必要があります。3年目を乗り切ることができれば、会社にも愛着が湧き、並のことでは退職しなくなるでしょう。
そのためには新入社員が求めているものを与えてあげるべきです。
 
新入社員が求めているのは「自分自身のスキルアップ」。それが最大の需要です。私も御多分に漏れません。『この会社に入れば成長できるんだ』と思っていてくれれば、自身の将来と会社に期待が持てるため、退職や転職は自ずと選択肢から外れていくことでしょう。
 
 
 

ビジネスゲーム研修による解決

DSC_0023これまでの問題点を解決する手法の一つが、ビジネスゲームでの研修です。
 
 
まずはリアリティショックと仕事での意義に対して。
弊社ではインターンの一環として、仕事理解ビジネスゲームを製作しています。これらのビジネスゲームでは会社の業務全体をフローとして再現し、その会社独自の業務システムも組み込んであります。そのため、実際の業務の概要と、それぞれの仕事が全体の中で果たす役割を把握することができます。
これらのビジネスゲームは、短時間で20人ほどが参加できるため選考に組み込むことも十分検討できます。そうすればリアリティショックも薄まり、仕事の意義が不明瞭になることもないでしょう。
 
次に対人関係について。
先ほどは「新入社員の個性を把握するのは時間がかかる」と記載しました。ですがビジネスゲームは業務をコンパクトにしており、時間も短縮されます。すると、出てくるんですね~、その人の個性が。特にゲームにはまってヒートアップしている時に。
選考や新入社員研修でビジネスゲームをさせてみることで、「彼/彼女には何を任せて、何を期待すればいいのか。どう接すればいいのか」を洗い出すことができます。
 
最後にスキルアップとタイムマネジメントについて。
タイムマネジメントはスキルアップの一環として組み込んでおくべきであることは、労働生産性向上の面からみても、その人の人生の満足感から見ても疑いの余地なしです。ビジネスゲームで学ばせるとすれば、振り返りワークの時間にドラッカーが『時間こそ真に普遍的な制約条件である』としたことを引き合いに出し、『欠乏した資源』であることを認識させるような工夫が考えられます。
タイムマネジメント以外の経営理論、経営資源の活用方法についての学習も、同様に振り返りワークを編集することで対応可能です。ビジネスゲームのカスタマイズ性の高さが活かせる場面です。ただし、カスタマイズ性が高いが故に、運営のノウハウがないと狙い通りの学習効果が発揮できない点には要注意となります。
 
 
このようにビジネスゲーム研修は新入社員の退職問題への処方箋にもなりうるのです。
 
 
ライター:竹島雄弥
富山県立富山中部高等学校卒業
東京大学農学部環境資源科学過程生物・環境工学専修卒業
大学卒業後、ふるさと富山に帰郷。プロジェクトデザインに新卒で入社。主に研修コンテンツのロジック開発および、研修用に使用するエクセルのマクロを構築している。またWebマーケティングも担当しており、サイトの管理運営、テキストの製作を行う。大学時代には地球環境問題を積極的に学び、その中で学んだ「俯瞰的視点」「論理的思考」「系をモデル化する思考方法」「情報技術」などを活かして活躍している。
事務所内でのもっとも重要な仕事はおいしい紅茶を淹れることである。